商品開発の仕事内容とは?必要なスキルや役立つ資格についても解説

急速に変化する市場環境の中で、企業の命運を左右する商品開発。アイデアの創出から市場投入まで、その過程には幾多の困難が待ち受けています。しかし、的確な戦略と創造的なアプローチで、これらの課題を乗り越え、成功へと導くことができます。
本記事では、効果的な商品開発の進め方や役立つ資格について解説していきます。
商品開発とはどのような仕事?
商品開発は、市場ニーズや技術シーズをもとに、具体的な製品やサービスを生み出す包括的なプロセスです。
商品企画が市場調査やコンセプト立案、価格設定などのマーケティング戦略を中心とするのに対し、商品開発ではそれらの企画内容を実現可能な形に落とし込み、試作品の製作や性能評価、製造工程の確立まで踏み込んで取り組みます。
例えば、食品メーカーでの新商品開発では企画部門から提案された製品コンセプトに基づき、原材料の選定や配合の最適化、製造設備の検討、品質管理基準の策定などです。
また、開発過程で発生する技術的課題を解決し、量産化に向けた製造コストの低減や安定した品質の確保にも注力します。このように、商品開発は企画内容を技術的な観点から実現し、実際の製品として市場に送り出すまでの一連の業務を担っています。
商品開発の基本的な仕事内容
商品開発の仕事は、新商品の創出と既存商品の改良という二つの主軸で展開されます。両者に共通するのは、技術的な実現可能性と事業採算性を両立させながら、顧客満足度の向上を目指す点です。
新商品開発
新商品開発は、市場のニーズと自社の技術力を融合させ、これまでにない価値を持つ製品を創造するプロセスです。商品企画部門から提案されたコンセプトや要件定義を基に、技術的な実現可能性を検討し、具体的な製品仕様へと落とし込んでいきます。ここは素材選定から機能設計、製造方法の確立まで、製品化に必要なあらゆる要素を検討する過程です。
また試作品の製作と評価を繰り返しながら、品質、コスト、生産性の最適なバランスを追求します。市場投入までには、品質検査基準の策定や量産体制の構築、さらには関連部門との綿密な連携を通じて、製品の安全性と信頼性を確保します。
このように新商品開発は、アイデアを実際の商品として具現化し、市場価値を創出する重要な役割を担っています。
既存商品の改良
既存商品の改良は、市場で実績のある製品の価値をさらに高めるための戦略的な取り組みです。消費者からの評価データや販売実績の分析を通じて、品質、機能性、使いやすさなどの面での改善点を特定します。また、競合他社の動向や技術革新、環境規制の変化といった外部環境の変化にも対応し、製品の競争力を維持・向上させます。
例えば、原材料の見直しによるコスト削減や環境負荷の低減、製造工程の効率化による品質の安定性向上、パッケージデザインの刷新によるブランド価値の強化などを実施します。さらに、ユーザーの使用実態に基づく機能の追加や改善を行い、製品寿命の延長を図ります。こうした継続的な改良活動を通じて、既存商品の市場競争力を保ち、持続的な収益確保を実現します。
商品開発の仕事の流れ
商品開発の仕事の流れは、企業や製品の種類によって多少異なりますが、一般的には以下のステップで進められます。
- 情報収集
- 企画書の作成
- プレゼンテーション
- 製造・販売スケジュールの調整
1.情報収集
商品開発における情報収集は、市場の実態を正確に把握し、開発の方向性を定める重要な基盤となる工程です。具体的には、定量・定性の両面からデータを収集します。まず、市場調査会社のデータベースやPOSデータを活用して、製品カテゴリーの市場規模、競合状況、価格帯、購買層などの定量データを分析します。さらに、消費者へのアンケート調査やインタビュー、使用状況の観察調査を通じて、潜在的なニーズや不満点、使用実態などの質的データを収集します。
また、SNSでの消費者の声や販売店からのフィードバック、業界専門誌の動向など、多角的な情報源からトレンドや市場の変化を捉えます。これらの情報を統合的に分析することで、開発すべき製品の要件や差別化ポイントを明確化し、成功確率の高い商品開発へとつなげていきます。
2.企画書の作成
商品開発における企画書作成は、収集した市場データや消費者インサイトを具体的な商品構想へと昇華させる重要な工程です。まず、市場調査から得られた定量・定性データを分析し、ターゲット層の特性や潜在的ニーズを明確化します。これらの情報を基に、商品コンセプト、想定販売価格、予測販売数、競合との差別化ポイントなどを詳細に設定します。
企画書には、製品の具体的な仕様や機能に加え、開発スケジュール、必要な経営資源、収益性の試算、想定されるリスクとその対策まで盛り込みます。特に重要なのは、消費者ニーズと自社の技術力・生産能力とのマッチングを明確に示すことです。
この企画書は、開発の方向性を定める羅針盤となるだけでなく、社内での承認プロセスや関係部門との共通認識を形成する重要なツールとしても機能します。
3.プレゼンテーション
商品開発におけるプレゼンテーションは、企画段階から実現化へと移行する重要な転換点です。この工程では、商品の市場性や技術的実現可能性、収益予測、必要な経営資源などを、経営陣や関連部門の責任者に対して具体的に提示します。特に製造部門への説明では、生産ラインの構築や設備投資の必要性、品質管理体制など、実務的な観点からの検討材料を詳細に示すことが重用です。
プレゼンテーションでは、市場調査データや競合分析に基づく販売戦略、開発スケジュール、コスト見積もりなどを論理的に展開し、投資対効果の妥当性を明確に示すことが求められます。
また、試作品やプロトタイプがある場合は、それらを用いた実演を行い、商品の特徴や優位性を視覚的に訴求します。このプロセスを通じて、全社的な合意形成と開発リソースの確保を図ります。
4.製造・販売スケジュールの調整
商品開発における製造・販売スケジュールの調整は、製品の市場投入を成功に導くための重要な戦略的プロセスです。まず、開発部門は製造部門と綿密な協議を行い、必要な設備投資、人員配置、原材料の調達計画を策定します。試作品の製造では、量産時の品質基準や製造効率を検証し、必要に応じて設計や工程の見直しを行います。
同時に、営業部門やマーケティング部門と連携し、市場投入のタイミングを見極めます。競合製品の動向や季節性、販売チャネルの準備状況を考慮しながら、最適な販売時期を決定します。特に重要な商品では、限定地域でのテストマーケティングを実施し、価格設定や販促施策の効果を検証した上で、本格展開のスケジュールを確定させます。このように、各部門との緊密な連携を通じて、製品の円滑な市場投入を実現します。
商品開発の仕事の年収
商品開発職の年収は、企業規模や業界、経験年数によって大きく異なりますが、チェーンストア業界では平均で約645.5万円となっています。新入社員や若手社員は300万円台後半からスタートし、経験を積んでリーダーやマネージャーとして活躍する中堅社員では500万円から700万円程度、部門責任者クラスになると800万円を超えるケースも少なくありません。(参考:厚生労働省)
また、商品開発の成功実績や特許取得などの成果に応じて、業績連動型の賞与や報奨金が支給される企業も増えています。特に消費財メーカーやアパレル企業では、ヒット商品の開発に貢献した社員に対して手厚い待遇を用意するところも多く、実力次第では1000万円以上の年収も十分に視野に入れることができます。
近年の消費者ニーズの多様化に伴い、優秀な商品開発人材への需要は高まっており、待遇面でも改善傾向にあります。
商品開発の仕事に必要な能力
商品開発の仕事に必要な能力は、多岐にわたります。大きく分けると、以下の様な能力が求められます。
- 業界理解度
- 市場の調査・分析の能力
- 商品開発戦略の立案能力
- プレゼンテーション能力
- コミュニケーション能力
- デザイン能力
業界理解度
業界理解度が重要な理由は、市場における競争優位性の確保と効果的な商品価値の創造に直結するためです。業界特有の商習慣や規制、技術標準、流通構造を深く理解することで、実現可能性の高い開発計画を立案できます。また、競合他社の製品戦略や技術動向を正確に把握することで、差別化ポイントを明確にし、市場での独自のポジションを確立できます。
例えば、食品業界では賞味期限や保存方法に関する規制、原材料の調達ルート、季節変動する消費者ニーズなど、業界特有の要素が多数存在します。これらの知識がなければ、いくら革新的なアイデアを持っていても、実用的な商品開発は困難です。
さらに、業界内のネットワークや取引先との関係性を活用することで、開発プロセスを効率化し、市場投入までのリードタイムを短縮することができます。このように、業界理解度は商品開発の成功率を大きく左右する重要な要素なのです。
市場の調査・分析の能力
市場調査・分析能力は、成功する製品を生み出すための根幹となる重要なスキルです。消費者の潜在的なニーズや不満点、競合製品の特徴、価格帯の適正範囲、流通経路の特性など、多角的な視点からデータを収集し分析することで、的確な製品仕様の決定が可能となります。
例えば、単に社内の技術シーズだけに依存した開発では、優れた機能を持つ製品であっても、価格が高すぎたり、使い勝手が悪かったりと、市場ニーズとのミスマッチが生じやすくなります。
また、市場動向の正確な把握は、開発リスクの軽減にも直結します。消費者の購買行動や価値観の変化、競合企業の動向、規制環境の変化などを事前に察知し、開発方針に反映することで、投資効率の高い製品開発が実現できるのです。
商品開発戦略の立案能力
戦略立案能力は、市場の複雑性と競争環境の激化に対応するための必須スキルです。特にSTP戦略を活用することで、市場を細分化し、それぞれの特性を見極めた上で、最も効果的なターゲットを選定できます。
S(Segmentation) | 市場を属性ごとに細分化する |
T(Targeting) | 開発商品のターゲットをセグメンテーションの中から決定する |
P(Positioning) | 開発する商品が最も魅力的に感じられるポジションをターゲットの市場調査結果から判断する |
さらに、その市場でどのようなポジショニングを取るべきかを明確にすることで、商品の独自価値を確立することができます。例えば、高機能シャンプーの開発では、市場を年齢層や髪質、価格帯などで分類し、特に美容意識の高い30代女性をターゲットに設定。そして、「自然由来成分による髪質改善」というポジショニングを確立することで、競合商品との差別化を図ります。
このように、戦略的な視点を持って商品開発に取り組むことで、単なる製品機能の向上だけでなく、市場での確固たる地位を築くことが可能となります。
プレゼンテーション能力
プレゼンテーション能力は、新製品を実現に導くための重要なスキルです。優れた商品アイデアも、その価値を社内の意思決定者に効果的に伝えられなければ、実現の機会を失ってしまいます。特に経営陣への提案では、市場性や収益性、実現可能性などの観点から、データに基づいた説得力のある説明が求められます。
また、製造部門との協議においては、技術的な課題や生産効率、品質管理などの具体的な懸念事項に対して、明確な解決策を提示する必要があります。さらに、営業部門やマーケティング部門との連携では、商品の特長や競争優位性を分かりやすく説明し、販売戦略の立案につなげることが重要です。
このように、商品開発者には自身の構想を各部門の視点に立って効果的に伝える能力が不可欠となります。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、商品開発において成功の鍵です。開発プロセスでは、企画部門からのコンセプトを正確に理解し、製造部門との技術的な実現可能性の検討、調達部門との原材料の選定、品質管理部門との基準設定など、社内の様々な部門と緊密な連携が必要です。さらに、外部の取引先や製造委託先とも折衝を重ねながら、品質とコストの最適なバランスを追求していきます。
これらの調整過程では、各部門の専門用語や業務特性を理解した上で、相手の立場に立った分かりやすい説明や提案が求められます。また、開発過程で発生する課題や仕様変更について、関係者全員が同じ認識を持てるよう、的確な情報共有と合意形成を図る必要があります。
このように、商品開発は本質的にチームワークの仕事であり、高度なコミュニケーション能力なしには成功は望めません。
デザイン能力
商品開発においてデザイン能力が重要視される理由は、アイデアを視覚的に表現し、効果的なコミュニケーションを実現できるためです。企画段階での製品イメージや、パッケージデザインの方向性を、PhotoshopやIllustratorなどを使って具体的に示すことで、社内の開発チームや取引先との認識の齟齬を防ぎ、開発プロセスを効率化できます。
特に製造部門やデザイン会社との打ち合わせでは、言葉だけでは伝えきれない微妙なニュアンスや、細かな仕様の調整を、視覚的な資料を用いて明確に伝達することが可能になります。
また、市場調査や商品プレゼンテーションの資料作成においても、魅力的なビジュアルを自ら作成できることは説得力のある提案につながります。このように、デザインスキルは商品開発の様々な場面で活用され、業務の質と効率を高める重要なツールとなっています。
商品開発の仕事に向いている人
商品開発は、新しいものを生み出す創造的な仕事でありながら、市場や顧客のニーズを深く理解し、それを形にするという、多岐にわたる能力が求められる仕事です。
一般的に、商品開発に向いている人は、以下のような特徴を持っていることが多いです。
- トレンドに敏感な人
- 市場のニーズを正しく拾える人
- 周囲と協力して仕事を進められる人
- 最後まで粘り強くやり遂げられる人
トレンドに敏感な人
トレンドに敏感な人が商品開発に適しているのは、市場の変化を素早く察知し、次の商品開発に活かせるからです。
消費者の嗜好や生活スタイルの変化、技術革新などを常にウォッチし、その動きを先取りした商品開発が可能になります。これは特に競争の激しい消費財市場では重要な資質となります。
市場のニーズを正しく拾える人
市場のニーズを正しく拾える人は、表面的な流行だけでなく、消費者が本当に求めている価値や解決したい課題を見抜く力を持っています。データ分析や市場調査の結果を正確に解釈し、潜在的なニーズも含めて商品開発に反映できる能力は、的確な製品開発につながります。
周囲と協力して仕事を進められる人
周囲と協力して仕事を進められる人は、商品開発が製造、営業、マーケティング、デザインなど、多くの部門との連携を必要とする業務において重要です。異なる専門性を持つメンバーの意見を調整し、最適な解決策を見出すためのコミュニケーション能力が不可欠になります。
最後まで粘り強くやり遂げられる人
最後まで粘り強くやり遂げられる人が求められるのは、商品開発が長期的なプロセスで、多くの課題や困難に直面するためです。試作品の改良や品質検査、コスト調整など、細部にわたる調整を何度も繰り返しながら、品質と採算性を両立させる粘り強さが必要です。
商品開発の仕事で役立つ資格
商品開発の仕事で役立つ資格は、業界や職種、目指すキャリアによって異なりますが、一般的に以下のような資格が挙げられます。
- 商品開発士
- マーケティング・ビジネス実務検定
- ファイナンシャルプランナー技能士(FP技能士)
商品開発士
商品開発士は、日本商品開発士会が認定する民間資格で、商品開発に必要な知識とスキルを体系的に評価する制度です。初級の商品プランナーでは、市場分析や商品企画の基礎知識を問われ、中級の商品開発士では、商品開発プロセスの実践的な理解や、マーケティング戦略の立案能力が評価されます。最上級の商品開発コーディネーターは、複数の開発プロジェクトを統括できる高度な専門性が求められます。
この資格は、年2回のオンラインまたは会場での試験を通じて取得でき、受験に際して特別な条件は設けられていません。試験内容には、マーケティング理論、商品企画手法、品質管理、知的財産権など、商品開発に関連する幅広い分野が含まれており、実務で活用できる実践的な知識の習得を重視しています。企業内での商品開発キャリアの構築や、専門性のアピールに有効な資格として認知されています。
マーケティング・ビジネス実務検定
マーケティング・ビジネス実務検定は、実務に即したマーケティングの基礎知識から応用力までを体系的に評価する資格です。最も基礎的なC級では、マーケティングの基本概念や用語の理解度を測り、B級では市場分析や販売戦略の立案能力が問われます。最上級のA級では、経営戦略とマーケティングを結び付けた総合的な判断力が求められ、実際のビジネスケースに基づく問題解決能力が評価されます。
年3~4回の実施頻度により、学習の進捗に合わせて受験機会を選べる柔軟性があります。特に商品企画や開発に携わる実務者にとって、この検定で学ぶ顧客ニーズの分析手法や市場動向の把握方法は、直接的に業務に活用できる実践的な知識となります。業界や職種を問わず活用できる汎用的な内容であることから、キャリアの幅を広げる際にも有効な資格として評価されています。
ファイナンシャルプランナー技能士(FP技能士)
ファイナンシャルプランナー技能士は、個人や法人の財務・金融に関する総合的な知識を認定する国家資格です。1級から3級まであり、金融商品、保険、税務、不動産、相続など幅広い分野の知識を習得できます。特に商品開発の分野では、消費者の資金計画や投資意識を理解する上で重要な視点を提供し、金融商品の開発やサービス設計に活かすことができます。
試験は学科試験と実技試験の2つで構成され、最も取得しやすい3級は比較的高い合格率です。年に3回実施されるので、仕事をしながらでも計画的な受験が可能です。金融関連の商品開発だけでなく、一般の商品開発においても、価格設定や販売戦略を検討する際の経済的な視点を養うのに役立ちます。
まとめ
商品開発は、市場ニーズと技術を結びつけ、新商品の創出と既存商品の改良を行う重要な業務です。業務フローは情報収集、企画書作成、プレゼンテーション、製造・販売スケジュールの調整という段階を経て進められます。
年収は企業規模や経験により異なりますが、チェーンストア業界では平均約645.5万円です。必要な能力としては、業界理解度、市場分析力、戦略立案能力、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、デザイン能力が挙げられます。また、トレンドへの感度が高く、市場ニーズを的確に把握でき、協調性があり粘り強い人材が適性を持つとされています。
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