工場長とは?仕事内容や必要なスキル、従業員との違いをチェック
製造業に勤務している人は、いずれキャリアアップして工場長になりたいと考えているのではないでしょうか。
しかし、「工場長はどんな仕事をしているのか?」「激務になるだけで年収は増えないのでは?」といった疑問があるため、思い切って工場長を目指さないということもありえます。
この記事では、工場長の仕事内容や求められるスキルを詳しく解説しています。また、従業員とはどんな箇所が違うのかについても説明していますので、これから工場長を目指したいという方には必見です。
工場長とはどんな役職?
「工場長は忙しいイメージがあるし、実際どんな仕事をしているのか知らない」という人は案外多いものです。
この記事では、工場長はどんな役職なのかや、仕事内容について解説します。また、工場長としてのやりがいはあるのかについてもまとめていますので最後までご覧ください。
工場長は工場の責任者!
工場長は工場内における最高責任者という立場にあります。最高責任者とは工場に必ず置かなければいけない役職であり、工場で起こるすべての事象に対して責任を負う役職です。
では、そもそも工場という業界で他にどんな役職があるかご紹介します。
工場での役職の配置は基本的に下から
- 従業員
- 副班長
- 班長
- 工場長
の順に役職が上がります。
工場長はあくまでも工場の最高責任者になりますので、経営方針や業務執行の裁量を任されるのは役員・常務・副社長・社長・会長などになります。
工場長の仕事内容
工場長の仕事内容が気になるという人も多いと思います。従業員という立場にいると、近くで見ていても実際何をしているのか分からないことはよくあります。
実際、仕事内容は大きく分けて三つに分類できます。
①経営管理
経営管理とは、製品生産やクオリティの担保、生産コストの管理などが当てはまります。
経営にはKGI=最終的な目標数値とKPI=最重要プロセスの目標数値を決定しなければいけません。工場でいうならば、生産数量や品質の目標を設定することをKGI、目標を達成のために必要な作業内容・業務時間・人件費・生産コストの算出がKPIとなります。
例えば、工場ではライン作業という作業工程を細分化することがほとんどであり、各工程に従業員や班長を配置しなければいけません。工場長は副班長・班長との話し合いを含めて、工程ごとにどの従業員を配置するかを決めていきます。
作業内容や従業員の配置、作業による生産性の計算などが経営管理です。
②環境整備
環境整備とは、工場に使用する機械や道具の全体的な整備や工場内の環境整備、資材補充の計画・実行することです。
例えば、プレス機器や溶接機器などの生産作業に必要な機械にトラブルがないか点検を定期的に行うよう計画を立てなくてはいけません。不備や機械トラブルが発生した場合は、材料費の捻出を検討しなければいけないなどさまざまな環境整備が求められます。
要は、工場内でライン作業が滞りなく進むように、環境を整えるというのが工場長の仕事の一つです。
③人材育成
工場長は人材育成の仕事もこなさなければいけません。人材育成は工場長の下の役職である副班長・班長の育成から、さらに下の従業員へ伝授するという仕組みづくりが大切です。
また、工程ごとに複数の従業員を配置し、工程ごとの引き継ぎを上手くするために人間関係をスムーズにしておくことが重要です。そのため、工場長は従業員とのコミュニケーション密に行い、時には聞き取り調査や面談も実施しなくてはいけません。
工場長のやりがいは?
工場長の一番のやりがいは、生産目標を達成したときといえます。長期的に工場での生産計画や目標を定めるのは工場長の役目です。
自分が立てた計画や目標を達成できたときの喜びは想像を大きく超えることでしょう。しかし、業績として数字が分かりやすく出る工場では、結果が出なかったときの責任も大きいのが事実です。
企業にとってプラスの業績を出した場合は、工場を管理している役員クラスからも高い評価をもらえます。
人材育成・環境整備・経営管理に携わり、大きな業績に携われる工場長のやりがいは従業員や班長クラスでは味わえない経験です。
工場長に必要なスキル
工場長の仕事内容が分かり、従業員と比べてはるかに求められるスキル・資質が高いことが想像できたと思います。実際、従業員のような製造技術だけでは工場のトップになるには不十分です。
工場長に求められるスキルは以下の3点です。具体的に説明します。
- リーダーシップ
- 判断力
- コミュニケーション能力
リーダーシップ
工場長に必要なスキルの一つにリーダーシップが挙げられます。
リーダーシップとは、組織をまとめ目標に向けて正しい施策を打ち出すことをいいます。リーダーシップといえば、従業員のまとめ役というイメージだけを持つ人がいますが、後者の目標に向けて正しい施策を打ち出すことも必要な資質です。
集団の中で正しい施策を打ち出すことはそう簡単ではありません。理由は、新しいことを導入する・改善することに難を示す従業員は思いのほか多く、「現状維持でいい」という人も多いからです。
しかし、工場長として業績が悪ければ長年変わることのなかった内容であっても、改善しなければいけないのです。その際に、工場のトップとして威厳を示して施策を提案・実行する力が必要です。
判断力
工場長には判断力も必要です。リーダーシップを発揮する中で判断力も同時に関わってくるといっても過言ではないでしょう。
リーダーシップを発揮して施策を打ち出すことは大事ですが、それが正しく判断されていて、生産目標に近づけられるのかがより重要です。
一つの判断の違いで、生産スピードが上がることもあれば逆に遅くなる可能性だってあります。その結果、業績が前よりも落ちることは容易に想像できます。
つまり、工場長の判断一つで工場の将来の左右を決めることになるということです。
コミュニケーション能力
工場長にはコミュニケーション能力も求められます。工場におけるコミュニケーション能力とは、「従業員にとって風通しの良い環境を作れる能力」といえます。裏を返せば、ただ楽しく従業員と会話ができることがコミュニケーション能力とはいえません。
風通しのいい環境がなぜ必要かというと、工場員の不満の一つに、「悩みや相談を打ち明けられる環境ではない」「男性社会・上下関係が厳しく自分の意見を言えない」などがあるからです。
そのため、工場長は従業員の性格や能力を判断し、その人に合った接し方で関係を築き上げることが必要です。また、定期的に聞き取り調査や面談を実施することも立派なコミュニケーション能力といえます。その結果、従業員も意見を言える環境ができ風通しの良い工場ができてきます。
ワイワイガヤガヤするということでなく、従業員の声を引き出し働きやすい環境を作り上げる能力を「工場長としてのコミュニケーション能力」であると覚えておきましょう。
工場長と従業員の違いとは
工場長と従業員では仕事の違いがあることは想像できますが具体的にどのように違うのかが不明確です。
これからキャリアアップして工場長として活躍したい方はもちろん、「気にはなるけど責任だけ増えて大変なのではないか?」と思う人までいます。
次に、気になる仕事内容の違いを説明し、年収が従業員と工場長ではどの程度違うのかまで解説します。
仕事内容の違い
従業員としての仕事内容はライン作業(現場)がほとんどです。
ライン作業は、工場の収益の根幹になる製造部門といわれるものです。メーカーによってライン作業は異なりますが、一般的に製品の加工、組み立て、検査の三つの作業を含めたものです。
自動車メーカーであれば、プレス、溶接、塗装、エンジンまでが製品の加工です。それぞれの部品を組み立て、車の形にするのが組み立てといいます。完成した製品の走行テスト、内装・外装などの1000以上のチェック項目を検査して出荷という一連の流れを従業員が引き受けます。
対して、工場長は現場作業を長年経験しスキルと統率力もある人が就任できる役職です。工場長は工場全体の長であるため、工場の業績目標決定と、実務に必要な設備環境の整え、実務のマニュアル作成などが仕事です。従業員のように製造部門で作業することが少なくなります。
年収の違い
工場長の平均年収は500~800万円という結果が出ています。大きく年収が違うのはメーカーの規模によるものだと考えてよいでしょう。
対して、従業員の平均年収は300~400万円です。月収20~30万円ベースで支払われると考えられます。
どちらにしても、勤務する現場の大きさや、メーカーの違いによって給与の違いが出るようです。
工場長になるメリットとデメリット
工場長に求められるスキルは従業員とは異なるため、難しい役職だと感じた人もいるでしょう。しかし、高い役職に就く分大きなメリットを感じられるのが事実です。また、工場長としてのデメリットも存在します。
これから、工場長にキャリアアップしたいという方に向けて、メリット・デメリットの両面について詳しく解説します。
メリット
工場長になるメリットはこれまでの記事の内容を踏まえると以下の2点に集約できます。
- やりがいを得られる
現場の業績を左右する役職として働けるため、工場長としてのやりがいを得られます。
工場の目標設定から実務計画・環境整備までを担当するため、業績が良ければ工場長の判断のおかげ、対して業績が悪ければ工場長の計画がすぐれていないと判断されます。それだけ責任感が大きい役職ですが、責任の大きさだけやりがいを感じられるといえるでしょう。
- 年収が上がる
工場の責任を引き受ける点で、年収が従業員と比べて100~300万円上がることがメリットといえます。
デメリット
工場長にはメリットもありますが、管理職という立場になるためデメリットも存在します。以下の3点がデメリットです。
- 業績が上がらなければ工場長の責任
業績を左右するのは工場長の裁量によるため、結果が芳しくない場合は工場長の責任となるでしょう。現場よりも上の立場にいる役員からの評価は人柄や業績から判断されます。
- 人間関係で悩む
工場のパフォーマンスが上がるよう日々従業員に指示を出し、時には改善するよう命じなければいけません。その結果、従業員からの不満もたまることはやむを得ません。従業員すべての上司として働く上で、円満な人間関係だけを築くのは難しいといえるでしょう。
- 労働時間が増える
労働時間が増える可能性があることがデメリットです。現場の稼働以外にも、定期的なパフォーマンス評価、数値把握、役員との打ち合わせなどのこなさなければいけない仕事が増えてきます。従業員と比べると労働時間が増えるのは致し方ないでしょう。
工場長が持っておくとよい資格
工場長として働く場合に持っておくとよい資格が存在します。必ず保持しておかなければいけないということではありませんが、工場の運営・管理を担当する上で役に立つ資格をご紹介します。
生産管理オペレーション
生産管理オペレーション資格を保有しておくと工場長として役に立つでしょう。生産管理とは、工場内の原材料管理や製品の在庫数、出荷状況を管理するなどの、製品を作る一連の中で必要な運用管理に通ずる資格です。
工場の大きさに限らず、製品の管理、物流の流れを把握しておくことはリーダーに必要な力といえます。
ただ生産管理の知識を保持しているだけでなく、工場内で実際に活かせるレベルまで到達していないといけないので注意しましょう。
生産管理プランニング
生産管理オペレーションが生産システムの運用面に関する資格だったのに対し、生産管理プランニングはシステム設計やその段階に対しての資格です。
具体的には、資材の購入、製品の開発・設計・製造のシステム管理がメインになります。工場において安全衛生管理していなければ、不慮の事故も起こしかねないため、持っておいて損のない資格です。
QC検定
QC検定とは、別名品質管理検定と呼ばれるもので、製品の品質管理に関する知識についてどの程度保持しているかを測る検定です。
そもそも、品質管理には工程管理、品質検証、品質改善の三つの業務内容が含まれています。
工程管理は、製品を作る工程で必要な原料、設備、人材の確保がなされているか管理します。品質管理は、製品や資材に着目しています。検品時のチェック項目に関しての知識も必要です。品質改善は製造工程内で不備等を見つけ出しソリューションを提供する知識です。
機械保全技能士
機械保全とは、工場内の設備機械に対する危機管理面での知識、正常な運転ができる技能を保持しているか指します。機械保全技能士とは、上記のように機械の保全に関する技能を身に付けた技能士と呼べるでしょう。
工場長として、工場をまとめる立場にあるならば機械保全技能士の資格を保持しているとメリットになります。従業員や中間職員に対しての技能・技術を還元できるため、結果的に生産管理力がアップしやすい傾向にあります。
衛生管理者
衛生管理とは、作業環境・労働者の健康管理に関しての知識を指します。衛生管理者は工場と労働者に対しての衛生面管理をするだけでなく、労働衛生教育を実施しなければいけません。
実際、従業員が50人以上の事業場には、必ず一人は常駐の衛生管理者を置かなければいけない義務があります。
安全管理者
安全管理者は建造物や設備、作業方法において危険があると察知した場合に応急処置ができる、もしくは防止の措置ができる資格です。
安全装置や保護具に関して定期的な点検や整備するには専門的な知識を有するため、製造業をする場合は保持しておきたい資格です。
まとめ
工場で勤務していると、役職のトップである工場長になりたいと思う人は少なくありません。しかし、工場長の仕事内容や必要なスキルが不明確であるため、一歩踏み出せないことがあります。
この記事では、工場長の仕事内容を以下のように紹介しました。
- 経営管理
経営管理とは、製品生産やクオリティの担保、生産コストの管理
- 環境整備
環境整備とは、工場に使用する機械や道具の全体的な整備や工場内の環境整備、資材補充の計画・実行すること
- 人材育成
人材育成とは、工場長の下の役職である副班長・班長の育成をもとに、さらに下の従業員へ伝授するという仕組み
必要なスキルは「リーダーシップ」「判断力」「コミュニケーション能力」となり、詳しく解説しました。
年収でも従業員とは大きく違うため、責任感を増して工場の業績を飛躍させたいという強い意志を持つ方は工場長に向いているといえます。
技術もさることながら、経営力スキルが求められるため、今から経営に関する知識を学ぶことが重要でしょう。