フォークリフトを運転する際の基本と運転ルール|フォークリフトの危険性を知って安全な作業を意識しよう!
フォークリフトを扱う現場で働いている人にとって、フォークリフトの事故は身近なものです。ひとたび事故が起これば企業の信頼問題につながりますし、場合によっては事故に巻き込まれた人が重傷を負う可能性もあります。このような事態を防ぐために、事故にはどのようなものがあるか、どんな場面で事故が起こりやすいか、事故の予防対策の方法を学んでおきましょう。
フォークリフトによる事故はどんなものがあるのか
フォークリフトによる事故は、人との接触事故や荷物や壁の間に挟まれる事故、運搬中の荷崩れ事故や車体の転倒事故、パレットの転倒事故など、多岐にわたります。このうち、挟まれ事故と巻き込まれ事故、激突事故が全体の半数以上を占めています。いつもと同じように仕事をしている最中に突然事故が起こるケースもあれば、雨天など悪天候の中で起こる事故もあります。一般的な自動車と同様、フォークリフトの運転中は死角が多数生じるので、事故を防ぐためには日ごろの予防対策が重要となります。
厚生労働省もフォークリフトの労災防止を訴えている
厚生労働省ではフォークリフトの労災防止を防ぐ活動を行っています。例えば常総署管内における労働災害件数として、厚生労働省は令和3年には389件の災害が発生したと発表しています。そのうち、フォークリフトの災害件数は11件に及び、少なくない数字となっているのです。これを受け、厚生労働省はPDFで事故の具体例や対策方法をまとめたり、漫画で分かりやすく安全衛生を訴えたりするなど、フォークリフトの事故防止に努めています。
フォークリフトの事故が発生しやすい場所
フォークリフトの事故が発生しやすい場所として、以下の場所が挙げられます。
【フォークリフトの事故が発生しやすい場所】
- 坂道や未舗装道路
- 入り組んだ通路
- フォークリフトの後ろや右側
- フォークリフトのそば
坂道や未舗装路道は事故が起こりやすくなります。不安定な場所で急ブレーキなどの無理な運転をすると、フォークリフトが転倒したり荷物が落ちたりなど、さまざまな危険が発生するのです。入り組んだ通路は見通しが悪く、他の作業員の存在に気付かない可能性が高いです。また、フォークリフトの後ろや右側に人がいると、接触したりひいてしまったりなどの事故が起こりやすくなります。フォークリフトに慣れた人も要注意で、不用意にそばに近寄ると重大な事故につながります。これらの場所を念頭に置き、作業を行うことが大切です。
事故防止のために覚えておくべきフォークリフト操作の基本
フォークリフトの事故防止のために、基本的な操作方法を覚えておきましょう。
まず、作業前に点検を行います。フォークリフトの周りを1周して、水漏れやオイル漏れ、タイヤや作業装置の異常がないかを確認してください。プラスして、周りに障害物や人がいないか確認しましょう。点検後、フォークリフトの左側から乗車します。ハンドルやレバーを握りながらの乗車、飛び乗りは事故の原因になります。乗車したら左手でアシストグリップを握り、右手でドライバーシートの背当てを持ちましょう。その体勢で左足を乗降ステップにおいて、運転席に座ってください。
安全に乗車したら、次は発信前準備です。ドライバーシートに深く腰掛け、ペダルに届く位置に位置を調節しましょう。ハンドルやミラーの位置も確認してください。シートベルトを締めたら、左手でハンドルを握り、右手は右足の太ももの上に置きます。フォークリフトは左手でハンドル操作を行うのが通常です。
フォークリフト操作時に意識すべきポイント
フォークリフトの操作時は、いくつか意識すべきポイントがあります。これを常に念頭に置いておくことで、効果的な事故防止が期待できるでしょう。
まず、走行時のフォークの位置や角度を意識しましょう。物や人が当たらないように気を付けて、安全にフォークリフトを動かしてください。また、走行時の速度は10km/h以内にして、焦らずゆっくりと運転しましょう。荷物が大量で前方の視界を妨げる場合、できるだけバック走行で荷物を運んでください。死角が増えるので、思わぬ接触事故につながる可能性があります。荷物以外にも、運転の際には必ず死角が生まれるので、常に安全確認を怠らないように気を付けましょう。
フォークリフトの事故を防ぐための運転ルール
フォークリフトの事故を防ぐために、いくつかの運転ルールを守るようにしましょう。フォークリフトの運転ルールは法律や条例で定められているものはありませんが、安全に稼働させるためにはルールを知っておき、ルールを破らないように気を付ける必要があります。
【フォークリフトの運転ルール】
- フォークリフトを運転していいのは有資格者のみ
- フォークリフトの制限速度は必ず守る
- 運転は作業計画に基づいて行う
- 走行中は携帯電話を使わない
- 運転席から離れる場合はエンジンを停止させる
このうち、特に気を付けなければならない3点のルールを詳しく解説します。
フォークリフトを運転していいのは有資格者のみ
1t以上のフォークリフトは、有資格者のみが運転可能です。フォークリフト運転技能講習というものがあり、これを修了した人だけが1t以上のフォークリフトを運転できます。全国の指定場所で講習が行われているので、通いやすい場所を選んで講習を受けてください。ちなみに、無資格の状態でフォークリフトを運転すると、労働安全衛生法第61条違反に該当し、懲役や罰金などが科せられます。
1t未満のフォークリフトの場合も、フォークリフト運転特別教育を修了しなければなりません。資格証を取得したら、通常の運転免許と同様に、運転の際は常に携帯する必要があります。法律で決められている明確なルールですが、企業内のルールとして改めて強く認知を進めて、フォークリフトの事故防止につなげましょう。
フォークリフトの制限速度は必ず守る
フォークリフトは10km/hで走行するのが一般的で、最高速度がこれ以上になるフォークリフトを稼働させる場合、適正な制限速度を定めることが法律で義務付けられています。制限速度は地形や地盤状態など、周辺環境により異なりますが、一般的な速度とされている10km/hで走行することを前提に動かしましょう。制限速度を守り、安全運転を心がけてフォークリフトを動かしてください。制限速度は法律で定められていることですが、企業内で改めて周知させ明確なルールとして設けることで、事故防止につながります。
運転は作業計画に基づいて行う
フォークリフトの運転は作業計画に基づいて行うことが義務付けられています。労働安全衛生規則第151条3項では、フォークリフトの種類と能力、作業場所の広さと地形、荷物の種類と形状の3点に対応した作業計画を事前に定めておくよう、明確に記載されています。作業計画に基づいた運転を行うことで、事故発生のリスクを抑制しているのです。作業計画を無視した運転は思わぬ事故を招く原因となります。フォークリフトの運転は必ず作業計画に従い行いましょう。
企業は積極的にフォークリフトの事故防止に努めましょう
フォークリフトの事故防止は、運転する個人の意識や技量に大きく影響されますが、まずは企業が積極的に事故防止に取り組む必要があります。運転者はフォークリフトの運転だけでなく、日常の業務など他の仕事も抱えています。このため安全管理を常に完璧にするのは難しいことで、安全運転の心がけにも限界があります。現場によっては人手不足や業績優先で、安全運転は二の次になっているケースも珍しくありません。安全な作業現場を保つためには、個人の努力だけでなく、企業側の具体的な施策も大切です。例えばフォークリフトのトレーニングや講習の実施は効果的で、定期的に行うことで作業員の運転技術を高め、事故防止につながります。現場任せにするのではなく、企業が率先して安全な環境作りを行いましょう。
まとめ
フォークリフトの事故は思わぬ場面で起こります。作業員は基本的な運転ルールや注意点を念頭に置きながら業務を行い、企業は安全運転の周知とルールの制定、トレーニングや講習の積極的な実施を行う必要があります。フォークリフトの事故は重大なケースにつながりやすく、事故に巻き込まれて重傷を負う方は珍しくありません。このような痛ましい事故を防ぐために、さまざまな努力と工夫が求められます。作業員と企業の安全対策によって、フォークリフトの事故発生は抑制できます。安全な現場が当たり前となるように、努力と工夫を積み重ねていきましょう。