研究開発職の仕事内容とは|年収・必要な資格・向いている人の特徴
研究開発職は、技術・知識を研究し、研究結果を用いて製品を開発することが仕事です。研究開発職に就くために必須の資格・スキルはありませんが、知的財産に関わる資格や英語力を証明できる試験は取得・受験しておくとよいでしょう。本記事を読み、研究開発職の仕事内容や、おすすめの資格、平均年収、将来性、やりがい、向いている人の特徴を知れば、自分が研究開発職に適しているか判断できるでしょう。
研究開発職の仕事内容
研究開発職の仕事は、製品の製造や改良に生かせる技術・知識を研究し、研究で得た結果をもとに製品を開発することです。
研究職と開発職に分かれていることもあり、研究職は基礎研究・応用研究を行います。基礎研究は長期スパンで、製品に生かせる技術や知識を探究し、応用研究では基礎研究で得た新技術をどのように製品に生かすかを研究します。
開発職は、研究開発職・商品開発職・技術開発職に大別することができ、それぞれ開発への携わり方が異なります。研究開発は、研究職による新技術などをもとに市場のニーズに合わせた製品を開発します。商品開発も同じように製品を開発しますが、企画部署が提示した商品規格に基づき製品を開発することになります。技術開発は、製品性能や製造効率を向上させる技術の開発を行います。
研究開発職は、下記のようなメーカーで活躍できます。
- 食品
- 医薬品
- 化粧品
- 住宅メーカー
- ゼネコン
- 建材メーカー
研究開発職に必要な資格・スキル
研究開発職に就くために必須の資格はありません。しかし、下記の資格・スキルを取得していると、就職や実務に生かせるでしょう。
- 危険物取扱者
- TOEIC
- 技術士
- 弁理士
- QC検定
- 知的財産管理技能士
メーカーのジャンルによっては研究開発段階で危険物を取り扱うこともあり、危険物取扱者の資格なども役に立つでしょう。また、研究開発は、世界中の最先端技術・知識を取り入れていくため、英語力が求められます。下記項目で、それぞれの資格概要や試験について解説します。
危険物取扱者
危険物取扱者は国家資格であり、取得すると消防法で定められている危険物を業務中に扱えるようになります。研究開発業務では、化学薬品や引火性液体を使用する可能性があります。その際に、危険物取扱者の資格が役立つでしょう。試験は、甲種・乙種・丙種と3つに分かれており、それぞれ取り扱えるものが異なります。甲種はすべての種類の危険物、乙種は第1類~第6類の危険物、丙種は引火性液体のみが対象です。全種類の危険物を扱えるようになる甲種について、下表に試験内容をまとめました。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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試験会場により異なる 例:東京都 令和5年開催日 2月5日(日)、4月16日(日)、7月17日(月)、9月9日(土)、11月5日(日) | 以下のいずれかに該当すること ・大学等において化学に関する学科等を修めて卒業 ・大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得 ・乙種危険物取扱者免状を有する(実務経験2年以上) ・乙種危険物取扱者免状を有する(次の4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けていること 第1類または第6類/第2類または第4類/第3類/第5類) ・化学に関する学科または課程の修士・博士の学位を有する | 全国の消防試験研究センター | 6,600円 | 試験科目ごとの成績が、それぞれ60%以上 | 2020年度:40.9% 2021年度:37.3% |
甲種の試験は合格率が低く、取り扱える危険物が多い分難易度が高いです。大学で化学を学んでいるものの、実務を経験していない場合、試験勉強時間は最低150時間程度かかるでしょう。消防法や危険物規制に関する政令などを暗記する必要があるからです。公式サイトに掲載されている過去問や、市販の問題集を繰り返し解きましょう。
TOEIC
TOEIC(TOEIC Program)とは、160カ国で実施されている英語能力を測る試験です。級は設けられておらず、点数(スコア)で英語力がどの程度あるか証明します。TOEICは、TOEIC TestsとTOEIC Bridge Testsの2種類があり、その中でもTOEIC Testsには、読む力と聞く力を測るテスト、話す力と書く力を測るテスト、話す力のみを測るテストと3種類あります。日本でTOEICというと、読む力と聞く力を測るTOEIC Listening & Reading Testを指すことが多く、日常会話に加えビジネスシーンの英語も問われるため、研究開発職に生かせます。研究開発職では、英語の論文を読んだり、研究内容を英語で発表したりと、英語は必要不可欠です。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 公式スコア別評価 | 平均スコア |
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毎月1回以上実施、受験会場によって開催日程が異なる 例:2023年2月の試験日 2023年2月26日(日) | 特になし | 全国各地 (申込時に選択した「受験地」と「受験者の住所の郵便番号」で決定) | 7,810円(税込) | ・レベルA(860点以上)Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる ・レベルB(730点以上)どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている ・レベルC(470点以上)日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では 業務上のコミュニケーションができる | 2019年:588点 2020年:620点 2021年度:611点 |
TOEICはさまざまな対策教材が出ており、書店や通信販売で購入できます。自分に合った単語帳やリーディング・リスニング対策テキストを見つけ、学習を進めます。企業によって求めるスコアが異なるため、入社を希望する会社の求人情報で確認しましょう。
技術士
技術士とは、高度な科学技術知識を身に付け、実務経験を有していることを証明できる国家資格です。試験は、機械部門、建設部門、農業部門など21の部門に分かれています。それぞれの部門に合った業界で研究開発をする際には、試験で得た知識が大いに役立ってくれるでしょう。
試験は、技術士第一次試験、技術士第二次試験の2段階式を取っています。技術士第一次試験に合格後、一定期間の実務を経ることで第二次試験に臨むことが可能です。
試験の種類 | 試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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第一次試験 | 10月中旬ごろ(令和5年度は11月26日(日)に実施) | 特になし | 北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県の大学やホテルなど | 11,000円(税込) | 基礎科目、適正科目、専門科目においてそれぞれ50%以上の得点 | 2019年度:48.6% 2020年度:43.7% 2021年度:31.3% |
第二次試験 | 筆記試験:7月下旬ごろ(令和5年度は、7月16日(日)・17日(祝)に実施)
口頭試験(筆記試験合格者のみ):11月下旬~翌年1月(令和5年度は、12月から令和6年1月までに該当者のみに通知) | いずれかの条件を満たす ・職務上の監視者のもとで4年を超える実務経験を有する ・7年を超える実務経験を有する(修習技術者となる前の経験も参入可) | 14,000円(税込) | 必須科目・選択科目のいずれも60%以上の得点 | 2019年度:11.6% 2020年度:11.9% 2021年度:11.6% |
技術士試験は合格率が低く、特に二次試験は高度な内容が問われるうえに口頭試験があるため、合格率は11%にとどまっています。一次試験の合格率は40%前後のため、きちんと対策をすれば合格圏内に入れます。まずは過去問を繰り返し解きながら、解説テキストで理解を深め、一次試験の合格を目指しましょう。
弁理士
弁理士とは、知的財産のスペシャリストであり、弁理士の資格を取得することで特許や意匠、実用新案の代理出願を行うことができます。研究開発業務で、新しい技術などを生み出した場合、特許申請をすることもあるでしょう。その際に役立つのが弁理士の資格です。知的財産に関する部署へ異動・転職する際にも有利に働きます。
弁理士になるための試験を弁理士試験といい、国家試験にあたります。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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短答式筆記試験:5月中旬~下旬 論文式筆記試験(必須科目):6月下旬 ~7月上旬 論文式筆記試験(選択科目):6月下旬 ~7月上旬 口頭試験:10月中旬~下旬 | 短答式筆記試験:特になし 論文式筆記試験:短答式筆記試験合格者 口頭試験:論文式筆記試験(必須科目・選択科目ともに)合格者 | 短答式筆記試験: 東京、大阪、仙台、名古屋、福岡 論文式筆記試験(必須科目): 東京、大阪 論文式筆記試験(選択科目):東京、大阪 口頭試験: 東京 | 12,000円 | 短答式筆記試験:総合得点満点の65%の得点を基準として、工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。科目別の合格基準を下回る科目が一つもないこと(科目別合格基準は各科目の満点の40%が原則) 論文式筆記試験(必須科目):標準偏差による調整後の各科目の得点の平均が、54点を基準として工業所有権審議会が相当と認めた得点以上である。47点未満の得点の科目が一つもないこと。 論文式筆記試験(選択科目):満点の60%以上の得点 口頭試験:採点基準をA、B、Cとし、合格基準はC評価が2つ以上ないこと | 短答式筆記試験 2019年:18.3% 2020年:18.2% 2021年:11.3% 2022年:10.3% 論文式筆記試験 2019年:25.5% 2020年:25% 2021年:25.1% 2022年:26.3% 口頭試験 2019年:95.6% 2020年:98.6% 2021年:90.2% 2022年:96.4% |
スタートである短答式筆記試験の難易度が非常に高く、1年~2年で合格できれば早いほうです。弁理士に合格するためには約3,000時間の勉強が必要だといわれていますが、他の国家資格試験の勉強時間と比較しても妥当な時間数でしょう。試験では、知的財産に関する法律の内容を問われます。短答式筆記試験はマークシートのため、独学でも乗り越えられますが、論文式筆記試験は記述形式のため、独学で切り抜けるには厳しいです。通信教育などを活用しましょう。
QC検定
QC検定(品質管理検定)とは、品質管理に関する知識を証明できる検定です。研究開発において、製品出荷前の最終チェックを行うのが品質管理部門です。QC検定を受けることで、品質管理の具体的な手法を学べます。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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年2回(3月・9月) | 特になし | 札幌市、苫小牧市、青森県、宮城県、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京23区、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡市、浜松市、豊橋市、西三河、名古屋市、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県、沖縄県(うち、1級は宮城県、埼玉県、東京23区、神奈川県、富山県、長野県、静岡市、名古屋市、大阪府、広島県、香川県、福岡県のみ) | 1級:11,000円 2級:6,380円 3級:5,170円 4級:3,960円 (すべて税込) | 1級:総合得点がおおむね70%以上、手法分野と実践分野の得点がそれぞれ50%以上、論述方式で行われる二次試験の得点がおおむね70%以上 2級・3級:手法分野・実践分野それぞれで得点がおおむね50%以上、および総合得点がおおむね70%以上 4級:総合得点がおおむね70%以上 | 2022年 1級:10.4% 2級:25.2% 3級:54.4% 4級:85.9%
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4級からスタートしますが、順番に受ける必要はないため、初めて品質管理を学ぶ社会人は3級から受けるとよいです。3級では計算問題を中心に練習し、50時間~100時間程度の勉強時間で合格圏内を目指せるでしょう。品質管理実務経験者や、管理職の方は2級の受験がおすすめです。2級は統計を使用する問題や、計算問題が多めに出題されるため100時間~200時間程度の勉強時間が必要でしょう。
知的財産管理技能士
知的財産管理技能士は、知的財産を管理する技能の習得を証明する国家資格です。新技術の開発は、技術の盗用リスクを伴います。自分たちで研究開発したものを守るためにも、知的財産管理技術に関する知識を取得することが重要です。本資格と同様に、知的財産に関わる弁理士は、特許や意匠の申請を代理で行うことができ、試験では法律を中心に問われます。しかし、知的財産管理技能士は、知的財産に関する知識の程度を問われます。知的財産管理技能士試験は1級・2級・3級があり、1級は3つの分野に分かれています。各級、学科試験と実技試験が課され、両方に合格で、資格を取得できます。
試験日 | 受験資格 | 受験会場 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
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原則年3回(3月、7月、11月) | いずれかに当てはまる者 1級:知的財産業務で4年以上実務経験あり、2級技能検定合格で知的財産業務で1年以上実務経験ありなど 2級:知的財産業務で2年以上実務経験あり、3級技能検定合格など 3級:特になし | 北海道、宮城、茨城、千葉、東京、神奈川、新潟、石川、長野、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、福岡、沖縄(実施回によって実施地区は異なる、1級実技試験は東京のみ) | 1級 学科試験:8,900円 実務試験:23,000円 2級 学科試験・実務試験:各8,200円 3級 学科試験・実務試験:各6,100円 すべて非課税 | 1級 学科試験:満点の80%以上 実技試験:満点の60%以上 2級 学科試験、実技試験ともに満点の80%以上 3級 学科試験、実技試験ともに満点の70%以上 | 1級 学科試験:8% 実技試験:70% 2022年3月 2級 学科試験:49.3% 実技試験:33.2% 3級 学科試験:67.5% 実技試験:71.1% 2022年7月 2級 学科試験:42.2% 実技試験:50.4% 3級 学科試験:69.4% 実技試験:75.1% 2022年11月 2級 学科試験:45.4% 実技試験:31.3% 3級 学科試験:67.8% 実技試験:68.3% |
研究開発職でこれから知的財産について学ぼうという方は、3級からの受験がおすすめです。3級は合格率が70%前後のため、難易度は低いです。過去問等を用い、50時間程度勉強すれば合格できるでしょう。
研究開発職の平均年収
研究開発職の平均年収は、約510万円です。地域別に見ると、関東の平均年収が一番高く530万円ほどで、一番低いのは九州・沖縄ですが、その平均年収は426万円といわれています。また、20代よりも30代のほうが平均年収は高めです。研究開発職の中でも、電気・電子・機械分野は平均年収が高く、動物医薬品業界は年収が上昇傾向にあります。
研究開発職の将来性
研究開発職は、将来性ある職業といえるでしょう。専門性が高く、試行錯誤が必要なためAIやロボットにとって代わりにくい仕事内容だからです。新技術を生み出し、それを用いた製品を開発し、他社との差別化を図りたい企業にとって、研究開発職は欠かせません。
また、近年、研究開発職に求められているのはGX(グリーントランスフォーメーション)を実現できる人材です。GXとは、最先端技術を駆使し、環境保護と産業発展の両立を目指すことです。これまでのように、性能や生産効率の向上だけではなく、SDGsなどの観点から研究・開発ができる人材であれば、さまざまな企業で重宝されるはずです。
研究開発職のやりがい
研究開発職のやりがいには、興味がある分野の最新知識・技術に触れながら仕事ができることや、個人ではできない大きな規模の研究開発に携われること、目標がはっきりしているため達成感が得やすいことなどが挙げられます。分かりやすいところでは、新薬の研究・開発があります。病気に対してより効果的な成分を研究し、薬を開発することは病気に苦しむ人を救うことになり、大きな達成感を得られます。
半面、コストや期限の制限がある中で、実験を繰り返すことに大変さを感じるかもしれません。また、結果の見えない内容で、中・長期的視点で腰を据えて研究開発を行うことにプレッシャーを感じる点や、研究開発以外の会議・研修などの業務が発生する点がデメリットといえるでしょう。
しかし、新技術や製品を開発できたときの喜びは、研究開発職だからこそ得られるものです。
研究開発職に向いている人の特徴
研究開発職に向いている人は、下記のような方です。
- 粘り強く研究開発に打ち込める
- 協調性がある
- 疑問を持ち、考えることが好き
長期スパンで研究開発を行うため、粘り強さが求められます。思ったような結果が得られずとも、根気よく検証を続けていくことが必要だからです。また、研究開発は基本的にチームで行うため、周囲と円滑なコミュニケーションを取れることも重要です。ときには社外の人と協力して仕事を進めたり、出張をし、出張先機関の人と会議をしたりすることもあります。協調性をもって仕事をする姿勢が、常に求められるのです。また、研究開発過程において想定通りにいかなかった際、なぜうまくいかないのかを考察し、解決策を考えることを楽しめる能力も必要になってくるでしょう。
まとめ
研究開発職は、研究職・開発職と分かれていることがほとんどです。研究職は基礎研究や、基礎研究で発見された知識・技術をどのように製品に応用できるかを探求する応用研究を行います。開発職は、企画部署の立案した製品を開発したり、研究職が導き出した結果をもとに、技術開発をしたりします。研究開発職に必須の資格・スキルはありませんが、最先端の知識・技術を得るには英語力が欠かせません。また、技術士や弁理士などの資格も業務に役立つでしょう。平均年収は、約510万円で、地域や研究開発分野、年代によって異なります。地道に業務を繰り返すことはつらいかもしれませんが、興味のある分野の最新技術に触れ、自分の研究開発によって世の中に貢献できる点は、研究開発職ならではのやりがいです。チームで仕事を行うことが多いので、協調性があり、粘り強く研究開発に打ち込める人は、研究開発職に向いているでしょう。