回路設計エンジニアとはどんな仕事?仕事内容・年収・必要な資格・向いている人の特徴
回路設計は、製品などを動作させるための回路を設計する仕事です。回路設計エンジニアになるのに資格は必要ありませんが、取得しておくと実務に役立つ資格がいくつかあります。本記事では、回路設計エンジニアの仕事内容やおすすめの資格、平均年収、やりがい、将来性、向いている人の特徴を解説します。回路設計エンジニアへの転職を考えている方は、本記事を読むことで、自分はなれるのか、向いているかなどを判断できます。
回路設計エンジニアの仕事内容
回路設計エンジニアとは、電子機器内部などに設置される電子回路を設計する仕事です。電子回路には、アナログ回路とデジタル回路があり、どちらも電子機器に必要不可欠です。回路を設計する際には、最初に電子機器の設計者と打ち合わせをします。打ち合わせ時に回路の規模、性能、使用する部品などを決めます。その後、打ち合わせ内容に従って設計を開始します。デジタル回路は専用ソフトを用いて設計し、アナログ回路は技術者の経験をもとに部品の設置場所などを決め設計します。回路の設計が完了し次第、シミュレーションとフィードバックを繰り返し、製品を完成させます。
下記で、デジタル回路とアナログ回路の特徴と、設計時の仕事内容について解説します。
デジタル回路
デジタル回路は0か1かのような、2つのデジタル信号のみを使用する回路です。デジタル回路設計では、製品設計者の依頼に則して回路を設計します。従って、依頼内容を実現できる回路を生み出す、論理的思考力が求められることが特徴です。また、アナログ回路設計の知識も必要とされてきています。昨今の電子回路は、デジタル回路とアナログ回路のどちらも使用して設計されているからです。例えば、安定してデジタル回路を動作させるために、アナログ回路と組み合わせてノイズを除去しますが、その際にはどちらの知識も必要になってきます。また、デジタル回路設計の業界は、成長スピードが非常に速いいので、常に最新の情報を仕入れることが求められます。そのため、デジタル回路設計者は英語力も必須です。
アナログ回路
アナログ回路とは、音や電圧など連続したアナログ信号を使用する回路です。
アナログ回路設計は、デジタル回路設計よりも難解な解析学の知識が必要です。また、理論上は動作するはずなのに正常に動かない際に、原因を探り解決策を見つけるなど、設計経験が求められる場面が多いことが特徴です。そのほか、情報工学、電子工学をはじめとした専門知識や、アナログ回路が使用されている機械、その電気回路、制御に関する知識なども必要とされるでしょう。
回路設計エンジニアに必要な資格・スキル
回路設計エンジニアになるために、必須の資格はありません。しかし、大学や準ずる教育機関で、電気や電子に関する知識を習得することが必要です。求人によっては、特定の学部の修士課程や博士課程を必須としているケースもあります。また、回路設計業界の最新情報を得るための英語力や、設計エンジニア同士でのコミュニケーション能力は必要不可欠です。下記5つの資格やスキルが、仕事や採用で有利に働くことがあるため、取得をおすすめします。
- CAD利用技術者試験
- 情報処理技術者試験
- ディジタル技術検定
- 第一級陸上無線技術士
- EMC設計技術者資格
下記で資格内容や、試験内容について解説します。
CAD利用技術者試験
CADとは、製品の図面を2Dないし3Dで作成するツールです。かつては、図面を手書きしていましたが、現在はCADを使用しパソコン上で作成しています。CAD利用技術者試験は、CADの使用能力を証明できる資格です。CAD利用技術者試験は、回路設計時に役立つでしょう。試験は、2次元CADと3次元CADに分かれています。下記に、試験の概要をまとめました。
試験名称 | 級 | 試験日 | 受験資格 | 受験場所 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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3次元CAD利用技術者試験 | 2級 | 随時実施2023年4月7日(金)~2024年3月31日(日) 受験日は、申込時に選択 | 制限なし | 全国のパソコンスクールなど (申込時に登録した希望試験地区コードに基づき、試験センターが会場・人数等を調整のうえ、受験票にて受験者に連絡) | 7,700円(税込) | 各分野5割以上、および総合7割以上の正解 | 2018年:42.5% 2019年:61% 2020年:63.9% 2021年:44.7%
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準1級 | 前期:2023年7月16日(日) 後期:2023年12月10日(日) | 2級合格者 | 11,000円(税込) 一般受験の場合2,200円上乗せ | 2019年:61.0% 2020年:63.9% 2021年:53.4% 2022年前期:56.6% 2022年後期:61.4% | |||
1級 | 16,500円(税込) 一般受験の場合2,200円上乗せ | 2019年:61.0% 2020年:63.9% 2021年:44.7% 2022年前期:57.7% 2022年後期:25.3% | |||||
2次元CAD利用者技術試験 | 基礎(IBT) | 2023年4月7日(金) ~2024年3月31日(日)17:00 申し込み手続き完了次第随時実施 | 制限なし | 全国のパソコンスクールなど (申込時に登録した希望試験地区コードに基づき、試験センターが会場・人数等を調整のうえ、受験票にて受験者に連絡) | 4,400円(税込) | 総合7割以上で合格 | 2019年:65.7% 2020年:77.0% 2021年:82.1% |
2級(CBT) | 2023年4月7日(金) ~2023年3月31日(日) 受験日は、申込時に選択 | 6,050円(税込) | CADシステム分野・製図分野が各5割以上、および総合が7割以上で合格 | 2019年:49.2% 2020年:55.7% 2021年:52.3% | |||
1級(建築・機械・トレース) | 前期:2023年6月11日(日) 後期:2023年11月5日(日) | 過去の1級合格者もしくは、2級合格者 | 16,500円(税込) 過去の1級合格者は11,000円(税込) | 実技試験・筆記試験が各5割以上、および総合が7割以上で合格 | 建築 2019年:37.5% 2020年:53.4% 2021年:32.6% 機械 2019年:36.6% 2020年:44.5% 2021年:46.2% トレース 2019年:60.3% 2020年:60.2% 2021年:63.0% |
CAD試験は、年によって合格率が大きく変動しています。しかし、きちんと対策をすれば合格を目指せるでしょう。公式ガイドブックや、テキスト、問題集、過去問を活用し、問題傾向をつかむことが重要です。特に、公式ガイドブックの巻末にあるサンプル問題と同様の問題が出題されることが多いです。勉強時間は、CAD未経験者であれば150時間程度、経験者は60時間程度必要でしょう。
情報処理技術者試験
情報処理技術試験とは、回路設計エンジニアとして身に付けておくべきITの幅広い知識を取得できる国家試験です。試験は12種類に分かれており、全社会人を対象としたITパスポート試験をはじめ、情報処理技術者向けに基本情報技術者試験、応用情報技術者試験など情報処理全般について問う試験、より専門知識が求められるエンベデッドシステムスペシャリスト試験、システムアーキテクト試験などがあります。12種類の試験は4レベルに分けられており、高レベルな試験ほど、内容も専門的になってきます。以下の表では、回路設計エンジニアを目指す方にも役立つ基本情報技術者試験についてまとめています。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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令和5年度春期試験:4月16日(日) 令和5年度秋期試験:10月8日(日) | 特になし | 全国のテストセンター(受験申込時に選択) | 7,500円(税込) | 科目A、Bともに1000点満点中600点以上で合格 | 20%~30% |
基本情報技術者試験は、試験範囲が広く、専門的な知識が求められるため、難易度が高い試験です。勉強時間を確保し、参考書や過去問を用いて対策をしないと、合格は難しいでしょう。情報系の勉強を全くしたことがない場合は200時間程度、勉強をしたことがある方でも50時間程度は勉強が必要といわれています。
ディジタル技術検定
製品作りにおける情報処理や制御についてIT知識の証明となるのが、ディジタル検定です。4級から1級まであり、4級は中学校理科程度の知識を求められるレベル、3級は基本的な論理設計や情報処理の知識を測るレベルです。2級からは情報・制御の2分野に分かれており、2級は設計・試験・運用の実務が可能なレベル、1級はその指導が可能とされる程度の試験内容です。下記に、2級の試験内容についてまとめました。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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令和5年6月25日(日) | 特になし | 全国主要都市 | 情報・制御分野各5,000円(税込) | 100点満点中60点以上 | 2022年:情報分野・59% 制御分野・71% |
難易度は決して高くはなく、公式問題集で繰り返し演習し対策をしておくことで、合格を目指せます。なお、本試験は2023年6月25日(日)の試験以降、再開未定の休止になると発表されています。
第一級陸上無線技術士
第一級陸上無線技術士は、無線従事者が受ける国家試験の1つです。回路設計エンジニアの仕事において、テレビ局やスマートフォン・携帯電話の中継局、基地局の回路設計に携わる際などに生かせる資格です。第一級陸上無線技術士の試験は、2日間にわたって行われます。下表にて試験内容をまとめました。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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通常、1月と7月に実施 令和4年度 第1回:令和5年1月16日(月)~17日(火) 第2回:令和5年1月18日(水)~19日(木) (受験者数に応じて第1回、第2回を実施) | 特になし | 東京、札幌、仙台、長野、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、熊本、那覇の会場 | 16,500円(税込) | 工学の基礎、工学A、工学B:125点中75点 法規:100点中60点 | 25%~30%前後 |
第一級陸上無線技術士の試験は、合格率が低く難易度が高い試験です。計算問題が含まれるため、過去問を使用し、事前に演習しておくことが重要です。その他の問題も過去問の類題が多く出るので、繰り返し解いておきましょう。勉強時間は基礎知識の有無で大きく変わりますが、最低でも100時間程度確保できるとよいです。
EMC設計技術者資格
EMC設計技術者資格は、KEC関西電子工業振興センターとアメリカのiNARTEが共同で創設した国際的な資格です。取得することで、電気機器や電子回路などを設計する際のEMC対応設計力を証明できます。受験資格として5年以上の実務経験か学士以上の学歴が必要なため、回路設計に関する知識をより深めたい方におすすめです。EMC設計技術者資格は、2段階に分かれており、「EMC設計技術者」の試験に合格し、3年の実務経験を経ると、「シニアEMC設計技術者」を受験できるようになります。下記は、EMC設計技術者の試験内容です。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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2022年度第2回 2023年1月27日(金) | 学士以上、または本分野実務経験5年以上 | 他者の侵入がないオンライン環境 | 14,000円(税込) | 70点以上 | 2019年:51% 2020年:62% 2021年:43% 2022年第1回:77% |
EMC設計技術者資格の試験は、参考資料や関数電卓の持ち込みが可能な試験です。従って、試験に必要なのは暗記力ではなく、問題の理解力や処理力、判断力になってきます。KECが出版している問題集を駆使し、苦手分野は別途参考書を買い足して対応しましょう。
回路設計エンジニアの平均年収
回路設計エンジニアの平均年収は、500万円~600万円です。地域によって差があり、関東の平均年収は509万円なのに対し北海道・東北の平均年収は430万円です。また、企業規模が大きいと、年収も高くなる傾向にあるようです。年代が上がるにつれ平均年収もアップするため、継続した勤務が収入アップの鍵となりそうです。
回路設計エンジニアの将来性
回路設計エンジニアは、将来性ある仕事だといえます。電子回路はさまざまな電子製品に必要とされ、今後IoTや工業用ロボット、5G製品など最先端製品にて、継続的な需要が見込めるからです。専門知識や経験が求められることから、慢性的に人手不足であり、就職・転職ともに有利でしょう。アナログ回路の設計者は豊富な経験が必要とされるため高度な実績があれば引く手あまたでしょうし、デジタル回路設計者もさまざまな分野で需要が拡大しています。国内だけではなく、外国企業でも優秀な回路設計者が求められているため、英語力があればグローバルに活躍できるでしょう。
回路設計エンジニアのやりがい
回路設計エンジニアのやりがいは、製品の根幹に携われることや、自分のアイデアがいかされること、最先端技術を駆使しながら仕事ができることです。回路は電子製品を動作させるのに必要不可欠であり、自分が設計した回路が組み込まれた製品が活躍しているさまや、市場に出回っているのを見ると、誇らしく思えるはずです。反面、開発期間の締め切りや、製品品質を保つプレッシャー、常に最新の情報にアンテナを張り続ける緊張感も抱えることになります。クライアントから提示された納期に間に合うよう、試作とフィードバックを繰り返し完成させていく工程では、残業や休日出勤が発生することもあります。また、回路設計に関する最新情報を得るために、学び続ける必要もあるでしょう。しかし、こうした苦労を乗り越え、回路を完成させたときの達成感は、他の職種ではなかなか味わえないものです。
回路設計エンジニアに向いている人の特徴
回路設計エンジニアには、下記のような特徴を持った人が向いています。
- 細かい作業が得意
- コミュニケーション能力がある
- 自主的に知識の吸収ができる
回路設計そのものはパソコン上で行いますが、試作機などは自身で作るため、細かい手作業が必要なシーンもあります。また、理論上動作するはずの回路がうまく動かなかった際に、つぶさに原因を確認できる細かさと丁寧さも必須です。
回路設計はチームで行うことが多いため、他の社員と円滑にコミュニケーションを取ることも、よい回路設計をするうえでポイントとなります。回路設計の際に最新技術を取り入れるには、積極的に情報を得ようとする姿勢も大事です。
まとめ
回路設計エンジニアとは、電子製品などの回路設計を行う人です。回路には、デジタル回路とアナログ回路がありますが、両者があって回路は成り立ちます。回路設計エンジニアになるには特別な資格は必要なく、各企業の応募要項を満たせば就職できるでしょう。しかし、CAD利用技術者試験や情報処理技術者試験などに合格していると、実務面で生かせます。回路設計エンジニアの平均年収は500万円~600万円であり、企業規模や地域、年代によって前後します。現在、さまざまな分野で電子製品が使われるようになってきているため、回路設計エンジニアの需要は拡大していくでしょう。製品の心臓部を担う回路設計の仕事は、納期へのプレッシャーなど厳しい面もありますが、回路が完成した達成感や最先端技術に触れられるやりがいのある仕事です。