機械設計とは?仕事内容ややりがいを紹介!求められるスキルや資格も
機械設計は日本国内で重要な地位を占める仕事です。そのため、就職や転職で機械設計の分野を目指している人もいるでしょう。未経験からでも目指せるのか、就業したあとにどんなスキルアップが必要なのかなど、気になっている人も多いはずです。
この記事では、機械設計はどんな人に向いているか、どんな仕事なのかと いった基礎的なポイントを解説します。
企業における機械設計とは
機械設計は、日本の製造業の中核となる重要な分野です。日本の敗戦後、製造業が復興し始めた1960年代から、造船や重機メーカーの設計部門として発展を遂げてきました。
機械設計業者は、自動車、家電、工作機械、建設機械など、日本を代表する工業製品、さらには鉄鋼や石油化学などの素材産業にも広く関わり、「ものづくり立国日本」を支える根幹部門です。
経済産業省「特定サービス産業実態調査」の最終版(平成30年)によると、以下のような市場規模となっています。
- 事業所数 5,594事業所
- 従業員数 43,500人
- 年間売上 4,731億円
以下では、機械設計のやりがい、平均年収、製品設計との違いについてまとめていきます。
機械設計のやりがい
機械設計の仕事のやりがいは、やはり何といっても「自分が設計した製品が世の中に出る瞬間」でしょう。そこには実際に設計に携わった人間にしか分からない、大きな感動があります。製品を完成させるために行った様々な試行錯誤や、チームメンバーとの共創など、このようなプロセスが大きな達成感を生み出すのです。
機械設計者は常に市場の動向や新しい技術、素材を学び、それらを活用してより優れた製品を設計します。変化する環境の中で、広い視野を持って最善の解決策を模索することもまた、この仕事の魅力の一つです。
機械設計の平均年収
機械設計の平均年収は、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」である程度調べられます。
同調査によると、「機械技術者」のカテゴリーの年収は約480万円から610万円程度とされています。この金額は月給とボーナスを合わせた合計額です。
機械設計と製品設計の違い
機械設計と似た概念に製品設計がありますが、両者の違いは以下の通りです。
- 製品設計:自動車や家電などの製品を設計することです。製品とは「製造された物品」のことで、通常は大量生産されるものを指します。
- 機械設計:製品を生産するための機械を設計することです。例えば、建設機械、生産機械、食品機械などが含まれます。こういった装置を作るための図面を作成します。
機械設計に向いている人
機械設計に特に向いているのは、主に以下の5つの特徴に当てはまる人です。
- モノづくりに興味がある人
- 学ぶことが苦にならない人
- PCスキルを身につけられる人
- 細かい作業ができる人
- 一つのことに集中できる人
自分に当てはまるかどうか意識しながら、以下を読んでみてください。
モノづくりに興味がある人
モノづくりへの興味は、機械設計においてもっとも根源的とも言える動機です。なぜなら機械設計は、自分のアイデアや技術を具体的な製品として実現する仕事なので、モノづくりへの情熱を持つ人にとっては、非常にやりがいを感じられるはずです。
小さい頃に(あるいは成人してからでも)プラモづくりに熱中したことがあるとか、小学校の時に図工が好きだった人には特に向いていると言えます。自分が手がけた製品が、自分だけでなく世の中で広く使われるようになるのはこの上ない喜びとなるでしょう。
学ぶことが苦にならない人
学ぶことが苦にならない人、あるいは学ぶことが好きな人にも、機械設計は向いています。機械設計の分野は常に進化しており、新しい知識や技術が絶えず登場するので、勉強が欠かせないためです。
機械設計者の学びの範囲は、製図、材料力学、機械要素部品、機構など、幅広い分野に及びます。大学卒業までの学びだけでなく、実務での絶え間ない学習も求められるため、学ぶことに対して前向きであることが必要です。逆に、就職したらもう勉強したくないというタイプの人には向きません。
パソコンスキルを身につけられる人
パソコン操作が得意でスキルを自ら伸ばせる人も、機械設計に向いていると言えます。機械設計の仕事においては、CADなどの専門ソフトウェアをはじめとしたパソコン操作が不可欠なので、基本的なパソコンスキルだけでなく、専門的なソフトウェアの操作能力も求められるためです。
パソコンスキルが高ければ設計作業の効率や精度が高まるので、パソコン操作に自信のある人は機械設計の分野で活躍しやすいでしょう。
細かい作業ができる人
細かい作業ができることも、機械設計においては重要な要素です。機械設計では、ミリ単位の精密な作業が求められる上、製図作業や試作品の作成においては細部にわたる注意が必要となるためです。
ジグソーパズルが得意な人や、プラモデルの小さな部品を壊さずに組み立てられる人のように、細かい作業を丁寧に、かつ忍耐強く行える人に向いた職種であると言えます。
一つのことに集中できる人
一つのことに集中できる人は機械設計に向いています。なぜなら、機械設計は一度の設計で完結することは少なく、試作や改良を繰り返す作業が多いためです。
同じプロジェクトに長期間集中し、細部にわたる改善を行う必要があるので、このような繰り返しの作業に対して集中力を保ち続けられる人は、機械設計の分野で高く評価されるでしょう。
機械設計の仕事内容・プロセス
機械設計のプロセスは、主に「構想設計」、「詳細設計」、「生産設計」という3つの段階に分かれています。各段階の後にはデザインレビュー(DR)を行い、設計の適切性や問題点を検討します。
そのため、実際の流れは以下の通りです。
- 構想設計
- デザインレビュー
- 詳細設計
- デザインレビュー
- 生産設計
構想設計
構想設計とは、顧客のニーズや求められているコンセプトに基づいて、製品の基本的な構造や仕様を決定する段階のことです。サイズや使用する部品の種類、用いる技術を決めることもこの段階に含まれます。
構想設計は、製品の基本的な方向性を定めるため、非常に重要なプロセスです。
詳細設計
詳細設計とは、構想設計のアウトラインに基づいて、具体的な図面を作成し、試作品を作りながら検証を行う段階です。この段階では、素材や形状の変更を含む多くの試行錯誤が行われ、設計の精度を高めていきます。また、環境への影響、製造期間、コストなどの検討も必要です。
試作品を通じて、設計の実現可能性や修正の効果を確認し、コンセプトから逸脱しないよう注意深く進められます。
生産設計
生産設計とは、実際の製造工程を考慮に入れた設計を行い、設計図を仕上げる段階です。工場の意見を取り入れながら、部品や工程の共通化、部品点数の削減などを目指します。サイズ、材質、部品選定、組立・加工方法などを最終的な設計図に反映させ、工場での製造がスムーズに行えるようにします。
デザインレビュー(DR)
デザインレビュー(DR)とは、設計の各段階のチェックを行うプロセスです。ここでは、設計の意匠や機能性、コスト、納期などを社内の各部門の専門家が評価し、製品の完成度を高めることを目指します。
このプロセスは、多くのメーカーで採用されており、製品開発の質を高めるために不可欠です。
機械設計の仕事に求められるスキル
機械設計の仕事を円滑に進めるには、いくつかの特定のスキルが求められます。
ここでは以下の4つのスキルについて、その必要性について述べていきます。
- CAD・CAE
- 四力学
- 発想力
- コミュニケーション能力
意外に感じられるものもあるかもしれません。一つずつ読み進めてください。
CAD・CAE
機械設計に必要なCAD・CAEとは、以下のようなスキルです。
CAD(Computer Aided Design)は、コンピュータを利用した設計ツールで、2次元や3次元の図面作成に用いられます。従来、設計図は紙に書かれていましたが、CADによってデータ化が可能となったため、管理や共有、修正が容易になりました。CADは、製品や治具・工具の設計など多岐にわたる用途に対応しており、様々な業界で活用されています。
CAE(Computer Aided Engineering)は、コンピュータを利用したエンジニアリングツールで、主にシミュレーションや解析を行うものです。物理現象の計算や内部現象の可視化を通じて、CADによる設計を検証します。
CAD・CAEのスキルは、専門のトレーニングや実務経験を通じて身につけられます。初心者は基本的な操作から学び、徐々に複雑な設計や解析に挑戦することが重要です。
四力学
四力学は、構造力学、材料力学、熱力学、流体力学の総称で、機械設計において必須の知識です。これらの分野は、機械の強度や動作、流体の動き、熱の発生といった様々な側面を考慮する際に重要となります。設計する機械の種類によって、四力学のうち特に用いられる分野は異なりますが、まずは四つとも一通り理解することが大切です。
四力学は、大学の機械工学科で学ぶのが一般的ですが、高校物理の知識を基に自習することも可能です。未経験者の場合は、高校物理の力学や熱力学から学び始めることが推奨されます。
発想力
機械設計における発想力とは、新しい解決策やアイデアを生み出す能力を指します。技術的な課題を解決するためには、従来の枠にとらわれない創造的な思考が必要です。発想力は、既存技術の応用や新技術の開発において重要な役割を果たします。
発想力を高めるためには、幅広い知識を持ち、様々な分野の情報に触れることが重要です。参考書を読む、異なる分野の技術に触れる、実務経験を積むなど、多角的なアプローチが効果的です。また、「狭く深く」よりは「広く浅く」を心がけましょう。思わぬインスピレーションが得られることもあります。
コミュニケーション能力
少し意外かもしれませんが、機械設計においてはコミュニケーション能力が大切となります。
機械設計においては、多様なステークホルダーとのコミュニケーションが不可欠です。例えば、上司、同僚、サプライヤーなどです。ここでコミュニケーションが不十分だと、誤解や摩擦が生じ、プロジェクトの進行に支障をきたすことがあります。
コミュニケーションは、理系の人が苦手とする場合も多いのですが、実践を通じて改善していけます。他部門との協力やチームワークを意識した言動をとり、異なる視点を理解するよう努めましょう。
機械設計の仕事に役立つ資格
機械設計の分野で活躍するためには、専門的な知識や技術を証明する資格も重要です。
ここでは、機械設計の仕事に役立つ主要な資格について、以下の3つを紹介します。
- 技術士(機械部門)
- 機械設計技術者試験
- CAD利用技術者試験
ぜひ読み進めて、資格取得に役立ててください。
技術士(機械部門)
技術士は、エンジニアに与えられる資格の中では、日本で最も権威のある資格の一つです。計画、研究、設計、分析、試験、評価などの分野で活躍し、それらを指導する能力も備えていると認められた人物に与えられる資格です。技術士資格は21の専門部門に分かれており、その中の一つに「機械部門」があります。
合格基準と合格率は以下の通りです。
- 一次試験 筆記試験は各科目50%以上の得点で合格。合格率は30~50%程度。
- 二次試験 筆記試験と口頭試験で60%以上の得点が合格。合格率は10%前後。
技術士試験の公式サイトより、試験に関する情報を以下の通りまとめました。
受験資格 | 一次試験は特になし。さらにJABEE認定課程を大学等で修了した場合は一次試験が免除される。 二次試験は実務経験が必要 |
試験日 | 一次試験は11月頃 二次試験は7月頃(筆記)・12月頃(口頭) |
試験会場 | 全国の主要都道府県(一次・二次筆記) 東京(二次口頭) |
受験料 | 一次 11,000円 二次 14,000円 |
申し込み方法 | 公式サイトより受験申込書を入手し、郵送にて申し込み |
試験内容 | 一次 ①基礎科目 ②適性科目 ③専門科目 二次 ①必須科目 ②選択科目 ③口頭試験 |
機械設計技術者試験
機械設計技術者試験は、機械や装置の設計・開発に関する専門知識と技術を評価するための試験です。この試験では、基本的な機械工学の知識や技術が1級から3級に分けて審査されます。合格基準は公開されていませんが、合格率は各級とも3割程度です。
機械設計技術者試験の公式サイトから、試験に関する情報を以下の通りまとめました。
受験資格 | 3級 特になし 2級 実務経験(学歴により3~7年) 1級 実務経験(学歴により5~10年) |
試験日 | 11月中旬頃 |
試験会場 | 全国の主要都道府県 |
受験料 | 3級 8,800円 2級 22,000円 1級 33,000円 |
申し込み方法 | 公式サイトからWEBフォームで申し込み |
試験内容 | 3級・2級 機械設計に関する知識 1級 機械設計に関する知識と小論文 |
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、CADシステムの知識と実技スキルを評価する試験です。2次元CADと3次元CADの試験があり、グレードは以下のように3つに分かれています。
- 2次元CAD 基礎・2級・1級
- 3次元CAD 2級・準1級・1級
合格率は級が上がるごとに低下し、2次元CADの場合は80%(基礎)~50%(1級)、3次元CADの場合は60%(2級)~30%(1級)という程度です。
CAD利用技術者試験の公式サイトから、受験情報を以下の通りまとめました。
受験資格 | 1級のみ「2級に合格していること」が受験資格 |
試験日 | 7月と12月 |
試験会場 | 全国47都道府県 |
受験料 | 2次元 基礎:4,400円 2級:6,050円 1級:16,500円 3次元 2級:7,700円 準1級:11,000円 1級:16,500円 |
申し込み方法 | 公式サイトからWEBフォームで申し込み |
試験内容 | CADと製図に関する知識。1級は実技もあり。 |
まとめ
機械設計とは、製品を作るための機械を設計する業務です。機械工学に関する知識やCADなどのスキルだけでなく、発想力やコミュニケーション能力という、ある種「文系的」なスキルも求められる高度な仕事といえます。スキルアップが欠かせない業種なので、資格試験を目標にするなどして日々の勉強を欠かさないようにしましょう。