生命科学科は就職するのが難しい?就職先や年収、将来性について解説
生命科学科の卒業生は、就職に不利と言われることがありますが、実はさまざまなキャリアの可能性を秘めています。製薬会社やバイオテク企業など専門性を活かせる職場から、IT企業や教育現場まで活躍の場は広がっています。
ただし、就活に成功するポイントは研究以外のスキル 習得や積極的な情報収集にあります。この記事では、生命科学科出身者の就職事情と、キャリアを切り開くためのポイントを解説します。
生命科学科の学生が就職に不利と言われる理由
なぜ、「生命科学科は就職に不利」と言われるのでしょうか。
その理由を4つの観点から説明します。
専門性と直結する求人数が少ない
生命科学科の学生の多くは、研究職に就きたいと考えています。しかし、実際には研究職の求人はとても少なく、倍率が高いのが現状です。自身が研究していた生命科学の専門性を活かせる研究職となると、さらに求人数が限られてしまいます。
企業での研究は、基本的に商品開発のために行われます。そのため、研究テーマがあらかじめ決められていることがほとんどです。学生時代に研究した内容と、企業が求める研究内容が一致しないケースも多く、自分の専門性を活かしにくいことが多いでしょう。
研究の汎用性が低い
生命科学の研究分野は専門性が高く、さまざまな領域が存在します。例えば、分子生物学、遺伝学、生態学、神経科学など、多岐にわたります。
一つの分野を深く研究した場合、他の分野への応用が難しくなることがあります。企業が求める幅広いスキルを持った人材とマッチしにくい場合があるでしょう。
企業は、生命科学の知識だけでなく、データ分析能力、コミュニケーション能力、問題解決能力など、幅広いスキルを持った人材を求めています。
研究一筋で他のスキルを身につけていない学生は、企業の求める人物像と合致しない可能性があるでしょう。
バイオ系のポスドクが多い
生命科学系の大学院を卒業した後、多くの人が「ポスドク(博士研究員)」として研究を続けます。興味のある分野の研究を行うためには良いことですが、一方で企業への就職が遅れてしまう原因にもなります。
ポスドクの期間は通常2〜3年ですが、複数回ポスドクを経験する人も少なくありません。その結果、企業就職を考え始める頃には、年齢が30歳を超えていることも珍しくないでしょう。
企業は若い人材を好む傾向があるため、ポスドクを経験した後の就職はさらに難しくなる可能性があります。また、長年アカデミックな環境にいると、企業文化に馴染むのに時間がかかることも懸念されます。
世間の需要が少ない
生命科学の研究成果は、すぐに社会に役立つ形で還元されるわけではありません。基礎研究の重要性は理解されていても、即座に利益につながるわけではないため、企業が積極的に採用するケースは限られています。
例えば、新薬の開発には10年以上の歳月と莫大な資金が必要です。そのため、生命科学の研究者を育成することへの社会的な理解が低い場合もあり、企業の採用にも影響を与える可能性があります。
また、バイオテクノロジーや遺伝子工学などの分野では、倫理的な問題や社会的な懸念が存在することもあります。こうした要因が、生命科学分野の人材需要を抑制している面もあるでしょう。
生命科学科の学生の主な就職先
生命科学科を卒業した学生はどのような就職先を選んでいるのか、具体例を紹介します。
製薬会社
製薬会社は、生命科学科の学生にとって最も人気のある就職先の一つです。新薬の開発、品質管理、臨床試験など、生命科学の知識を活かして、人々の健康に貢献する仕事ができます。
具体的な職種としては、研究員(創薬研究者)、品質管理者、臨床開発者などがあります。
研究員は新しい薬の候補物質を見つけ出し、薬として実用化するためのプロセスを担当し、品質管理者は製造された薬の安全性や有効性をチェックします。
臨床開発者は、新薬の人体での効果や安全性を確認する臨床試験を計画し、実施します。
食品メーカー
食品メーカーでは、新しい食品の開発、品質管理、栄養成分分析など、食に関する研究開発に携わります。
具体的な職種としては、開発研究員、栄養士などがあります。
開発研究員は、消費者のニーズや最新の栄養学の知見を踏まえて、新たな食品を企画・開発します。例えば、機能性食品や健康食品の開発などが挙げられます。
また、栄養士として働く場合は、商品の栄養価計算や、栄養バランスの良い製品開発のアドバイスなどを行います。
化粧品メーカー
化粧品メーカーでは、新しい化粧品の開発、成分分析、皮膚科学的研究など、美容に関する研究開発に携わります。
主な職種には、研究開発員、製品開発者などがあります。
研究開発員は、新しい有効成分の探索やその効果・安全性の検証を行います。皮膚の構造や機能に関する深い理解が求められ、生命科学の知識が活きる分野です。
製品開発者は、研究結果を実際の商品に落とし込む仕事をします。化粧品は直接肌に触れるものなので、安全性と効果の両立が欠かせません。
医療機器メーカー
医療機器メーカーでは、医療機器の開発、品質管理、臨床試験など、医療現場で利用される機器の開発に携わります。
主な職種には、研究開発(R&D)エンジニア、薬事申請担当者などがあります。
研究開発エンジニアは、新しい医療機器のコンセプト立案から設計、試作まで幅広い業務を担当します。生命科学の知識をベースに、工学的な知識も組み合わせて医療機器を生み出します。
薬事申請担当者は、開発した医療機器の承認を得るために必要な申請業務を行います。
バイオテクノロジー関連企業
バイオテクノロジー関連企業では、バイオ燃料、バイオ医薬品、環境浄化技術などの開発に携わります。
主な職種には、プロセスエンジニア、バイオインフォマティシャンなどがあります。
プロセスエンジニアは、研究室レベルの技術を大規模生産に適用するためのプロセス開発を担当します。バイオインフォマティシャンは、生物学的データを解析し、新しい知見を導き出す仕事をします。
研究機関
研究機関では、大学や国立研究所などで研究を行い、新たな発見を目指す仕事に携わります。
主な職種には、研究員、ポストドクトラルフェロー(ポスドク)などがあります。
研究員は、自身の専門分野で独自の研究テーマを持ち、実験や分析を行います。新しい生命現象の解明や、革新的な技術の開発など、科学の最前線で活躍します。
ポスドクは、博士号取得後に一定期間、特定の研究プロジェクトに従事する立場です。
IT企業
IT企業では、生命科学データを解析するシステム開発、バイオインフォマティクスなど、IT技術と生命科学を融合した仕事を行います。
主な職種には、バイオインフォマティシャン、データサイエンティストなどがあります。
バイオインフォマティシャンは、生物学的なビッグデータを解析し、新しい知見を導き出す仕事をします。例えば、ゲノム解析や薬剤設計支援などが含まれます。
データサイエンティストは、機械学習や人工知能技術を用いて、生物学的データから有用な情報を抽出します。
中学・高等学校の理科教員
中学・高等学校の理科教員として、生命科学の知識を活かして子どもたちに教える仕事もあります。主な職種としては、中学校教諭(理科)、高等学校教諭(生物)があります。
これらの職に就くには、大学で教職課程を履修し、教員免許を取得する必要があります。
教員の仕事は、授業の準備と実施、生徒の指導、校務分掌(学校を運営するための仕事)などが含まれます。また、理科や生物の教科を分かりやすく説明する能力も必要です。
生命科学科出身者の平均年収
主な就職先の平均年収を紹介します。
職業 | 平均年収 |
---|---|
製薬会社 | 400万円〜550万円 |
食品メーカー | 400万円〜500万円 |
化粧品メーカー | 400万円 |
医療機器メーカー | 400万円〜600万円 |
バイオテクノロジー関連企業 | 660万円 |
研究機関 | 300〜400万円 |
IT企業 | 530万円 |
中学・高等学校の理科教員 | 600〜700万円 |
※平均年収はあくまで目安であり、実際の求人とは異なることがあります。
生命科学系の職業の将来性
生命科学系の職業は、今後さらに重要性を増すと考えられています。
特に次のような分野でニーズが高いと予想されます。
- 最先端の医療技術
- 健康関連製品・サービス
- 食料不足
- 環境問題
- 高齢者の医療・ケア
まず、医療分野での革新が期待されています。新しい治療法や医薬品の開発、遺伝子治療など、生命科学の知識を活かした医療技術が求められています。
また、人々の健康意識の高まりに伴って健康食品や機能性食品、さらには個別化医療など一人ひとりの体質に合わせた製品やサービスのニーズが拡大しています。
世界的な課題に目を向けると、人口増加による食料問題の解決にも生命科学の知識が欠かせません。遺伝子組み換え作物やゲノム編集技術など、食料生産の効率化に向けた研究が進んでいます。
環境問題に関しても、生物を用いた環境浄化技術や、生物多様性の保全など、生命科学の知見を活かした解決策が求められているのです。
さらに、高齢化社会の進展に伴い、高齢者の健康維持や医療についての研究の重要性が増しています。認知症予防や再生医療などの研究が注目を集めています。
このように、生命科学系の職業は社会のニーズと密接に結びついており、今後も成長が期待される分野だと言えるでしょう。
生命科学科出身から就活を成功させるためのポイント
生命科学科出身者が就職活動で成功するためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは、就活を成功に導くための重要なポイントを紹介します。
幅広いスキルを身につける
企業が求める人材になるためには、幅広いスキルを身につけることが重要です。
例えば、生物学的データを統計的に分析する能力は、研究開発だけでなく、マーケティングなどの分野でも活かせます。また、プログラミングスキルも重要です。バイオインフォマティクスの分野では、プログラミング能力が必須とされています。
さらに、プレゼンテーション能力も欠かせません。研究成果を分かりやすく説明する能力は、研究職だけでなく、営業職などでも重要です。
これらのスキルを在学中から磨くことで、就活での選択肢が広がるでしょう。
インターンシップを活用する
インターンシップは、企業の仕事内容や雰囲気を体験できるチャンスです。生命科学系の学生にとって、インターンシップは特に重要です。
なぜなら、大学での研究と、企業での仕事の違いを実感できるからです。例えば、製薬会社でのインターンシップでは、新薬開発のプロセスや、安全性試験の重要性などを学べます。
また、インターンシップを通じて、自分の適性を見極めることもできます。研究開発職が向いているのか、それとも営業職の方が自分に合っているのか、実際に体験することで判断材料が得られます。
情報収集を徹底する
生命科学系の求人情報は、一般的な求人サイトでは見つけにくい場合があります。そのため、情報収集を徹底することが重要です。
専門の求人サイトを活用するのも一つの方法です。バイオ専門の求人サイトでは、研究職や開発職など、専門性の高い求人情報を得られます。
また、大学のキャリアセンターも貴重な情報源です。多くの大学では、OB・OGの就職先情報や、企業の採用担当者との面談機会などの情報を提供しています。
さらに、学会やセミナーなどの業界イベントにも積極的に参加しましょう。これらのイベントでは、最新の研究動向だけでなく、企業の採用情報も得られることがあります。
研究以外の活動にも積極的に参加する
研究活動は重要ですが、それ以外の活動にも積極的に参加することが大切です。
例えば、学生団体やボランティア活動などは、コミュニケーション能力やリーダーシップを養う絶好の機会です。これらのスキルは、どのような職種でも求められる重要な能力です。
また、異分野の人々と交流することで、視野を広げることもできます。例えば、ビジネスコンテストに参加すれば、生命科学の知識をビジネスにどう活かせるかを考える機会になります。
さらに、留学や海外インターンシップなどの国際経験も、グローバル化が進む現代社会では大きな強みになります。研究一辺倒にならず、さまざまな経験を積むことで、就活での自己アピールの幅が広がります。
まとめ
生命科学科の卒業生は、就職に際して課題に直面するかもしれませんが、同時にさまざまなキャリアの可能性も秘めています。
研究職の求人数の少なさや専門性の高さが就職を難しくする一方で、製薬会社、食品メーカー、化粧品メーカーなど、専門知識を活かせる職場は多岐にわたります。
生命科学の知識は今後ますます重要性を増すと予想され、医療技術の革新や環境問題の解決など、社会貢献の可能性も大きいと言えるでしょう。
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