化学メーカーの将来性はない?業界の求人からみる需要や今後の注目度を解説
わたしたちの日常生活に不可欠なプラスチックやゴムの製造に携わっている化学メーカー、社会への貢献度が高い点が魅力の業界です。化学メーカーへの就職を考えている方は将来性について知りたいと思っているのではないでしょうか。この記事では、化学メーカーの概要を説明し、将来性に期待できるメーカーを選ぶためのポイントについて解説します。
化学メーカーとは?特徴や分野、職種をチェックしよう
化学メーカーの将来性について分析する前に、そもそも化学メーカーの特徴や分野、職種について説明します。
化学メーカーの特徴
化学メーカーとは石油や天然ガスなどの資源を原料とし、プラスチックやゴムなどの製品を製造・販売する企業です。わたしたちの消費生活のありとあらゆる分野に使われる素材を提供しており、多くの人手を必要としている業界と言えるでしょう。
一般的に、化学メーカーは化学業界に詳しい、あるいは興味がある学生や経験者を求めて求人広告を出していることが多いようです。ただし、資格がなくても働ける分野もあり、就職してから経験を積むことも可能な場合もあります。そのため、キャリアアップや収入アップのために働きながら資格取得を目指す人も多いと考えられます。
主な分野は3種類
化学メーカーの主な分野は以下の3種類です。
・総合化学メーカー:原料から製造・販売までを行う企業です。国内大手では、三菱ケミカルや住友化学、旭化成などが知られています。
・誘導品メーカー:基礎原料から生成された中間材料を製造する企業。塩化ビニルなどの部品を作ることが多く、最終的な製品は作りません。大手では東レやデュポンが誘導品メーカーです。
・電子材料メーカー:半導体などの電子部品を製造し、電子機器を取り扱うメーカーに販売する企業です。具体的には液晶パネルや半導体パーツを製造しています。富士フイルムや、昭和電工マテリアルズが例として挙げられます。
化学メーカーに携わる職種
化学メーカーの職種には大きく、研究開発職、生産職、営業職に分けられます。
研究開発職もさらに基礎研究、工業化研究、商品開発、生産・技術開発研究などの分野に分類可能です。基礎研究は直接ビジネスに結びつく分野ではありませんが、数年かけて商品開発の基礎となる研究を行います。そこで得られた研究結果や知見をどのように応用し、商品化するかを考えるのが開発職です。
生産職は、開発された商品を製造し、品質や物流を管理する職種であり、営業職はクライアントに営業をかけ、商品を提案する職種です。
化学メーカーの将来性は?
これから化学メーカーに就職することを検討している方にとっては、化学メーカーの将来性が心配になるところです。ここでは、3つの観点から化学メーカーの将来性について分析します。
成長率は横這い状態が続いている総務省と経済産業省がまとめた「2020年工業統計調査」によると、2019年の化学工業の製造品出荷額等は29.2兆円であり 、化学業界の市場規模の大きさが分かります。しかし、成長率に関してみると、中国以外の成長率は横這いになっている傾向が伺えます。
成長率が上昇するためには、利益率の改善や機能性化学品の競争力向上などが課題です。
原油価格に大きく左右される
化学メーカーが生産する多くの製品には、原油が使用されているため、化学メーカーの業績は原油価格に大きく左右されます。つまり、原油価格が高騰すると製品のコストが高まり、需要と供給のバランスが崩れてしまうのです。化学メーカーが売上を安定させるためには、原油以外の原材料を採用した製品を開発するなど、原油に左右されない構造をつくる必要があると言えるでしょう。
就職のハードルが多少高いものの需要はある
以上述べたように、化学メーカー全体の成長率が横這いであり、原油価格に左右されている状態であることから、就職のハードルが以前と比べて高くなっているのが現状です。しかし、日本の労働市場全体が少子高齢化の影響で人材不足の傾向が強まっているため、経験者や資格保有者などを対象とした中途採用の求人広告も少なくありません。
将来性に期待できるメーカーの特徴5選
業界全体では成長率が横ばいの化学メーカーですが、企業によって個別の成長率は異なります。そのため、化学メーカーへの就職を希望しているなら、将来性に期待できるメーカーを見極めることが重要です。
ここでは、そのための5つのポイントを解説します。
1.利益率が高い/維持できている
1つ目のポイントは、利益率が高く、維持できているかどうかです。利益率は売上高に対する利益の割合を指します。
一概にはいえませんが、企業の経常利益率の平均値は4%程度と言われており、10%以上なら優良企業と考えられます。利益率が高いということは、コスト削減に成功しており、付加価値の高い製品を提供しているということであり、極論をいえば、明確な経営戦略を持っていると言えるでしょう。倒産や経営悪化の不安が少ないとも言えるため、将来性を判断する上でまず確認したいポイントです。
2.売上高がある/今後高まると見込まれる
2つ目のポイントは、売上高があること、また今後高まると見込まれているかどうかです。前項で述べたように、売上高と利益には相関関係があるため、売上高が高ければ社員の収入にも良い影響をもたらすと考えられます。
もちろん、いくら多くの売上があっても、コストがかさみ、経営戦略がうまくいっていなければ利益を残せないため、前述した利益率のチェックは欠かせません。売上高は、利益率の次に確認したいポイントです。
3.社員の平均年収が高い
3つ目のポイントは、社員の平均年収が高いことです。一般的に、平均年収が高いメーカーは収入安定・キャリアアップ・年収アップなどに期待できます。求人情報や口コミサイトを確認し、社員の平均年収を調査しましょう。情報ソースや調査対象によって、データに若干の違いがあるため、複数のサイトをチェックすると良いかもしれません。
4. 石油製品に依存しない製品を取り扱っている
4つ目のポイントは、石油製品に依存しない製品を取扱っているかどうかです。上述したように、石油は価格変動が大きく、価格上昇がみられる時期は売り上げに期待できません。特に2021年現在、日本は原油輸入の90%以上を中東に依存していますが、政情不安のためにこれまでも原油価格の高騰に何度も直面してきました。
石油製品に依存せず、リチウム電池関連製品など、幅広い製品を取り扱っているメーカーは売り上げが安定し、社員の収入安定にもつながると言えるでしょう。
5.取り扱っている製品の市場動向が良好
5つ目のポイントは、取り扱っている製品の市場動向が良好なことです。例えば、脱石油を目指し、多くの化学メーカーはEVなどのモビリティ分野にシフトしています。上述したようにリチウム電機関連製品の研究、生産に着手する化学メーカーが増えているのは、世界的にサステナビリティへの取り組みが強化されており、環境問題や社会問題を解決するソリューションを提供するマーケットが拡大することが見込まれているからです。このように市場拡大が見込まれる、あるいは市場拡大している製品をメインで扱っているメーカーは就職先として理想的だと言えるでしょう。
将来性のある化学メーカーを探す3つのポイント
ここでは、5つのポイントを念頭に置きながら、将来性のある化学メーカーを探す3つの方法を紹介します。
1.企業のホームページや口コミを徹底的にリサーチする
最初にやるべきなのは、企業のホームページや口コミを徹底的にリサーチすることです。
具体的には、企業のホームページで企業概要を確認します。上述したポイントに含まれる売上高や利益率、また資本金などの情報は企業概要に掲載されているので、必ずチェックしてください。
また、企業紹介のポータルサイトなどで口コミをチェックしましょう。その際、優良企業のみを掲載しているサイトを確認するのもおすすめです。
2.就活のプロに相談・就活サービスの利用を検討する
将来性のある化学メーカーを探す2つ目の方法は、就活のプロであるキャリア支援サービスなどを活用することです。いくら企業のホームページなどで情報を収集しても、自分一人で立てられる戦略には限界があります。そのため、情報収集や分析、自己アピールの準備などの段階で行き詰まりを感じたら、就活のプロに相談したり、就活サービスを利用したりすることも検討してみてください。自分とは異なる視点でサポート・アドバイスが受けられるでしょう。
また、自分に適した職種の提案もしてもらえるなど、自己分析にも活用できるはずです。
3.自分をアピールして企業から声をかけてもらう
また、自分からアピールして、企業側からヘッドハンティングしてもらうのを待つのも1つの方法です。近年ではさまざまなプラットフォーム・サービスが広まり、自分の経歴やアピールポイントを掲載するだけで企業から声をかけてもらえる機会が増えています。上述した2点に注力しつつ、自分をアピールする場を設けて企業からオファーしてもらえる環境をつくっておくことも賢明な方法です。
まとめ
化学メーカーの業界全体の成長率は横ばいですが、企業ごとに業績や経営戦略は異なります。また、自分が化学メーカーのどの分野で働きたいかにとっても、将来性は異なるでしょう。まずは就職を検討している企業について情報収集を行い、自分の希望や適性にあった職種を選ぶことが大切です。自己分析や就職対策でサポートが必要なら、就職支援サービスに相談してみることをおすすめします。