溶接のロウ付けとは| 強度ややり方とはんだ付けとの違いも解説!
ロウ付けとは、知名度の高いはんだ付けと似たような手法で、金属同士を頑丈に接合する方法の一つです。とはいえはんだ付けとは特徴や用途によって向き不向きがあります。ロウ付けはDIYとして趣味の一つとしても簡単に取り入れられますし、工場勤務の仕事でも扱われる作業でもあります。ここでは、ロウ付けとはそもそも何なのか、はんだ付けや溶接との違い、ロウ付けのやり方の手順、ロウ付けを扱う職業に有利な資格について紹介します。
ロウ付け(ろう付け)とは
ロウ付けとは、金属動詞を接合する方法の一つです。
金属をつなげるには火花が散るような作業を連想しがちですが、ロウ付けはガスを使って接合します。
ロウとは低い温度で溶ける素材の合金で、つなげたい母材(金属)と母材(金属)の間に接着剤のように使用します。ロウは融点が低いことから母材の金属を傷つけることなく、接合できることが特徴です。
ロウ付けの強度
ロウ付けの強度は、熱によって溶ける金属のロウによって接合されるため、強度は高いです。はんだ付けという、その他の金属接合方法と比較しても、ロウ付けの方が強度は上でしょう。
ロウ付けが使われているもの
ロウ付けは、小さいものから大きいものまでさまざまなものに使われます。身近なものだと、ピアスなどのシルバーアクセサリーやメガネフレームなどが挙げられますが、その他にもエアコンや冷凍機器、大きいものでは奈良の大仏や航空機などにも使われている手法です。
ロウ付けと溶接の違い
ガス火を用いて金属を接合するという点では、溶接とロウ付けは似ています。
溶接は母材自体を溶かして接合しますが、ロウ付けは低音で溶ける合金を接着剤として用いて接合するため、母材を傷つけないという点が大きな違いでしょう。
ロウ付けとはんだ付けの違い
ロウ付けとはんだ付けは、どちらもはんだやロウを溶かすことで接着剤として使用するため、母材を傷つけないという点では共通しています。はんだとロウの主な違いは以下の通りです。
ロウ | はんだ | |
融点 | 450度以上 | 450度以下 |
強度 | かなり強い | 強い(ロウよりは弱い) |
使用する道具 | ガスバーナー | はんだごて |
ロウ付けとはんだ付けの決定的な違いは、強度でしょう。ロウは溶けて固まる際に、合金を生成するため強度はかなり高く、半永久的に外れることはないといえます。はんだもかなり強度は高いのですが、力のかかり具合によっては外れる可能性もあります。
ロウ付けもはんだ付けも母材を溶かす必要がないため傷つきにくいですが、ロウは、はんだよりも融点が高いため多少は母材の硬度が弱くなる可能性があるでしょう。
そのためはんだ付けかロウ付けかを選ぶ際は、接着強度を重視するのか、母材の硬度を重視するのか用途に応じて選びましょう。
ロウ付けをする際に必要なもの
金属の接合と聞くと、特殊な工具が必要なのではないかと考えがちですが、ロウ付けの必要な道具は基本的に以下の三つです。
- ロウ材
- 耐熱レンガ・セラミックボード
- ガスバーナー
適したロウ材を選ぶことができれば、その他は決して特殊な道具ではありません。ここでは、それぞれの使い方や特徴について解説します。
ロウ材
ロウ材とは、金属を接合するときに接着剤代わりになるものです。低い温度の熱で溶けるもので、溶けて冷えると合金になります。ロウ付けにはこのロウ材が必要ですが、JISで規格化されているロウ材は、全部で以下の7種類あります。
- 銀ロウ:多くの金属に対応している。多少高価。初心者におすすめ。
- 銅・黄銅ロウ:鉄系素材と相性がいい。異種類の金属を使う場合におすすめ。
- リン銅ロウ:比較的安価。フラックス不要。
- アルミロウ:アルミやマグネシウムと相性がいい。溶けやすいので難易度は高め。
- ニッケルロウ:ステンレスや耐熱合金と相性がいい。
- 金ロウ:腐食しにくく、高価。
- パラジウムロウ:腐食しにくく、高価。
扱う母材がアルミやマグネシウム以外であれば、初心者や一般向けのロウ付けは、銀ロウが扱いやすいでしょう。
銀ロウは棒状・板状・ペースト状などさまざまな形状のものがあるため、使いやすいものが選べます。
耐熱レンガ・セラミックボード
小さなものをロウ付けする際は、耐熱レンガもしくはセラミックボードの上において作業するといいでしょう。ロウ付けをするときは、ガスバーナー等で加熱しロウ材を溶かすため、熱に強い素材の上で行うと安全です。熱がまわりのものに引火し火事などの原因となりえるため、ロウ付けを行う環境は十分に気を付けましょう。
通常のレンガは、熱に弱く熱にさらされると割れる可能性があるため、必ず耐熱性のものを使用してください。またセラミックボードで囲いを作ることでより安全に作業を行えるでしょう。
ガスバーナー
ロウ材を溶かすためには、ガスバーナーが必要です。工業用でなく家庭用のガスバーナーでもロウ付けは可能です。家庭用であればガスボンべを交換するだけで、何度も使用できるため使いやすいでしょう。
どんな大きさのものをロウ付けしたいのか、使う頻度や使う環境などに合わせて、使いやすいタイプのガスバーナーを選んでください。
ロウ付けのやり方
ロウ付けは、基本的に以下のような流れで行います。
【ロウ付けのやり方】
① 母材の固定
② サンドペーパーをかける
③ フラックス添加
④ ロウ棒の差し込み
⑤ フラックスを除去
①母材の固定
まずはロウ付けで接合したい母材がズレたり動いたりしないようにしっかり固定します。小さい母材であれば、ペンチなどで挟んで固定することもできます。母材が固定できていないと、ロウ付けの位置が定まらず、ロウ付けがしにくくなるため注意しましょう。
②サンドペーパーをかける
母材の表面に、汚れやサビ・油など余分なものが付着していると、うまく接合できないことがあります。そのため、ロウ付けする前には、母材の表面をサンドペーパーで擦り、余分な汚れはしっかり取り除いてください。
③フラックス添加
次に母体の接合面にフラックスを添加します。フラックスを使用しなかった場合、加熱した際に母材の表面が酸化し、うまく接合できなくなります。表面の酸化を防止したり、フラックスの成分によってより強度を強くしたりするといった役割があるのです。
フラックスは多すぎても少なすぎても、ロウがうまく流れません。適量流し込むことがポイントなので、やや多めに添加するといいでしょう。
④ロウ棒の差し込み
母材の接合面に添加したフラックスがうまく流し込めたら、ロウ棒を差し込み、ロウ材を流し込みます。ロウを流し込んだらガスバーナーで加熱し、接合部分にまんべんなくロウ材を広げましょう。
⑤フラックスを除去
最後に余分なフラックスを取り除けば、ロウ付けは完了します。冷めてからと思いがちですが、母材が冷め切らないうちにフラックスを取り除くようにしましょう。
工場勤務などに役立つロウ付けの資格
工場勤務などでロウ付けの作業があるのであれば、ロウ付けに関する資格が必要なケースがあります。また資格が必須でなくとも、資格を持っているとスキルアップや昇給などにもつながるため、以下のような資格の取得を検討してみるといいでしょう。
- ガス溶接技能講習
- ガス溶接作業主任者
- 銀ろう付け技能者
それぞれどのような資格なのか、受験資格や内容について解説します。
ガス溶接技能講習
ガス溶接技能講習は資格ではありませんが、可燃ガスを用いるロウ付けの業務を行う人は、必ず受講しなければいけない講習です。労働安全衛生法により、ガス溶接技能講習修了証がなければ、可燃性ガスおよび酸素を用いて行う金属の溶接などの業務に就くことができません。そのためロウ付けの業務が含まれる工場に勤務する場合、ガス溶接技能講習を受けるようにしましょう。
講習の内容は学科8時間と修了試験1時間、実技講習が5時間で構成されています。修了証はその日のうちに交付されます。
◎ガス溶接技能講習の概要
受験資格 | 特になし |
講習内容 |
|
公式サイト |
ガス溶接作業主任者
ガス溶接作業主任者は、アセチレン溶接装置またはガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の作業資格を持つ人の中から選ぶ必要があります。作業主任者は事業者が選任し、選任されたガス溶接作業主任者は、これらの作業全般の責任者として作業方法の決定、作業者の指揮などの職務に携わることになります。
ガス溶接作業主任者の試験は学科のみで誰でも受けることができますが、免許申請の際には以下の条件を満たしている必要があります。
- 18歳以上
- ガス溶接技能講習修了者
- 上記二つの条件を満たし、かつ実務条件が3年以上あること
◎ガス溶接作業主任者試験の概要
受験資格 | 特になし |
試験内容 |
|
公式サイト |
銀ろう付技能者
「銀ろう付技能者」資格は、工場などでロウ付けなどの金属溶接を行う職業に役立つ資格です。銀ロウ付けを行うには必須資格ではありませんが、銀ロウ付けのきちんとしたスキルを持った人であることを証明できるため、キャリアアップのために挑戦する人も多いでしょう。銀ロウ付けはスキルに差が出やすい作業なので、資格を持っておくと有利に活用できます。
銀ろう付技能者は、扱うロウ材の種類によって以下のような種類があるため、自分が扱うロウ材にあった資格を取得しておいたり、さまざまなロウ材に対応できるようにしたりしておくと、よりいいでしょう。
- FA-Cu(銅板/薄板)
- FA-S(炭素鋼板/薄板)
- FA-SUS(ステンレス鋼板/薄板)
- PA-Cu(銅管/薄肉管)
◎銀ろう付技能者試験の概要
受験資格 |
以下のうち、いずれかを満たしている
|
試験内容 |
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公式サイト |
まとめ
ロウ付けには、はんだ付けよりもさらに強度が高いというメリットがあります。また母材を傷つけることがないため、技術が習得しやすいともいえるでしょう。工業製品の製作においてだけでなく趣味としてDIYなどでも注目を集めている技術です。資格を取るなど技術を身に付けておけば、仕事の幅も広がり役立つシーンも多いでしょう。