ロット生産とは?ロットの意味や生産管理におけるメリットをわかりやすく解説
「ロット」ということばを時々耳にしますが、どのような意味なのでしょうか?正直なところがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。しかし「ロット」という考えには、生産や管理におけるメリットが多くあります。
この記事を読むと、製造・販売の場で使われる「ロット」の意味やメリットがわかります。製造・商品管理・販売や営業に携わっていて「ロット」がピンと来ていない方はぜひお読みください。
ロット生産とは
「ロット」とは、1つのまとまりとして扱われる数量のことです。ビジネスにおいては1単位となる商品の数のまとまりを指します。「1ロット100個」のように使います。
「ロット生産」は、その数量単位で商品を生産することです。例えば100個が1ロットなら、100・200・300…と100の倍数の個数で生産を行います。150や280などのような100の倍数以外では作りません。ロットの数は、製造者が独自に設定します。自社の利益が出るかどうか・顧客が購入しやすいかどうかなどをもとにして決めます。
ほかの生産方法には「連続生産」や「個別生産」があります。「連続生産」は、同じ製品を一定期間連続して生産する方法です。石油化学・セメント・製紙・鉄鋼といった素材産業のように、特定の製品を大量に生産する業種などで行われています。
「個別生産」は要望・注文に応じて1つずつ生産する方法です。「受注生産」ともいわれ、「多品種少量生産」とも親和性が高い生産方式です。
ロットの使用例
「ロット」はさまざまな場面で使われ、ロットをもとにした概念には下記のような種類があります。
- 製造ロット
- 購入ロット
- 最小ロット
- ロット管理
具体的に見ていきましょう。
製造ロット
「製造ロット」は、製造量の最小単位のことです。ロット生産では製造ロットの倍数で商品を製造します。先に挙げた例のように製造ロットが100なら、製造量は100・200・300…と100の倍数になります。
購入ロット
「購入ロット」とは、商品を購入してもらうときの数の最小単位です。購入ロットの倍数で取引するのが基本です。例えば購入ロットが50なら、最低50個からしか購入できません。また80個などのような、50の倍数以外の数では購入できません。50個より多く必要なときは、基本的には少なくとも100個購入することになります。
ただし交渉によって購入ロットの数を変えてもらうことも広く行われています。例えば購入ロットの数を減らす代わりに単価を高くしたり、購入ロットを増やす代わりに単価を下げてもらったりします。販売側・購入側の両者が納得できる内容であれば、臨機応変に対応することも問題ありません。
最小ロット
「最小ロット」とは、一度に生産したり購入・販売するときの最低のロット数のことです。主に購入・販売の場面で使われます。
先の例のように、販売者・購入者の間で交渉・調整が行われて数が決まる場合もよくあります。最小ロットを100個に設定していたけれども「80個購入したい」と言われる場合です。その場合、単価を上げてもらって販売することもあれば、断る場合もあり得ます。
ロット管理
「ロット管理」とは、製造から出荷までの管理をロット単位で行うことをいいます。製品ごとに「ロット番号」を割り当てて番号で管理します。くわしくは次に示しますが、メリットの多い管理方法で多くの企業で取り入れられています。
ロット生産のメリット
ロット生産の主なメリットとして、次の点が挙げられます。
- 在庫過多を防止できる
- ロット番号によって生産管理がしやすくなる
それぞれ具体的に見ていきましょう。
在庫過多を防止できる
ロット生産では、在庫過多を防止し、さまざまなコストを削減することができます。ロット生産は生産の最低数量を調整しやすくなるからです。
作りすぎはさまざまなムダなコストの原因となります。たとえば、製造の際に製品の材料費が余分にかかります。それだけではありません。目に見えにくいコストですが、工場を稼働させた光熱費や人件費も余分にかかってしまいます。さらに保管するには倉庫などの費用も必要です。保管する時間が長くなれば、商品が劣化する原因にもなってしまいます。
需要に合わせてロット単位で生産量を調節すると、製造過多がなくなります。それに伴って製造過多・在庫過多によるコストも削減できます。
ロット番号によって生産管理がしやすくなる
製品にロット番号を付与すると、生産管理はもちろん保管~出荷の管理までやりやすくなります。ロット番号には製造した場所や日時などの情報を紐づけておきます。ロット番号による管理には次のメリットがあります。
- 先入先出などの在庫管理の効率が高まる
- 不良品が発見された時に対応しやすくなる
ロット番号で生産管理すれば製造日も把握できるため、製造日の早いものから出荷しやすくなります。またロット番号で保管場所や出荷先を管理することにもメリットがあります。不良品が発生したときに、不良品と同時に製造された製品を特定し、どこにあるかをただちに把握することが可能です。回収などの対応をスピーディーに行うとともに、全品回収のリスクを回避することもできます。
ロット生産のデメリット
ロット生産にはデメリットもあります。製造のロット数を少なく設定すると、同じ生産ラインで他の製品を製造するときの切り替えなどが頻繁に発生します。それにより生産効率が下がることになってしまいます。この場合、切り替えの時間を短くすることが問題解決のカギとなります。
逆に最小ロットを大きくすると、余剰在庫が出る可能性もあります。需要や工場の生産能力・保管場所など、全体を見て適切に最小ロットを設定することが大切です。
ロット生産とその他の生産方式の違い
生産方法には、ロット生産のほか次の方法もあります。
- 連続生産
- バッチ生産
それぞれの具体的な内容と、ロット生産との違いについてまとめます。
連続生産
「連続生産」は、1つの商品を一定期間連続して生産する方法です。ある程度以上の数量を見込み生産するときに採用される方式です。生産ラインを特定の製品に限定して使っている場合に、定番製品など小品種大量生産するのに向いています。
少ない種類の製品を製造するのに最適化した方法のため、作業効率がよく生産性が高いというメリットがあります。逆に小回りが利きにくく、嗜好の多様化や需要の変化に対応しにくいというデメリットがあります。
ロット生産が製品の数を生産の単位の基準にしているのに対して、連続生産では製造ラインの稼働時間が基準になる点が異なります。その他、工程と工程の間が連続しているのが特徴となっています。
バッチ生産
「バッチ生産」は、1つの製品をある程度の量まとめて生産する方法です。「まとまった単位で生産する」点はロット生産に似ており、業種によっては同じ意味で使われることもあります。
厳密には、「ロット生産」が製品の個数を基準にするのに対して、「バッチ生産」は生産ラインの稼働時間や原材料の投入量などを基準にします。ロット生産とバッチ生産の違いは、購入者目線で見るか製造者目線で見るかの違いだとも言われます。
業種によっては、「バッチ」「ロット」の語を別の基準で区別します。化学薬品などの分野では、「バッチ」は1つの生産サイクルで生産される単位を指し、バッチをさらに細分化した単位を「ロット」と呼んでいます。
ロット生産の事例
「ロット生産」は、自動車などの機械部品・半導体・家電製品・食品などの製造で採用されています。ロット生産に向いているのは、次のようなケースです。
- 作りすぎると損をする商品を製造している
- 1つのラインで複数の商品を製造している/できる
- 同じ時間に製造できる数と売れる数を比べた時に、製造できる方が著しく大きい
- 一定期間なら在庫として保管できる
上記の採用例の業種は、どれもロット生産と相性がよいと言えます。ただし、とくに食品は需給のバランスに注意して作りすぎないことが必要です。
なおトヨタでは、ムダを排除する「トヨタ式生産方式」により「一個流し生産」に切り替えています。「一個流し生産」は加工するもの(ワーク)を1つずつラインに投入して生産する方法で、問題発見と解決がしやすく生産のスピードが上がります。トヨタでは、滞留在庫のムダを省いたり問題解決をスピードアップしたりするために、一個流し生産を採用しています。
まとめ
ロットは生産や保管・販売などさまざまな場面で活用できるメリットの多い概念です。効率化の方法をお探しなら、ロットを導入できないか検討してみてはいかがでしょうか。