バイオインフォマティクスは将来性がある?就職先や平均年収、仕事にするためのポイントを解説
生命科学の進歩により、ゲノムデータの量は爆発的に増加しています。この膨大なデータを人力で解析するのは難しく、効率の良い分析手法が求められています。そこで注目されているのが、「バイオインフォマティクス」です。
この記事では、バイオインフォマティクスの概要と将来性、主な就職先、この分野でキャリアを築くためのポイントについて解説します。
バイオインフォマティクスとは
バイオインフォマティクスは、「生物学(バイオロジー)」と「情報科学(インフォマティクス)」を組み合わせた新しい学問分野です。
生命に関する膨大なゲノム(DNA・遺伝子)データをコンピューターを使って分析し、生命や病気の仕組みを明らかにしたり、治療薬を開発したり、有害物質を出す生物を見つけ出したりします。
「ヒトゲノム計画」以降、生物学で扱うデータ量は爆発的に増えました。例えば、ゲノムは約30億個のDNA配列で成り立ちます。こうした情報を人間の力だけで分析するのは不可能に近いでしょう。
そこで、コンピューターを駆使して効率よく解析し、生命の謎を解き明かすのがバイオインフォマティクスの目的です。
バイオインフォマティクスの将来性
バイオインフォマティクスは、生命科学の研究において欠かせない存在となっており、その将来性は今後さらに高まると予想されています。
まず、次世代シーケンサー(NGS)の発展により、生物学で扱うデータ量が飛躍的に増えています。次世代シーケンサーとは、DNAの塩基配列を高速かつ大量に解読できる最新の機器です。低コストでゲノム解析ができるようになりました。
また、機械学習や深層学習などのAI技術の進歩により、複雑な生物学的データをより高精度に解析できるようになってきています。
さらに、「オーダーメイド医療(個別化医療)」の実現にもゲノム情報は大きな役割を果たします。ゲノム情報を分析することで、一人一人の体質や医薬品の副作用を踏まえた、最適な治療を選べるようになるでしょう。
バイオインフォマティクスの発展は、医療や健康の向上に大きく貢献すると期待されています。
バイオインフォマティクス分野の主な就職先
バイオインフォマティクス分野の主な就職先をご紹介します。
製薬企業
製薬企業では、バイオインフォマティクスが新薬開発の様々な段階で活用されています。
例えば、大量の遺伝子データを解析して新たな創薬ターゲットを見つけたり、既存の薬剤の新しい用途を探索したりします。また、薬の効果や副作用を予測するシミュレーションにも使われ、臨床試験にも貢献しています。
バイオインフォマティシャンはこれらの解析作業を行うだけでなく、研究者や医師と協力して、データに基づいた意思決定をサポートする重要な役割を担っています。
医療機関
医療機関では、ゲノム医療や個別化医療の実現に向けて、バイオインフォマティクスが重要な役割を果たしています。
各患者のDNA情報を解析し、その人に最適な治療法や医薬品を選択するために、バイオインフォマティクスの技術が使われています。
また、がん細胞の全ゲノム情報を解析し、がんに関連する遺伝子変異を特定することで、より効果的な治療法の選択や新たな治療法の開発に貢献しています。バイオインフォマティシャンは医師と協力して、患者データの解析や解釈を行っています。
さらに、電子カルテシステムと連携したデータ解析や、医療ビッグデータの活用にも携われるでしょう。
バイオベンチャー企業
バイオベンチャー企業とは、最新のバイオテクノロジーを用いて医療や産業を発展させる先端技術を研究・開発する企業のことです。
例えば、ゲノム解析によるがん治療への貢献、ライフサイエンス分野の研究に使用する高度データ解析システムの開発・提供、新たな再生医療製品の提供などが挙げられます。
バイオインフォマティシャンは、これらの開発プロジェクトの中心的な役割を担い、データ解析やアルゴリズム開発、ソフトウェア設計などを行います。ベンチャー企業ならではの柔軟な環境で、最先端の研究開発に携わることができます。
IT企業
IT企業では、生命科学分野に特化したデータ管理システムやクラウドプラットフォームの開発、バイオインフォマティクス向けの解析ツールやソフトウェアの開発などが行われています。
バイオインフォマティシャンは、生物学の知識とIT技術を組み合わせ、使いやすいツールやシステムの設計・開発に携わります。また、顧客である製薬企業や研究機関のニーズを理解し、適切なソリューションを提案する役割も担います。
大学、国立研究所などの研究機関
大学や国立研究所では、バイオインフォマティクスを活用した基礎研究から応用研究まで多岐にわたる研究が行われています。
バイオインフォマティシャンは、自身で研究プロジェクトを立ち上げて進めるだけでなく、他の研究者と協力して複合的な研究にも携わります。
さらに、産学連携プロジェクトに参加し、企業と協力して研究成果の社会実装に取り組むチャンスもあるかもしれません。
コンサルティング会社
コンサルティング会社では、製薬企業や医療機関、バイオテクノロジー企業に対し、バイオインフォマティクスに関する専門的なアドバイスやサポートを提供しています。
バイオインフォマティシャンは、クライアントの課題を深く理解し、最適なソリューションを提案・実装する役割を担います。また、最新の技術動向や法規制に関する情報提供も行い、クライアントの戦略立案をサポートします。
この仕事では、技術的な知識だけでなく、コミュニケーション能力やプロジェクト管理能力も求められるでしょう。
食品企業
食品企業では、バイオインフォマティクスを活用した食品開発や機能性評価が行われています。
例えば、食品中の機能性成分の効果を予測するためのデータマイニング、マイクロバイオーム解析、食品アレルゲンの予測などが挙げられます。
バイオインフォマティシャンは、これらの解析を通じて健康により良い食品や、特定の健康効果を持つ「機能性表示食品」などの開発に貢献します。
バイオインフォマティクスの平均年収
バイオインフォマティクスの平均年収についてまとめました。
厚生労働省が管理する「jobtag」では、バイオテクノロジー研究者という名称となっており、その平均年収は740.2万円とされています。全国の平均年収より、高い水準です。
職業 | 平均年収 |
---|---|
製薬企業 | 600万円〜1,000万円 |
医療機関 | 550万円〜850万円 |
バイオベンチャー企業 | 400万円〜700万円 |
IT企業 | 400万円〜450万円 |
大学、国立研究所など研究機関 | 400万円〜500万円 |
コンサルティング会社 | 500万円〜1,000万円 |
食品企業 | 400万円〜700万円 |
※平均年収はあくまで目安であり、実際の求人とは異なることがあります。
バイオインフォマティクスを仕事にするためのポイント
バイオインフォマティクスの分野で活躍するためには、特定のスキルと知識が必要です。
以下では、この分野でキャリアを築くための大切なポイントを解説します。
基礎知識を習得する
バイオインフォマティクスは生物学と情報科学の融合分野であるため、両方の基礎知識が欠かせません。
生物学の知識としては、分子生物学、遺伝学、生化学などが重要です。DNA、RNA、タンパク質の構造と機能、遺伝子発現のメカニズム、細胞生物学の基本原理などを理解する必要があるでしょう。
情報科学の面では、プログラミング言語(Python、R、Perlなど)、データベース管理、統計学、機械学習の基礎などが求められます。
こうした基礎知識を習得するためには、バイオインフォマティクスや生命情報科学を専門とする大学の学部・学科で学ぶといいでしょう。また、生物学系や情報科学系の学部でバイオインフォマティクス関連の授業を受講することも可能です。
実践経験を積み重ねる
理論的な知識だけでなく、実践的なスキルを身につけることも重要です。
例えば、プログラミング演習を通じて、実際のデータ解析に使用されるツールやライブラリの使い方を学びましょう。オンラインの学習プラットフォームやGitHubなどでバイオインフォマティクス関連のプロジェクトに取り組んでみてもいいかもしれません。
また、実際の研究データを用いたデータ解析の経験を積むことも大切です。公開されているゲノムデータベースを利用して、遺伝子発現解析や変異解析などを行ってみてもいいでしょう。
さらに、大学の研究室やバイオベンチャー企業でのインターンシップに参加することで、実際の研究プロジェクトに携わるチャンスを得られます。
ネットワークを作る
バイオインフォマティクスの分野で成功するためには、同じ分野の研究者や専門家とのネットワークを構築することも重要です。
学会への参加は、最新の研究動向を知り、他の研究者と交流する絶好の機会です。日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)や、アジア太平洋バイオインフォマティクス会議(APBJCなど)の国際会議に参加することをおすすめします。
また、オンラインコミュニティへの参加も有効です。BioinformaticsやBioStarsなどのプラットフォームでは、ゲノム研究の最新情報を受け取りたり、世界の研究者とつながるチャンスがあります。LinkedInやTwitterなどのSNSを通じて、業界の専門家とつながれるでしょう。
これらのネットワークを通じて、最新の技術動向や求人情報を得たり、共同研究の機会を見つけたりすることができます。また、自身の研究や成果を発表する場としても活用できます。
まとめ
バイオインフォマティクスは、生命科学の発展に欠かせない分野として注目をされています。就職先は多岐にわたり、平均年収も高水準です。
この分野でキャリアを築くには、生物学と情報科学に関する基礎知識の習得、実践経験の積み重ね、専門家とのネットワーク構築が大切です。
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