工事責任者の役割とは?現場責任者との違いや必要スキルも紹介!
工事現場では、「工事責任者」という言葉が使われることがあります。
具体的に、どのような仕事をする人なのかご存じでしょうか。
「現場責任者や現場監督とは、どう違うのだろう」という疑問を感じている人もいるでしょう。
この記事では、工事責任者の役割や業務内容を解説するとともに、現場責任者や現場監督との違いについても説明しています。
工事責任者に求められるスキルもまとめたので、これから工事責任者を目指そうと考えている方も、ぜひご覧ください。
工事責任者とは
工事責任者は、建設工事の現場で工事全体の責任を担う人を指します。
規模の大きな工事現場では、作業工程ごとに責任者が決められており、各工程の責任者からの報告をもとに工事全体の指揮を取るのが工事責任者です。
建設工事現場の代表といえる工事責任者ですが、建設業法にも建築基準法にも、工事責任者という言葉は記されていません。
工事責任者という役職があるわけではなく、法的に定められた呼び方でもないのです。
工事責任者というのは、対外的な通称の呼び名として使われています。
ただし企業によっては、独自に工事責任者という役職を設けていることもあるでしょう。
例えばトヨタ自動車では、工場内の安全教育施策のために、工事責任者という役職を定めています。
現場責任者との違い
工事責任者と似た言葉に、現場責任者があります。
建設現場での責任者を工事責任者と呼ぶ場合もあれば、現場責任者と呼ぶ場合もあるでしょう。
現場責任者は、工事責任者と同じく通称の呼び方なので、どちらが正しくてどちらが間違っているということはありません。
どちらも工事全体の進捗を把握して指揮を取る責任者であり、実施する業務は同じです。
現場所長や現場監督も、工事責任者と同じ意味合いで使われることがありますが、これも通称となります。
工事責任者と呼ばれる役職は?
工事責任者と呼ばれる人の、主な役職は以下の通りです。
- 監理技術者
- 主任技術者
- 統括安全衛生責任者
- 元方安全衛生責任者
- 安全衛生責任者
各役職役割や、根拠となる法律を確認しておきましょう。
監理技術者
監理技術者は、建設業法で定められている役職です。
元請負人で、下請契約の請負代金が合計4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)の工事現場に専任で配置されます。
監理技術者の役割は以下の通りです。
- 施工計画の作成
- 工程管理
- 品質管理
- 技術上の管理
- 工事の施工に従事する者の指導監督
主任技術者
主任技術者は、建設業法で定められている役職です。
どのような工事現場にも、必ず主任技術者を配置しなくてはなりません。
主任技術者と管理技術者の違いは、配置される工事現場の規模です。
下請契約の請負代金が合計4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)になる場合は、主任技術者の代わりに監理技術者の配置が必要になります。
統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者は、労働安全衛生法で定められている役職です。
特定元方事業者の現場では、複数の会社の労働者が作業を行ないます。
これによって生じる労働災害を防止するために指揮を取り、統括・管理するのが、統括安全衛生責任者の役割です。
統括安全衛生責任者の選任が必要になる事業規模は、業種区分ごとによる労働者の人数によって変わります。
【統括安全衛生責任者の選任が必要な現場の規模】
業種区分 | 労働者の人数 |
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業 | 100人 |
製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 | 300人 |
その他の業種 | 1000人 |
元方安全衛生責任者
元方安全衛生責任者は、労働安全衛生法で定められている役職です。
統括安全衛生責任者の職務のうち、技術的な管理を行うために選任されます。
統括安全衛生責任者の職務が、適切に行われるように補佐するのが、元方安全衛生責任者の役割です。
元方安全衛生責任者の選任が必要な現場の規模は、統括安全衛生責任者と同じです。
安全衛生責任者
安全衛生責任者は、労働安全衛生法で定められている役職です。
元方事業者と関係請負人、それぞれの労働者が50人以上混在する作業現場では、関係請負人側で選任する必要があります。
建設業では、職長が安全衛生責任者に選任されるケースが多いようです。
そのため厚生労働省では、職長教育と安全衛生責任者教育を兼ねた「職長・安全衛生責任者教育」を推奨しています。
工事責任者の業務内容
工場責任者の主な業務は、以下の通りです。
- 工程管理
- 品質管理
- 安全管理
- 原価管理
- 環境管理
各業務の詳細について解説します。
工程管理
工程管理では、決められた工期で作業を終えるための、スケジュール調整を行います。
各工程ごとの工期を管理しつつ、工事全体の工期も調整しなくてはなりません。
工期に関するスケジュール調整で使うのが、工程管理表です。
全体としての工期工程表のほかに、月間工程表・週間工程表など、一定の期間ごとに工程管理表を作成します。
下請け業者の管理や、各工程の繋がりを管理するのも、工事責任者の役目です。
下請けの工事業者を管理するために使われるのが横線式工程表、作業工程の繋がりを管理するために使われるのがネットワーク工程表となります。
品質管理
品質管理は、建設工事の各工程が、適切に進められているかを管理する業務です。
建築対象物の寸法・機能・強度・材質などが設計図書や仕様書通りに作られているかを確認します。
評価の対象物ごとに定められた方法で試験や点検を行うことで、品質管理を行います。
適切に品質管理されていること証明するための施工記録を作るのも、重要な業務の一つです。
記録のために、施工写真の撮影を行うこともあります。
安全管理
建設工事現場では、作業中に事故が起こらないように、安全管理をしなくてはいけません。
安全に作業するための環境を整えるのも、工事責任者の役割です。
工事の安全管理として、具体的には以下のような活動を行います。
- KYK:危険予知活動
- 5S運動整理・整頓・清掃・清潔・躾
- ヒヤリハット運動
このような活動を通して、工事現場の安全を管理しています。
原価管理
建設工事現場で発生する原価の管理も、工事責任者の業務です。
施工計画などから算出した実行予算より、実際に発生する原価の方が増えると、会社の利益になりません。
施工計画の見直しや、下請工事業者を変更するといった調整を行うことで、利益を計上します。
そのためにも、原価構成とその割合に応じた原価の管理が必要です。
たとえば労働者に対する賃金や現場運営費となる直接労働費であれば50%、建築資材などの材料費であれば10%など、原価構成とその割合には、ある程度の目安があります。
この目安となる割合をもとに原価管理を行い、利益に繋げるのです。
環境管理
環境管理は、工事現場周辺の環境に、工事が原因となる悪影響を出さないために必要です。
工事の内容によっては、現場周辺の空気・水・土壌・地盤などに悪影響を及ぼす可能性があります。
振動や騒音、粉塵による被害も考えられるでしょう。
考えられるトラブルを想定して、対策をしておかなくてはなりません。
工事現場周辺の環境管理のほかに、労働環境の管理も行います。
円滑なコミュニケーションを通して信頼関係を構築するなど、労働者が働きやすい環境を整えることも、環境管理の重要な業務です。
工事責任者に求められるスキル
工事現場で全体の指揮を取る工事責任者には、以下のようなスキルが求められます。
- 知識と経験
- 決断力
- コミュニケーション能力
各項目について、具体的に見ていきましょう。
知識と経験
工事責任者は、工事に必要な工程や手順を把握しておく必要があります。
施工に使う機械類や、設備に関する知識も必要でしょう。
工事責任者が自ら施工することはほとんどありませんが、正しい知識を持って、適切に指示を出さなくてはいけません。
トラブルが起きた時の解決策を考える時にも、十分な経験とそれに基づく知識が求められます。
決断力
決断力も、工事責任者に求められるスキルの一つです。
建設工事現場では、予期せぬトラブルが起こることもあります。
工事責任者は、常に正しい決断をして、問題を解決しなくてはいけません。
不測の事態に動じることなく事態を収拾するためにも、工事責任者には決断力が必要です。
コミュニケーション能力
工事現場では、多くの工事関係者が連携を取って作業を行っています。
建設工事を順調に進めるためにも、工事責任者は、各関係者と良い関係性を築かなくてはなりません。
関係者と積極的にコミュニケーションをとることで、作業の遅れや不測のトラブルがあっても、いち早く察知して対応できるでしょう。
コミュニケーション能力は、現場の指揮を取る工事責任者に欠かせないスキルです。
まとめ
工事責任者は、法的に定められた役職ではなく、建設工事における責任者の通称の呼び方です。
工事全体のスケジュール調整から品質管理や安全管理、利益の計上まで、建設工事に関わるすべてを把握したうえで、的確に指示を出さなくてはいけません。
工事責任者に求められるものは多いですが、現場を指揮する重要な役割であり、やりがいのある仕事です。
これから工事責任者を目指すのであれば、今回紹介した「工場責任者に求められるスキル」なども参考に、知識と経験を積み重ねましょう。