鋳物工場ではどんな仕事をするの?鋳造の方法や鋳物の特徴も紹介!
自動車部品から日用品まで様々な製品を作っている「鋳物工場」。歴史が深い鋳物は、機械やIT技術が発展した現代でも、機械だけに頼らず職人も必要とする製品です。そんな鋳物工場での仕事にはどんな内容があるのでしょうか?
今回は、鋳物工場で働きたい人に向けて仕事内容や鋳物を作るための鋳造方法について詳しく解説します。この記事を読めば、初心者でも鋳物工場のすべてが理解できるようになります。鋳物工場に携わりたい人は、ぜひ参考にしてください。
鋳物とは
鋳物とは、鋳造という加工技術で作られた製品全般を指します。鋳物づくりの歴史は古く、紀元前3千年頃のメソポタミアが発祥で焚火をしている最中に偶然始まったとされており、日本には紀元前400年頃に鋳物づくりの技が伝えられました。
日本では神様を祭る道具が鋳物づくりの始まりでしたが、現在では自動車部品から日用品など多岐にわたる製品が作られています。日本は世界4位の鋳物生産国と言われており、日本独自の鋳物製品も生まれているほど、日本の鋳物は関心の高い製品の一つです。
身の回りの鋳物
身の回りには実に様々な鋳物が使われており蛇口や鍋、デジタルカメラの部品や街灯、マンホールにいたるまで鋳物で作られているのです。日本独自の鋳物製品と言えば「南部鉄器」が有名で、鉄瓶や急須などが作られています。
神社仏閣に祭られている仏像も鋳物で造られているものもあり、その中でも奈良の大仏は世界最大の鋳物の仏像です。。
鋳物の特徴
歴史が古い鋳物ですが、現在においても注目度が高く発展し続けている鋳物製品。鋳物の主な特徴には、以下の2つが挙げられます。
- 形状の自由度が高い
- 大量生産ができる
上記2点は、製品作りにおいて非常に重要な特徴です。それでは、詳しく見ていきましょう。
形状の自由度が高い
鋳物は、鋳造加工された製品と説明しました。鋳造加工は、形状の自由度が高い溶融金属を使用するため、形状が複雑なものや中空部がある形状でも簡単に型取りが可能な点が最大の特徴です。また、鋳鉄をはじめ銅合金やアルミニウム合金、鋼など溶融ができる金属であれば鋳造加工が可能な点も特徴の一つです。
大量生産できる
鋳造加工は、溶融金属を鋳型という型に流し込んだ後は冷やして固めるだけの加工法です。複雑な工程がなく鋳型さえあれば製品が作られるため、大量生産が可能なうえに安価で製造できる点も鋳物の特徴です。
鋳物工場ではどんな仕事をするの?
鋳物の特徴について解説してきましたが、続いては本題である鋳物工場の仕事内容についてご紹介します。鋳物工場の主な仕事には、以下の3つがあります。
- 鋳込み作業
- 型枠外し作業
- 混錬装置のオペレーター
上記の仕事内容には、未経験でも可能な仕事もあります。それでは、詳しく見ていきましょう。
鋳込み作業
鋳込み作業とは、鋳型に溶融金属を流し込む仕事です。大きな鋳物を作る場合は、溶融金属が大量に入ったバケツのようなものをクレーンで操作しながら流し込みます。小さな鋳型へ流し込む場合は、ステンレス製の柄杓などを用いて手作業で行うのが通常です。
溶融金属は金属の種類によって温度は異なりますが、約700度~1300度もの熱さがあり危険を伴うため、作業は慎重に行う必要があります。とはいえ、防護服を着用して作業するため安全面に関しては考慮されています。
型枠外し作業
型枠外し作業とは、鋳型へ流し込んだ溶融金属が冷めて固まったのを確認した後に鋳型から取り出す仕事です。鋳型には砂も入っているため、製品を取り出すときは砂を払い落す作業も含まれます。大型の鋳物の場合は、機械を使って砂と製品を分けて取り外します。
混練装置のオペレーター
混錬装置のオペレーターとは、鋳物に使用する砂を練るための装置を扱う仕事です。混錬装置が正常に動いているかなどの確認や点検なども、作業に含まれます。
混錬左内のオペレーターは鋳造加工における補助的な仕事のため、未経験でも就ける作業内容です。先ずは、混錬装置のオペレーターから始まり、徐々に鋳造加工の仕事について学んでいくのが鋳物工場で働く場合の流れです。
鋳造の方法
鋳物工場の仕事内容を解説してきましたが、続いては鋳造の方法について見ていきましょう。鋳造方法には、以下の9つがあります。
- 砂型鋳造法
- 重力金型鋳造法
- 低圧鋳造法
- 高圧鋳造法
- ダイカスト法
- ロストワックス精密鋳造法
- 遠心鋳造法
- 連続鋳造法
- 消失模型鋳造法
それぞれにメリットやデメリットもあるので、鋳造の方法と合わせて解説します。
砂型鋳造法
砂型鋳造法には、以下3つの型があります。
- 水と粘土を混ぜて硬化する「生砂型」
- 熱硬化性樹脂を混ぜて硬化する「シェル型」
- 水ガラス(珪酸ナトリウム)と混ぜてCo2ガスで硬化する「ガス硬化性鋳型」
メリットには、初期費用が安いことや形状の自由度が高い点が挙げられます。一方で、デメリットは鋳肌面が粗いことや寸法精度が弱い点です。
メリットやデメリットを考慮すると、砂型鋳造法は複雑な形状や大型の鋳物製品に適しています。
重力金型鋳造法
重力金型鋳造は、金属の鋳型に溶融金属を流して鋳物製品を造る方法です。メリットは、鋳肌面が綺麗なことや機械的性質の優れた鋳物を生産できる点です。一方でデメリットは、複雑な形状や大型の鋳物製品は苦手なことと初期投資が高い点が挙げられます。
金型は繰り返し使用できるため、大量生産したい鋳物製品に向いている方法です。
低圧鋳造法
低圧鋳造法は、金型に溶融金属を低圧で流し込む方法です。メリットは、欠陥が少ない高品質な鋳物製品が作れることと材料歩留まり良く強度が高い点が挙げられます。デメリットは、冷却速度が遅いため生産性が低い点です。
高圧鋳造法
高圧鋳造法は、金型に流し込んだ溶融金属を高圧で固める方法です。メリットは、鋳巣が少なく緻密性の高い鋳物製品が作れる点です。高圧鋳造法は、多品種少量生産に向いています。
ダイカスト法
ダイカスト法は、金型に溶融金属を高速・高圧で流し込み瞬間的に鋳物を成形する方法です。メリットは、寸法精度に優れており薄肉な鋳物製品も作れる点です。金型を使用するため、複雑な形状の鋳物製品も大量生産が可能。鋳肌が綺麗な点もメリットです。
ロストワックス精密鋳造法
ロストワックス精密鋳造法は、ワックスを用いて模型を作り鋳型に熱を加えてワックスを溶かし除去してできた鋳型に溶融金属を流し込み鋳物製品を造る方法です。メリットは、複雑な形状でも作成可能なことと強度が強い点が挙げられます。また、寸法精度に優れていることや鋳肌が綺麗な点も特徴です。
遠心鋳造法
遠心鋳造法は、遠心力を用いて中空円筒の鋳物を作るときに使う方法です。主に、水道管やガス管などを製造するときの使う鋳造法で、高速回転する鋳型に溶融金属を流し込み遠心力で加圧しパイプ形状の鋳物を製造します。
連続鋳造法
連続鋳造法は、鋳型に連続的に溶融金属を流し入れ鋳型内部で急速冷却し半製品を取り除く方法です。連続的に流し込めるため、歩留まりと生産性が向上するといったメリットがあります。連続鋳造法は、大量生産に向いている鋳造法です。
消失模型鋳造法
消失模型鋳造法は、模型が溶けて流し込んだ溶融金属が置き換わる方法です。もう少し詳しく解説すると、発泡スチロールで製品と同じ形状の模型を作り、砂の中に埋めて溶融金属を流し模型を消滅させてできた空間部分を溶融金属で置き換えて鋳物を製造します。メリットは、歩止まりが良いことと鋳バリが発生しない点です。そのため、自動車部品や美術工芸品の製造でよく用いられています。
ほかにもある!金属加工の技術
鋳造方法の種類についてご紹介してきましたが、その他のも金属加工の技術はあります。主な金属加工の技術は、以下の3つです。
- 鍛造
- 切削
- 溶接・溶断
それでは、どんな金属加工の技術なのか詳しく見ていきましょう。
鍛造
鍛造とは、熱した金属をハンマーなどで叩いて製品の形状へと成形する技術です。ハンマーなどで叩いて圧力を加えることによって金属内部の隙間を潰すほか結晶を細かくする効果があり、強度が高まるといったメリットがあります。鍛造の技術を用いて製品されるものには包丁やペンチ、フォークなどが挙げられます。
切削
切削とは、金属を削る機械を用いて加工する技術です。金属に切削加工を施す用途としては、穴を開けたり外側や内側を削るときに用いられます。切削加工には、下記2種類の方法があります。
- 旋削加工:機械に固定した金属を回転させながら切削したい部分を固定した工具に当てて加工する方法
- 転削加工:旋削加工とは逆の方法で固定した金属に対して回転した工具を当てて加工する方法
金属を切削加工するメリットは、初期投資が少ないことと金属を熱する必要がない点です。
溶接・溶断
溶断とは金属を熱して切り離す技術で、溶接は金属を熱して金属同士を接合する技術です。溶断は金属製品を作るうえで、不要な部分を切り離すときに用いられます。一方で溶接は、金属同士を接合することで製品化するときに用いられる加工方法です。
まとめ
鋳物の歴史は紀元前から始まっており、日本は世界4位の鋳物生産国で、独自の鋳物製品を生み出すほど鋳物製品が充実している国です。鋳物工場の仕事には大きく分けて3つあり、その中でも混錬装置を管理するオペレーターは未経験でも従事可能な仕事です。未経験でも鋳物工場で働くことは可能なので、前向きに検討してみましょう。