制御設 計とは?主な仕事内容や求められる資格・スキルを紹介
制御設計とは、家電や自動車などの便利な機械が、意図した通りに動作するよう制御システムを設計する仕事です。とはいえ、どのような仕事をしているのかわからない方も多いでしょう。
本記事では、制御設計の仕事内容をわかりやすく紹介します。
また、制作設計に向いている人や必要なスキル・やりがいなども解説するので、ぜひ参考にしてください。
制御設計とは
制御設計ですが、社会インフラなどの設備やシステムを効率的と安全に制御するための設計を主に行います。センサーやアクチュエータの選定や制御システムの設計、プログラムの開発、試験や検証、最終的な現地での実装も業務に含まれております。
以下では、制御設計の仕事内容、平均年収についてまとめました。
制御設計の仕事内容
制御設計の仕事内容はさまざまです。以下は仕事の流れを示した一例となります。
要件の定義
設備やシステムの運転や制御に関する要件をヒアリングし、設計の方向性を決定していきます。これには、機械の動作やプロセスの制御方法を計画し、システムの全体像を構築するのも含まれます。
仕様の策定・設計
要件定義をもとに、具体的な仕様の策定・設計を行います。先々の工程でなるべく仕様変更が生じないよう、多角的な視点で進めていく必要があります。
プログラミング
制御装置やソフトウェアのプログラムを開発します。プログラミング言語を使用して、機械の動作やプロセスを制御し、正確な動作を実現します。
動作のテスト・改善
プログラミングが完成したらテストを実施します。万が一、トラブルが発生した場合、原因を特定し修理や調整を行います。
製品への組み込み
これまでの工程に問題がなければ、実際の製品へ組み込み作業を行います。製品を稼働させるシステムと合わせて動作に問題がないか確認していきます。
制御設計の平均年収
厚生労働省の「jobtag」によると、制御設計の仕事を含む機械設計技術者の平均年収は約606万円です。
国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば、日本の平均年収は458万円とされているため、制御設計の仕事の年収は比較的高いといえます。とはいえ、勤務先の企業規模や経験・求められるスキルによっても年収は変わるため、気になる場合は面接時に目安を聞いてみても良いでしょう。
制御設計のやりがい
制御設計はさまざまな業務に携わる仕事なので、やりがいも充実しています。
主なやりがいとしては、以下の5つが挙げられます。
- 問題解決力を高められる
- 論理的思考力を向上させられる
- 成果が目に見える形で現れる
- さまざまな能力が身につく
- 業界の最先端を知れる
問題解決力を高められる
工場や施設の制御システムを設計する際に、多様な問題や課題が発生するため、その都度で解決することが求められます。
例えば、機械の動作が予期せず停止すれば原因を特定し、修復する作業をしなければいけません。また、プロジェクト全体に関する問題が起きた場合も即座に対処する必要があります。そのため、業務を通して問題解決力を高められることで、やりがいを感じられるでしょう。
論理的思考力を向上させられる
機械やプロセスの制御システムを設計するためには、緻密なプログラミングを行うにあたって論理的思考が求められます。
例えば、プログラムを書く際には条件分岐やループを論理的に組み立て、システムが正確に動作するように設計を行うのですが、ここでの問題解決や意思決定に論理的思考が必要です。
論理的思考力が向上すれば、他の分野でも通用するスキルとなるため、自分のキャリアを広げる際に手助けとなるでしょう。
成果が目に見える形で現れる
制御設計は工場や施設の制御システムを設計し、生産ラインや設備の動作を制御していきます。エンジニアの設計したシステムやプログラムが機械やプロセスの動作に影響を与えるため、成果が目で見える形でわかることはやりがいを実感できるでしょう。
さまざまな能力が身につく
制御設計には電気回路の設計や制御ロジックの組み立て、評価、テストなど、さまざまな能力が磨かれる機会に恵まれています。プログラミングスキルやCADソフトウェアなどをマスターしなければ業務に対応できない環境に加えて、四力学や物理学などの知識を深める場も多々あります。
制御設計プログラミングのスキルはIT分野やソフトウェア開発でも活かせるため、エンジニアリング分野では重宝される存在となるでしょう。
業界の最先端を知れる
製造業や工場での制御技術は日々進化し、新しい技術やトレンドが急速に変化しています。制御設計エンジニアは、常に最新の技術に触れ、実際のプロジェクトに組み込むことを求められる機会も多いです。
仕事を通じて業界の最先端を知れることは、自分のスキルやキャリアを伸ばすうえでも役立つでしょう。
制御設計に向いている人
制御設計に向いている人の特徴を4つ紹介します。これらに当てはまらないからといって制御設計で働けないというわけではありません。あくまでも向いている人の特徴ですので、参考程度にご確認ください。
モノづくりに携わりたい人
モノづくりが好きな人であれば、制御設計者として働く中で充実感を味わえます。制御設計は、製造現場でも中枢的な役割を果たす仕事です。自分の手がけた制御システムが実際に機械を動かす瞬間は、モノづくりの醍醐味を感じられるでしょう。
細かい作業を得意とする人
制御設計エンジニアは、細部にまで注意を払うことが必要です。配線の接続やプログラムのコーディングなど、小さな要素の正確さが問われる仕事のため、細かい作業を得意とする人は制御設計に向いています。
作業内容は、仕様の決定や設計作業、プログラミングなど多岐にわたります。いずれの工程も細かい作業の連続なため、細かい作業が得意な人は能力を発揮できる場が多いでしょう。
常に学び続けられる人
制御設計者は、さまざまな分野において知識を求められます。プログラミング言語やCADソフトウェアはすぐに最新バージョンへと更新されていくため、常に新たな制御技術に関する情報に触れながら学んでいかなければいけません。
機械そのものが好きな人
制御設計は、機械や装置の動作を理解し、コントロールする役割を担っています。機械の内部構造や仕組みに興味を持ち、それを制御システムとして反映させる地道な作業は、機械そのものが好きな人でないと長く勤まらないでしょう。
制御設計に求められるスキル
制御設計で携わる業務範囲は幅広いため、同時に求められるスキルも多岐にわたります。
代表的なスキルは、以下の4つです。
- プログラミング
- CAD
- 四力学
- コミュニケーション能力
プログラミング
制御設計におけるプログラミングでは、主にラダー言語を使った制御ロジックの開発や制御システムの設定・調整などが行われます。
プログラムスキルは制御設計で不可欠であり、修正して新しい機能を追加したり、トラブルシューティングを行ったりする際にも役立ちます。実際にスキルを身につけるには、専門的なトレーニングやコースを受講したり、オンライン学習や書籍などで学んだりしてみましょう。
CAD
CADとはコンピューターを使用して製品やシステムの設計図を作成し、3Dモデルを構築することです。また、似た言語として挙げられるCAEでは、モデルを解析し、性能評価やシミュレーションを行います。
製造業の設計には3D‐CADソフトがもっとも使用されており、CADとCAEを組み合わせて使用すれば、制御システムの設計や改良が効率的に行えます。これらのスキルを身につけるには、専門で扱っているオンライン授業の受講などが一般的です。
四力学
制御設計には、四力学知識や能力が必要です。制御設計における重要な概念の一つで、物体やシステムの動力学的な挙動を理解し、制御するための理論です。
なお、四力学についての知識を身につけるには、専門の教育プログラムやオンラインコースを受講してみましょう。数学や物理学の基本的な前提知識があると有利ですが、未経験の場合でも学ぶことは可能なため、興味のある方は積極的に学習すると良いでしょう。
コミュニケーション能力
社内外問わず多くの人と連携して仕事を進めるため、異なるチームメンバーと意見やアイディアを共有し、課題を解決するための能力として、コミュニケーションは重要です。
機械エンジニア、電気エンジニア、ソフトウェア開発者など、さまざまな役割の人たちと関わりながら業務を進めていかなければならないため、高いコミュニケーション能力が求められます。自分の意図したことが相手にも明確に伝えられるようなフレームワークを学ぶなど、コミュニケーション能力を向上させるための講座やワークショップなども実施されています。しかし、まずは実務経験を通じてチームの人々と積極的にコミュニケーションを取る時間を設けることが有効です。
制御設計におすすめの資格
ここでは、制御設計の仕事をするうえで有利になる資格を紹介していきます。
機械設計技術者試験
機械設計技術者試験は、機械や装置の設計・開発に関する専門知識と技術を評価する経済産業省認定の国家試験です。この試験では、基本的な機械工学の知識や技術が1級から3級に分けて審査されます。合格基準は公開されていませんが、合格率は各級とも3割程度です。
機械設計技術者試験に関する情報を下表にまとめました。(2023年11月現在)
受験資格 | 3級 特になし 2級 実務経験(学歴により3~7年) 1級 実務経験(学歴により5~10年) |
試験日 | 11月中旬頃 |
試験会場 | 全国の主要都道府県 |
受験料 | 3級 8,800円 2級 22,000円 1級 33,000円 |
申し込み方法 | 公式サイトからWEBフォームで申し込み |
試験内容 | 3級・2級 機械設計に関する知識 1級 機械設計に関する知識と小論文 |
※出典:機械設計技術者試験|一般社団法人 日本機械設計工業会
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、CADシステムの知識と実技スキルを評価する試験です。2次元CADと3次元CADの試験があり、グレードは以下のように3つに分かれています。
2次元CAD | 基礎・2級・1級 |
3次元CAD | 2級・準1級・1級 |
合格率は級が上がるごとに低下し、2次元CADの場合は80%(基礎)~50%(1級)、3次元CADの場合は60%(2級)~30%(1級)程度です。
CAD利用技術者試験について、詳細を下表にまとめました。(2023年11月現在)
受験資格 | 1級のみ「2級に合格していること」が受験資格 |
試験日 | 7月と12月 |
試験会場 | 全国47都道府県 |
受験料 | 2次元 基礎:4,400円 2級:6,050円 1級:16,500円 3次元 2級:7,700円 準1級:11,000円 1級:16,500円 |
申し込み方法 | 公式サイトからWEBフォームで申し込み |
試験内容 | CADと製図に関する知識。1級は実技もあり。 |
※出典:CAD利用技術者試験
E検定
E検定は、電子工学技術者資格の一つであり、電子制御や通信技術に関する知識とスキルを評価するための中堅技術者までを対象とした試験です。合格基準は非公開となっています。
E検定について、試験に関する詳細を下表にまとめました。(2023年11月現在)
受験資格 | 公式ページにて確認 |
試験日 | 春(5月)・秋(11月)開催予定 |
試験会場 | 東京・大阪の2箇所で予定 |
受験料 | 全分野試験:11,000円(税込) 基本分野試験:8,800円(税込) レベル1試験:11,000円(税込) |
申し込み方法 | 公式サイトからWEBフォームで申し込み |
試験内容 | ※公式サイトにて確認 |
※出典:E検定
電気製図技能検定
電気製図技能検定は、電気関連の設計図面を作成し解読するスキルを評価する資格です。実技試験は60点以上、学科試験は65点以上が必要となります。
電気製図技能検定の受験情報を下表にまとめました。(2023年11月現在)
受験資格 | 最寄りの都道府県職業能力開発協会へお問い合わせ推奨 |
試験日 | 前期:4~9月、後期:11月~3月 |
試験会場 | 申し込み時に確認 |
受験料 | 検定職種ごとに各都道府県において定められている |
申し込み方法 | 受検希望の都道府県職業能力開発協会から受検申請書等をお取り寄せ |
試験内容 | 電気機器の製図及び写図に必要な技能 |
電気主任技術者
電気主任技術者は、電気設備や電気工事の分野で技術スキルと知識を証明する資格です。合格率はどの試験も平均15%を下回る程度となっています。
電気主任技術者の受験情報を下表にまとめました。(2023年11月現在)
受験資格 | なし |
試験日 | 第一種及び第二種:8月~11月 第三種:7~8月 |
試験会場 | 全国 |
受験料 | 第一種及び第二種:13,800円 第三種:7,700円 |
申し込み方法 | インターネット、書面 |
試験内容 | 電気理論などの筆記試験 |
まとめ
制御設計の仕事内容や魅力についてご紹介し ました。問題解決力や論理的思考力が養われ、多彩な能力が身につき、最先端の技術に触れる機会に恵まれている環境だといえるでしょう。
機械好きや細かい作業、学び続ける姿勢がある方であれば適性がある職業だといえます。
また、必要な資格やスキルにも触れましたので、制御設計に魅力を感じた方は、目指してみてはいかがでしょうか。