保守と保全の違いとは?設備保全の種類や向いている人を紹介
求人情報を見ていると「保全業務」や「保守・保全スタッフ」という文言が出てくることがあります。「保守」と「保全」の仕事内容は、どのように違うのでしょうか?また、保全業務とは一体どのようなことを示すのでしょうか?
この記事では、保守と保全の違いを解説して上で、保全業務の種類をさらに詳しく紹介していきます。保全業務に向いている人の特徴も併せて紹介します。保全業務について詳しく知りたい人や、自分に向いているか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
「保守」「保全」「メンテナンス」の意味
求人情報の中では「保守」「保全」「メンテナンス」という言葉がよく使われます。しかし、それぞれの言葉の意味を正確に理解している人は多くはないでしょう。まず、3つの言葉の定義を以下に紹介します。
保守 広辞苑より)①たもちまもること。正常な状態を維持すること。 ②旧来の風習・伝統を重んじ、それを保存しようとすること。 保全 広辞苑より)保護して安全にすること。 メンテナンス 広辞苑より)機械・建物などの維持。管理。保守。 |
上記を見ると、「メンテナンス」という言葉の中には「保守」という意味が含まれていることが分かります。業務時にもメンテナンスという言葉が保守と同義で使われるケースが多くあります。
保守と保全の違い
保守も保全も、結果的には安全のために大切な行為です。しかし、何を目的とした行為なのかという部分で違いがあります。
保守の目的は「正常な状態を維持すること」です。現場において保守業務というと、一般的には「故障したものを正常な状態に戻すこと」を意味します。何かトラブルが起きた時に事後的に対応することを示していると考えていいでしょう。
一方、保全の目的は「安全にすること」です。現場において保全業務というと、一般的には「故障しないように保護や点検をすること」を意味します。未然にトラブルを防ぐために普段からする行為が保全だといえます。
ただし、保守・保全の意味は明確に区別されているわけではありません。使い方や企業よって何を示すか異なります。そのため、求人案内に使われている言葉の意味が曖昧な場合は、どのような業務内容か企業側に確認しておくと安心です。
主な設備保全の種類
設備を安全に稼働させる保全行為を「設備保全」といいます。
設備保全は、大きく以下の3種類に分類できます。
- 予防保全
- 事後保全
- 予知保全
それぞれ何を行うことなのか、詳しい内容や違いを解説します。
予防保全
予防保全とは、決定的なトラブルが起きる前に故障や不具合を予防することです。
突然の機器や設備の故障は、思わぬ事故につながる恐れもあります。また、修理中は予定外に作業が停止してしまうため、スケジュールが遅れる原因ともなります。予防保全を行うことで、このような突然のトラブルが発生する可能性を低くすることができます。
予防保全の方法は、以下の2種類に分けられます。
- 時間計画保全
- 状態監視保全
この二つは、それぞれどのような方法で何を行うのでしょうか。
時間計画保全
時間計画保全とは、定めた周期に従って定期的に点検や部品のメンテナンス・交換などをする予防保全行為のことです。時間を基準としてメンテナンスすることから、「TMB(Time Based Maintenance)」とも表記します。
例えば、毎日決まって行う点検や、3カ月、半年ごとの部品の交換などが時間計画保全に当てはまります。この方法では機器を止めるタイミングが事前に決まっているため、スケジュールの見通しがつきやすいメリットがあります。工場が止まる深夜帯にメンテナンスする予定にしておけば、生産に影響は出ません。
時間計画保全では、まだ十分に使える部品を交換して無駄なコストが発生するデメリットもあります。コストの無駄を最小限に抑えるためには、適切なメンテナンス周期を設定することが重要です。
状態監視保全
状態監視保全とは、設備を監視し、劣化傾向を確認したら故障前の最適なタイミングで部品のメンテナンス・交換などをする予防保全行為のことです。設備のコンディションに合わせてメンテナンスを行うことから、「CBM(Condition Based Maintenance)」とも表記します。
この方法では無駄な部品交換の必要がなく、効率的に保全ができます。
一方で、「どうなったら劣化傾向なのか」を管理する難しさもあります。部品によって劣化のパターンが異なるので、適切な設備点検のチェックリストを作成することが重要です。
事後保全
事後保全とは、故障や不具合が起きた後に事後的に保全を行うことです。保守業務とほぼ同じ意味だと考えていいでしょう。突発的に発生する保全なので、生産設備が予期せず停止するデメリットがあります。
事後保全を行うのは以下の2種類の故障が発生したタイミングです。
- 機能停止型故障
- 機能低下型故障
機能停止型故障
機能停止型故障とは、完全に生産設備が停止してしまう、突発的に発生する故障です。「突発故障」とも呼び、事前の点検や監視などでは予知することが難しい傾向があります。例えば、機械の軸が折れるなど、機械が動かなくなるような破損は機能停止型故障です。
機能停止型故障が発生した場合は、思わぬ事故につながる危険性があります。緊急で保全を行い復旧しなければなりません。
機能低下型故障
機能低下型故障とは、時間の経過によって生産設備の性能が低下する故障です。「劣化故障」とも呼び、事前の点検や監視によって予知しやすい傾向があります。
完全に故障はしていなくても生産設備が劣化すると、生産スピードの低下や不良品の発生につながります。そのため、機能低下型故障もできる限り早めに保全を行うべきです。
予知保全
予知保全とは、生産設備を連続的に監視し続けて、劣化や故障の兆候があれば保全を行うことです。この保全方法では、使える部品を交換する無駄を省きながら、突発的な故障を防ぐことができます。
予知保全には、常に設備や機器のデータを取得し監視するシステムを導入する必要があります。いかに精度の高いシステムを構築できるかが課題です。
システムの導入には費用がかかります。しかし、高い制度で故障の予兆を見極められるシステムを採用できれば、設備保全にかかるコストの削減ができ突発的な故障も防げるため、大きなメリットがあります。
設備保全の目的
そもそも設備保全とは、なぜ行われているのでしょうか。
設備保全の目的は、主に以下の四つです。
- 安全性の確保
- 設備の故障防止
- 不良率の低減
- 設備の寿命の長期化
これらはどれも、生産設備を安定的に稼働するために重要なことです。設備が稼働することで、企業に利益が生まれます。
設備保全がなされていないと、故障による生産設備の停止や不良品の発生など、損害につながるトラブルが引き起こされます。そのため、適切な設備保全を行うことでコスト削減にもなるのです。
設備保全に向いている人
技術の進歩によって工場への導入される設備が増えることに従い、設備保安業務を行う人も必要になります。
設備保全スタッフの需要も今後さらに高まることが期待できますが、一体どのような人が向いているのでしょうか?
ここから、設備保全に向いている人の特徴を紹介します。
機械が好きな人
機械が好きだという人は、設備保全の仕事に熱心に取り組めるでしょう。
設備保全は機械に携わる仕事です。機械の部品や機能をチェックし、変化に気付くことが求められます。機械に興味を持っていれば、機械を監視し続けることや性能の微妙な変化を見抜ける可能性が高いでしょう。一日中機械に接するため、機械が好きなら楽しんで仕事ができるはずです。
逆に、全く関心がない人は、機械の細かな部分まで意識を張り巡らせることが難しいでしょう。
注意深く慎重な人
注意深く慎重なことも、設備保全に向く人の特徴です。
設備保全業務では、ちょっとした部品の劣化や性能の低下にも気付くことが求められます。また、些細な変化に気付いたときに「まぁいいか」と流さず慎重になって観察できることも大事です。点検項目一つひとつ注意深く慎重にチェックすることで、故障が起きる前に設備の不具合を発見できます。
逆に、大雑把で細かな部分に気を遣わないという人は、設備保全の仕事には向かないでしょう。
臨機応変に対応できる人
トラブルが起きた時に対応することも設備保全の業務の一つですから、臨機応変に対応できる力がある人も向いています。
日頃から点検をしていても、突発的な設備の故障が起きることはあります。どんな故障かもその時々で変わります。トラブル発生時には、すばやく状況を判断して対応しなければなりません。
また、故障や不備はいつ起きるか予想できません。業務時間外でもトラブルが起きたら出勤しなければいけない場合もあるため、必要に応じて稼働することに抵抗がないことも大事です。
まとめ
保守と保全は異なる意味の言葉ですが、どちらも設備の安全を維持するために大切なものです。使い所によっては、完全には区別されていません。
設備を安全に稼働させるための行為を「設備保全」といいますが、設備保全には事前に故障や不備を防ぐ「予防保全」と事後に修理を行う「事後保全」、さらに継続的に設備の状態を監視する「予知保全」があります。事後保全は保守に近い内容です。
設備保全は機械を扱う仕事なので、機械好きで、かつ注意深くて臨機応変な対応ができる人が向いています。当てはまる部分があるなら、設備保全の仕事を検討してみてもよいでしょう。