生産工場とは|業務内容・向いている人・きつい点・必要なスキルを紹介
求人を見ていて多いのが生産工場での仕事です。条件のよい求人も多く、気になる方も多いことでしょう。しかし工場勤務の経験がないと仕事がきつそうなイメージがあるのではないでしょうか。
この記事では、生産工場とはどのような職場でどのような仕事があるのか、また向いている人やきつい点などについてまとめました。工場のお仕事を検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
生産工場とは
生産工場とは、工場の中でも製品を生産している工場のことを言います。工場には、製品を作る工場と「修理工場」と言われるような修理や点検を行う工場とがあります。生産工場は前者に当たるということです。
生産される製品は企業によってさまざまです。鉄鉱石から鉄を作る企業もあれば、鉄からネジを作る工場もあります。ネジなどの部品を使って自動車用のエンジンを作る企業もあれば、エンジンやブレーキを組み立てて自動車を作るメーカーもあります。
生産している製品によって、製造業は以下の3種類に分けられます。
- 上流工程…原材料から素材を製造する 例:鉄・紙・繊維など
- 中流工程…素材から部品を製造する 例:タイヤ・半導体など
- 下流工程…部品を組立てて完成品を製造する 例:自動車・家電など
どの工程もほとんどがBtoBの企業ですが、下流工程は一部BtoCの企業もあります。
生産工場と製造工場は違う?
厳密には「生産工場」が生活に必要なものを作る工場全般を指すのに対して、「製造工場」は原料を加工して製品を作る工場を指します。
「生産」「製造」という言葉をもとに考えてみましょう。たとえば「畑で野菜を生産する」とは言えますが、「畑で野菜を製造する」とは言えません。野菜を作るときは加工しないからです。「生産」の方が広い意味を持つ語で、「製造」の方は「加工して生産すること」の意味で「生産」の一部に含まれると言えます。
近年、レタスやハーブなどを計画的に栽培する「野菜工場」「植物工場」があります。植物工場は加工することなしに野菜という製品を生産しています。つまり植物工場は生産工場に当たり、製造工場とは言えません。
しかし使い分けをしていない例の方が圧倒的に数多くあります。工場では加工して製品を作ることが多いため、「生産」「製造」どちらも使えるケースがほとんどだからです。
生産工場の業務とは
生産工場にはさまざまな部署があり、さまざまな業務・職種があります。主な例としては次の業務が挙げられます。
- 生産管理
- 生産技術
- 製造
- 組立
- 事務
それぞれについて見ていきます。
生産管理
「生産管理」は、製品の生産にかかわるあらゆる面を管理する仕事です。製品を生産するための計画の立案からできあがった製品の管理まで、次のような業務を行います。
- 販売計画をもとに生産計画を立案
- 原材料の調達(仕入れ先の選定・価格交渉など含む)
- 納期や必要数に合わせた生産コントロール
- 完成した製品の品質管理
- 製品の納期管理
- 過剰になりすぎないか・不足しないかの在庫管理
製造業では、利益を出すために品質・コスト・納期のすべてを最適化することが必要です。その最適化を目的とする業務が生産管理です。多岐にわたる業務から生産の全体像を把握して、利益が出るようにする重要な職種です。
生産技術
「生産技術」は、高い品質の商品を低いコストで短い納期で生産できる仕組み・体制を作る仕事です。具体的には次のような業務を行います。
- 生産ラインの設備設計
- 生産装置の開発
- 工程の設計
- 生産ラインの課題発見・改善
- 人員の配置
- 製造部門と設計部門の橋渡し
生産の最前線となる現場で、生産ラインが効率よく製品の生産ができるよう取り計らう仕事です。生産する現場をあらゆる面で効率よく稼働させることが求められ、会社が利益を出せるかどうかにかかわる大変重要な業務です。
製造
「製造」はまさに製品をつくる業務です。具体的な作業内容は製品の素材や種類によって多岐にわたります。作業内容としては、次のような例があります。
- 材料投入
- 機械オペレーター(旋盤・成形・研磨など)
製造機械から出てきた製品にキズなどがないか、検査(主に見た目の「外観検査」「目視検査」)を兼務する場合もあります。重たい製品を製造している場合、数十キロの材料や製品を運ぶ作業も発生します。フォークリフトやクレーンの資格を持つ専門のスタッフが担当することもあれば、製造スタッフが兼務することもあります。
企業によりますが、製造の作業をいくつかの工程に細分化し、割り振られた工程を担当するのが一般的です。毎日同じ作業だけを担当する場合もあれば、日や時間帯によって異なる工程を担当する場合もあります。
製品の生産・製造の中核となる重要な作業です。
組立
「組立」は、文字通り部品やユニットを組み立てて製品にする作業です。製造している製品により、具体的な作業は異なります。ネジを締める作業もあれば、ハンダ付けする作業もあります。精密機械であれば細かい作業になり、手先の器用さが求められます。大きな部品を組み合わせる場合などは力仕事となり体力が必要です。
大量生産の場合は作業が細分化され作業員ごとに作業が分担され、同じ作業を繰り返す傾向があります。専門性の高い製品などは1人が完成まで組み立てる場合もあります。組立の後に、製品が確実に作動するか検査を行うこともあります。
製造の業務と同じく、ものづくりそのものと言える作業で製造業において重要な業務です。
事務
工場でも事務の仕事があります。一般事務、営業事務、経理事務、人事・総務などに分かれます。いずれも管理部門の実務担当として重要な業務を行います。仕事の内容は、基本的には現場に隣接していないオフィスでの事務と同じです。具体的には、データ入力・電話対応・文書作成・伝票処理・勤怠管理などがあります。
さらに工場の事務では、上記に加えて工場ならではの業務が加わることもあります。たとえば納品業者の受付です。トラックの運転手さんなど、オフィスの事務では機会がないような職業の方にも対応します。そのほか企業によっては、繁忙期などは現場の手伝いを頼まれることもあります。
仕事をする場所もさまざまです。工場内の事務専用のスペースで働くこともあれば、製造現場の中にある事務スペースで働くこともあります。いろいろな面で、製造現場がないオフィスでの事務よりもざっくばらんとした雰囲気になる傾向があります。
生産工場の業務が向いている人
生産工場の業務には、次のような特徴がある人がとくに向いています。
- ものづくりが好き
- 協調性がある
- 体力がある
ただし業務内容によって求められる資質は多少違います。たとえば上記の「体力がある」は製造や組立に向いている資質ですが、事務には必ずしも必要ではありません。以下でそれぞれの特徴についてくわしく見ていきましょう。
ものづくりが好き
生産に直接かかわる業務では、ものづくりが好きなことは業務に役立ちます。好きな作業・得意な作業であれば仕事の質も高くなりますし、製品を完成させる作業ができるので気持ちの上でも楽しく働くことができます。
一口に製品の生産といっても、鍛造などダイナミックな作業から精密機械の組立のような細かい作業まで、製品によって作業内容は大きく異なります。ものづくりが好きな場合も、自分の得意・好きなジャンルはさらに細かく分かれるかもしれません。また生産工場の中でも、事務はものづくりには間接的なかかわりしかありません。生産工場で働くことを希望するなら、自分に適した仕事を選ぶことがポイントになります。
協調性がある
協調性は、生産工場において求められる要素の1つです。ふつう生産工場では作業を分担しており、お互いに協調し合うことがスムーズな生産につながるからです。
とくに製造や組立の現場では作業が分担されていることが多く、ラインによる流れ作業が一般的です。流れ作業では、周囲の進行状況などを見ながらペースを合わせたり、遅れがちな人のフォローに入ったりすることが生産効率を高めます。
ライン作業でなくとも、生産工場では生産をいくつかの工程に分けて自分に分担された作業を行うのがふつうです。そのため、前の工程や後の工程の進行状況を見ながら作業できると、滞りない生産が可能となります。
体力がある
特徴が設備生産工場の業務にどのように役立つか説明する
体力があることは生産工場の業務にプラスになります。生産している製品や担当部署にもよりますが、生産工場の業務には肉体労働もあるからです。
例えば、重たいものを扱う場合があります。自動車のドアやガラスのサッシなど、製造している製品そのものが重たい場合や、数十キロの原料の袋を1日に何十袋も機械に投入する場合があります。
そもそもライン作業は立ち仕事が多く、終日立ちっぱなしで作業しなくてはならないのがふつうです。あちこち移動できない分、かえって体力的につらいこともあります。
さらに過酷な環境の中で作業しなくてはならない場合もあります。金属の鍛造やゴム製品の成形などは高温で行うため、作業場所も高温なのが一般的です。スポットクーラーを使用するなど労働環境の改善が図られるようになってきてはいますが、改善しきれないケースもあります。そのような職場では、きつい環境で作業し続けられる体力が必要です。
生産工場の業務のやりがい
生産工場では、協力し合いながら製品を完成させていく場面に関わることができます。自分が行う作業によって製品ができあがり、それがいろいろな人に使われるということはとてもやりがいのあることです。
また生産工場にはいろいろな部署があり、多くのスキルを身につけられる場合もあります。場合によっては会社の経費で資格を取得できることもあります。例えば、重たいものを扱う部署でフォークリフトやクレーン・玉掛けの免許を取らせてくれるといったケースです。
さらにケースバイケースにはなりますが、労働条件がよい職場も多くあります。例えば、工場の業務は給与がよい傾向があります。肉体労働など作業内容がきつい場合もありますが、それに見合った収入を得ることができます。また適正な生産計画がなされている場合、残業や休日出勤が少なくなります。プライベートと仕事を両立させられることは働きがいにつながります。
生産工場の業務のきつい点
生産工場での業務はやりがいがありますが、きつい点もあります。主に、次のような点が挙げられます。
- 同じ業務の繰り返し
- 肉体労働が多い
- 生産スピードについていけない
具体的に見ていきましょう。
同じ業務の繰り返し
生産工場では、仕事の内容が同じ作業の繰り返しになる傾向があります。とくにライン作業の場合、同じ単純作業の繰り返しになり、退屈と感じる場合も少なくないでしょう。単調な作業を繰り返していると、単純ミスをしてしまうといったことも起こりえます。メンタルに悪い影響がある可能性もゼロではありません。
工場では私語が禁止されていることが多くあります。そのため気を紛らわすこともできず、黙々と作業せざるをえなくなりがちです。1日の中でいろいろな作業をしたい人や、人と接することが好きな人には生産工場は向いていないかもしれません。逆にこつこつルーティーンワークをこなすのが好きな人や得意な人は、ライン作業に向いています。
肉体労働が多い
担当部署や製品によっては、重たいものを持ち上げたり1日ずっと立ち仕事だったりと、作業が肉体労働のことがあります。そういった作業なら、筋力や持久力がある人の方が向いています。
また扱う製品が重くなくても疲弊してしまうこともあります。1つひとつは持てる重さなのに、1日に何百個と扱っていると腕や手がきつくなってしまう場合などです。
軽作業でも、繰り返しているうちに身体の特定の場所を酷使してしまうことがあります。たとえばネジしめにはそれほど体力を使いませんが、毎日何百回とやっているうちに腱鞘炎になることがあります。機械の操作でも、指を酷使してしまい動かすのがつらくなることもあります。長時間同じ姿勢でいるせいで、意外なところに負担がかかることもあります。
肉体労働は休息が大切です。身体が慣れるまではとくにそうだと言えます。食事をしっかり取り、ゆっくり入浴して、よく眠るようにしましょう。
生産スピードについていけない
とくにライン作業の現場では、作業のスピードについていけないことがあります。職場や作業内容にもよりますが、工場は稼働率・生産性を高めるために作業が合理化されており、作業のスピードも速いのが一般的です。慣れるまでに時間がかかる人や、しばらくやってみても追いつけないままという人も一定数います。
ついていけるかどうかは年齢には関係なく、完全に個性によります。高齢でも、ベテランのスタッフが膨大な仕事量をこなすということは珍しくありません。じっくり作業する方が向いている人もいれば、てきぱきと数をこなす方が向いている人もいるということです。
完璧主義だと出来が気になりすぎてスピードが遅くなりがちです。ある程度割り切って作業できる人や要領のいい人が向いていると言えます。
生産工場の業務に必要なスキル・資格
業務ごとに見た必要とされるスキル・あると有利なスキルは次の通りです。
- 生産管理・生産技術…多岐にわたる業務全体を見る力・他部署とのやり取りに必要なコミュニケーション力
- 製造・組立…協調性・作業の要領のよさ
- 事務…最低限のパソコン操作のスキル・コミュニケーション力
工場の仕事は、一部を除きほとんどが資格なしでも就くことができます。とはいえ資格を取得していると活かせるケースもあります。業務別に、取得していると活かせる資格を挙げます。
- 生産管理… 「ビジネス・キャリア検定試験」の生産管理分野
- 生産技術… 「生産技術者マネジメント検定」
- 組立…「電気機器組立て技能士」
上記のほか、製造についてはフォークリフトの資格が役立ちます。とくにリーチフォークに乗れる人は有利です。事務は具体的な仕事内容によって変わりますが、一般的には簿記や秘書検定などの資格が役立ちます。
生産工場の業務の年収
生産工場スタッフに限定した年収の統計はあまりありませんが、厚生労働省のデータをもとに製造業のおおよその平均額を計算すると男性で約500万円、女性で約400万円となります。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」によると、製造業の男性の月額給与の平均は32万1800円、女性は22万2700万円です。また、同じく厚生労働省の令和2年度「労働統計要覧」の「産業別夏季及び年末賞与」によると、5人以上の事業所の夏季賞与の平均は49万2000円・年末48万5600円、30人以上は同じく順に54万4800円・53万7900円です。これらの数字から計算すると冒頭の金額になります。
男女で差がありますが、製造業では重いものを扱う業務の方が給与が高く、男性がそういった業務に就くことが多いためと考えられます。
ただし年収はさまざまな要素で大きく変動します。変動の原因となる要素の例を挙げます。
- 職種(作業内容)
- 雇用形態
- 経験や資格など
- 企業規模
- 地域
- 年齢
- 性別(多くの場合男女で作業内容が違うため)
生産工場での業務なら平均額通りにもらえる、というわけではありません。実際の求人で確認しましょう。
まとめ
生産工場の求人は比較的多く、未経験OKの求人も珍しくありません。また労働人口が減ってきている現在、人手を確保するために労働環境・労働条件の改善を進めている企業が数多くあります。希望の条件に合う生産工場の業務があれば、応募してみてはいかがでしょうか。