一級自動車整備士の年収はいくら?二級整備士との違いや給料面でのメリットを解説
一級自動車整備士の資格を有している整備士は電気自動車などの特殊な車も整備できるため、今後需要が高まると考えられている人材です。この記事では、一級自動車整備士になる方法や、二級自動車整備士との違い、給与などを詳しく紹介します。
一級自動車整備士の平均年収
一級自動車整備士と二級自動車整備士の平均年収は、以下の通りになります。
一級自動車整備士 | 二級自動車整備士 | |
平均月収 | 29万円 | 24万円 |
賞与 | 72万円 | 92万円 |
平均年収 | 420万円 | 380万円 |
一級自動車整備士は、二級自動車整備士と比べて年収が高い傾向にあります。理由としては、自動車整備全般の業務に加え、分解作業や他の従業員への作業指示など、多岐にわたって仕事が可能であるためです。また、豊富な知識を有していることから、あらゆる自動車トラブルに柔軟に対応できます。
一方、二級自動車整備士は、あくまで自動車整備士になるための基本的な資格であり、分解作業や自動車検査員の業務はできません。
一級自動車整備士の仕事内容
一級自動車整備士は、分解や整備、修理を含めた幅広い仕事が可能です。自動車整備全般の業務に関わることが可能で、検査員が居なくても単独で整備や分解作業ができます。また、整備工場やディーラー、自動車メーカー、重機メーカー、バス会社、タクシー会社など、幅広い業種を目指すことが可能な資格です。
一級自動車整備士は整備の仕事だけでなく、職場の管理や職員への指示、後輩の指導や育成ができます。資格を有していれば管理職が狙えるでしょう。会社の安全管理や環境保全といった問題を、整備の視点からアドバイスを求められる場面もあります。勤務先により業務内容は異なりますが、整備だけに捉われない幅広い仕事が要求されるでしょう。
一級自動車整備士と二級自動車整備士の違い
一級自動車整備士は、オールマイティな現場で活躍できる資格で、車の種類を問わず整備ができます。また、電気自動車やハイブリッド車の流通が多くなっていますが、一級自動車整備士であればこれらの特殊な車も整備可能です。
一方、二級自動車整備士は整備できる車の範囲が限られています。二級ガソリン自動車整備士はガソリンエンジンで稼働する車の整備、二級ディーゼル自動車整備士はディーゼルエンジンで稼働する車の整備などのように取得した資格により整備できる車が限定されているのです。
このように、一級自動車整備士は、二級整備士と比べて整備できる車が多く仕事範囲が広いのが特徴といえます。また、後輩の育成といった整備以外の仕事も一級自動車整備士の業務です。業務範囲が広く求められるスキルも高いのも一級と二級の大きな違いといえます。
一級自動車整備士の主な就職先
一級自動車整備士になれば、以下のような就職先に就くことが可能です。
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一級自動車整備士は総重量8t以下の普通自動車であれば、どの車両でも整備を行うことが可能です。また、ハイブリッド車や電気自動車、水素自動車といった特殊な車の整備もできます。そのため、一級自動車整備士の資格を持っていれば、車を扱う会社だけでなく関連会社でも就職しやすくなるでしょう。また、一級自動車整備士は幅広い知識とレベルの高い技術力がなければ合格できない資格であるため、大手メーカー系にも就職しやすくなります。
一級自動車整備士資格の取得人数
一級自動車整備士と二級自動車整備士は、資格の取得人数が異なります。
取得人数 | 受験者数 | |
一級自動車整備士 | 55人 | 277人 |
二級自動車整備士 | 9,270人 | 10,624人 |
一級自動車整備士は2002年に試験が始まりました。このため、有資格者はあまり多くありません。また、整備工場で働く人は二級自動車整備士が大半を占めており、一級自動車整備士の必要性はまだ高くないといわれています。さらに、一級自動車整備士は試験範囲が広く合格するのが難しいため、取得人数は少ないのが現状です。このような背景から今のところ一級自動車整備士の資格を保有する人は少ないのです。
二級自動車整備士は一級自動車整備士より試験内容は容易で、合格率は約85%とされています。一級自動車整備士は31.6%で、試験の難易度の高さがうかがえるでしょう。
一級自動車整備士になるには?
一級自動車整備士は、自動車整備士の資格の中で最も上位のものです。合格率は31.6%と低く、難易度が高い資格となっています。
一級自動車整備士になるには、二級自動車整備士の資格を取得後、整備士として3年間の実務経験が必要です。ただし、自動車整備士の学校で一級整備士養成課程を卒業すれば、受験資格が発生し実技試験は免除されます。試験は年に1度、学科試験は3月、口述試験は5月、実技試験は8月に行われます。通常、試験は学科試験が行われ、合格したら口述試験が行われます。
二級自動車整備士の場合、自動車整備士の学校で二級整備士養成課程を卒業したら受験が可能となります。また、大学や専門学校で三級自動車整備士の資格を取得したのち、1年から2年以上の実務経験があれば資格取得の受験ができます。二級自動車整備士は整備する車によって資格の種類が異なり、求められる実務経験の長さも違います。受験には複数のパターンがあるのです。
働きながら資格を取得することはできる?
自動車整備士は働きながら資格を取得することが可能です。自動車整備士の専門学校を卒業すれば卒業と同時に受験が可能ですが、条件をクリアすれば働きながらでも一級自動車整備士になれます。
まず、自動車整備士としての実務経験を1年以上積みましょう。1年以上の実務経験があれば三級自動車整備士になれます。資格取得後3年以上の実務経験を積み二級自動車整備士になり、さらに3年以上の実務経験を積めば、一級自動車整備士の受験資格が得られます。
働きながら資格取得をするためには長い年月が必要です。また、実務経験を積んで受験資格を得ても、合格は狭き門とされています。一級自動車整備士になるためには知識のレベルの高さが求められるため、実務経験を積みながら同時進行で試験対策の勉強もしましょう。
一級自動車整備士資格を得るメリット
一級自動車整備士資格取得が難しい資格ですが、取得すれば主に以下の三つのメリットが得られます。自動車業界で働きたい方、自動車整備士として長く働きたい方は、以下のメリットを踏まえた上で一級自動車整備士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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この三つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
給与水準が上がる
一級自動車整備士を取得すれば、二級自動車整備士より給与水準が上がります。二級自動車整備士の年収は380万円、一級自動車整備士の年収は420万円といわれています。就職先の企業によって細かい給与は異なりますが、一級自動車整備士になれば大手企業に就職しやすくなるほか、給与水準は今までよりアップするでしょう。
整備の仕事自体は、一級自動車整備士の資格がなくても可能です。実際に整備工場では二級自動車整備士と検査員が中心となり、工場を回しています。ただし、一級自動車整備士になれば給料水準のアップや、高度な技術や知識が身に付くため、必要な人材として会社に長く勤められ続けるでしょう。勤務期間の長さに応じて給与がアップする会社であれば、一級自動車整備士の資格を取得しておけば多くのメリットが得られます。
就職の選択肢が広がる
二級自動車整備士は限定された車しか整備できませんが、一級自動車整備士は整備できる自動車の種類が二級よりはるかに多くなります。また、一級自動車整備士は幅広い知識とレベルの高い技術力が求められます。対応可能な車の種類が多く、知識と技術面で高いレベルが期待できるため、就職先の選択肢が広がるのが大きなメリットです。
大手企業はもちろん、メカニックとしてレーシングチームに所属できる可能性もあります。一級自動車整備士は、難易度が高い資格ですが、その分就職先の選択肢も多く用意されているのです。
今後需要が増す
一級自動車整備士は既存のエンジン車やディーゼル車だけでなく、近年話題の電気自動車やハイブリッド車、水素自動車など、次世代車も整備ができる資格です。今後、このような自動車は増えていくと考えられています。どのような車でも整備できる一級自動車整備士は、需要が伸びていく資格であるといえるでしょう。企業側は、変化する車産業の流れに対応できる一級自動車整備士の有資格者を積極的に採用すると想定できます。
一級自動車整備士資格のデメリット
一級自動車整備士はメリットが多い資格に見えますが、一方で取得にはデメリットもあります。以下のデメリットをよく理解した上で資格取得を検討してください。
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この二つのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
学費がかかる
専門学校で一級自動車整備士の資格を取得する場合、学費が必要になります。学校により学費は異なりますが、一級自動車整備士コースは卒業時までに約460万円かかり、二級自動車整備士コースの約240万円と比べて、約2倍近くの学費がかかるのです。
一級自動車整備士は二級自動車整備士より2年長く学校に通う必要があるため、どうしても学費が高額になってしまいます。また、働き始められるのが二級自動車整備士より2年遅れることから、社会人経験を積みたい方はよく考えてからコースを選びましょう。
さらに、スタート時の給与水準は一級と二級でさほど差はありません。働きながら奨学金の返済を計画しているのであれば、将来設計をよく考えておく必要があります。
取得難易度ほどメリットが大きくない
一級自動車整備士は難易度が高い受験内容ですが、取得難易度ほど得られるメリットは大きくないです。一級自動車整備士は車の種類を問わず整備が可能ですが、整備工場では二級自動車整備士と検査員が在中しているため、問題なく整備が行えます。特殊な車を扱う現場でない限り、一級自動車整備士の需要は高くないのが現状です。
ただし、今後は電気自動車などの特殊な車が普及すると考えられており、国は資格取得のメリットとしてインセンティブ等を計画しています。現状では需要が高くない資格ですが、今後の流れを考えると取得するメリットは大きくなる可能性が高いです。
まとめ
一級自動車整備士になればさまざまな車の整備ができます。仕事の範囲も広がり、社会で活躍できる人材になれるでしょう。現状ではそこまで需要が高くない資格ですが、電気自動車の普及など今後の車業界を考えるとメリットが高まる資格といえます。
一級自動車整備士は受験難易度が高いですが、車の需要がなくなることは考えにくいため、長く生かせる資格です。また、資格を取得すれば給与水準も上がるほか就職の幅も増えます。資格取得は大変ですが、今後の需要を考えて今から勉強を始めてみてはいかがでしょうか。