製薬会社の就職・転職に必要な資格とは?職種ごとに詳しく解説
製薬会社へ就職・転職するには、資格が必要になるのではないかと考える人もいるでしょう。
スキルや経験を磨いたほうがいいのか、具体的にどのような業務をすることになるのか、など疑問はたくさん出てくると思います。
本記事では、製薬会社へ就職・転職する際に押さえておきたいポイントや、必要な資格などについて詳しく説明します。ぜひ参考にしてみてください。
資格がなくても製薬会社で働くことはできる
製薬会社への就職・転職は、資格がなくとも可能です。しかし、製薬会社は、医薬品の開発から生産・販売までのプロセスを担う会社ですので、豊富な知識と経験が求められます。
また、医薬品の開発に関しては、大学での研究結果や成果が採用の判断材料になったり、海外の論文を読むために英語力が必要になったりします。資格を取得しておくと就職や転職で有利になる可能性もあるため、製薬会社の職種ごとに活かせる資格を調べておくと良いでしょう。なお、製薬会社の職種ごとに活かせる資格に関しては、後ほど説明します。
製薬会社の仕事の特徴
製薬会社の仕事は、具体的にどのようなことをするのでしょうか。製薬会社ならではの仕事の特徴を紹介していきます。
医薬品の研究開発から販売までを担う
前述したように、製薬会社は医薬品の研究・開発・生産から販売まで、一連の工程を行う企業です。製薬会社を大きく分けると、以下の3つに分類されます。
- 医療用・一般用医薬品メーカー
- 外資系製薬会社
- ジェネリック医薬品メーカー
医療用・一般用医薬品メーカーは医薬品の開発・生産・販売を一手に担い、外資系製薬会社は海外資本を取り入れ、ジェネリック医薬品メーカーは後発医薬品をメインに取り扱っている点が特徴です。
なお、製薬の種類には、主に医師が処方する「医療用医薬品」と、薬局やドラッグストアなどで購入できる「OTC医薬品」があります。
就職・転職先として人気がある
製薬会社は、他の企業よりも福利厚生が手厚く、高収入が期待できるという理由で就職・転職先として人気があります。また、製薬は日常生活で必要不可欠なため、安定した職業に就きたいと考える人が希望する傾向です。
ただし、求人数や募集人数は限定的であるため、製薬会社における内定の競争倍率は比較的高いといえます。
製薬会社に関わる5つの職種
製薬会社には、さまざまな職種があります。ここでは、中心的な以下5つの職種を紹介します。
- 研究職
- 開発職
- 薬事職
- 生産技術職
- 営業職(MR)
研究職
研究職は、医薬品の開発や実験などを行う職種です。医薬品を開発する研究には、基礎研究と応用研究の2つがあります。
基礎研究は新薬の開発を行う前に仮説を立てて、実験や分析を行う研究です。一方で応用研究では、基礎研究で行った仮説と研究結果から新しい医薬品を作ります。
開発職
開発職は、研究職が開発した医薬品で臨床試験を複数行い、安全性を確認する重要な職種です。研究職と開発職をまとめて「研究・開発職」と呼ぶこともありますが、基本的にこの2つは違う職種となります。
薬事職
薬事職は、法的観点から製品の取り扱いが違反していないか調査したり、厚生労働省に報告書を提出したりする職種です。薬事法は度々改正されているので、最新の薬事法を確認し、改正されたらすぐに対応する必要があります。
生産技術職
生産職は、医薬品の製造と生産を行う職種です。各工程において様々な業務を行います。
医薬品の主な生産工程は、以下のとおりです。
- 入荷・受入試験
- 秤量
- 造粒
- 混合
- 打錠
- コーティング
- 印刷
- 検査
- 包装
医薬品の製造現場は、衛生管理を徹底しており、クリーンな環境内での業務が基本となります。
営業職(MR)
製薬会社の営業職は、営業職(MR)と呼ばれています。MRとは、医薬品卸販売担当者(Marketing Specialist)のことです。直接医療現場に足を運び、医薬品について説明し販売するのが仕事となります。そのため、医薬品に関する知識が必要な職種です。
製薬会社勤務に必要な4つのスキル
ここでは、製薬会社勤務に必要なスキルを紹介します。主に、必要なスキルは以下の4つです。
- 課題を抽出して解決に導く力
- 積極的・主体的に業務にあたる力
- 各職種に役立つ専門的な知識
- ビジネス英会話ができる英語力
課題を抽出して解決に導く力
製薬会社は人の生命に影響を与える医薬品を扱っていることもあり、職種ごとにさまざまな課題を抱えています。課題を1つずつ解決するために、何が原因なのか、どのような解決方法があるのかを考えることが大切です。
また、課題を抽出して解決策を考えるだけでなく、実際に実行し、解決に導く力も求められます。
積極的・主体的に業務にあたる力
製薬会社で働くには、自ら積極的かつ主体的になって業務にあたる力が必要です。
薬事法に基づいて医薬品を開発・生産・販売するのはもちろんのこと、製薬会社ごとの規則や決定事項を守りつつ、状況から判断して自分から仕事を見つけましょう。上司や仲間から指示待ちをするようでは務まりません。
各職種に役立つ専門的な知識
製薬会社の各職種によって、専門的な知識が異なります。特に医薬品の研究開発には、薬品、化学、解剖学、遺伝学などの知識が必要です。
たとえ、専門的な知識が不要とされている職種であっても、業務フローを把握し、どのような知識があればより高いレベルで業務にあたれるかを考えることが大切です。
ビジネス英会話ができる英語力
製薬会社の場合、海外の論文で情報収集を行い、リサーチで得た知識を業務に活かす場面が多々あります。そのため、グローバルに活躍できる人材を製薬会社は求めています。ビジネス英会話ができる英語力を備えていると安心でしょう。
製薬会社の「研究開発職」に活かせる資格
製薬会社の研究職・開発職は、求められる資格が共通しています。
修士号・博士号
製薬会社の研究開発職に就くためには、大学・大学院を卒業し、修士号・博士号の取得が求められる可能性があります。修士号とは大学院を卒業すると得られる学位、博士号は大学院の博士課程や博士後期研修を修了した人が得られる学位のことです。
学士号(大学を卒業したら得られる学位)でも採用されることはありますが、製薬会社の求人に「修士課程、博士課程を修了している」と記載されているケースもあるので、事前に確認してください。
薬剤師
薬学の専門家として知られている「薬剤師」は、薬に関する専門知識を持っている証拠となります。
薬剤師の資格取得は、製薬会社の研究開発職へ就職・転職する必須条件というわけではありませんが、薬に関する知識量をアピールできます。
ただし、薬剤師の国家試験を受けるには、薬学部の卒業見込みがある者もしくは卒業した者だけです。国家試験を受けるために、まずは6年制の薬学部へ入学する必要があります。
製薬会社の「薬事職」に活かせる資格・知識
製薬会社の薬事職で活かせる資格・知識は以下になります。
MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)
Word、Excel、PowerPoint、Access、Outlookの利用スキルが証明できる MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)はほぼ毎日試験が開催されており、受験ハードルが比較的低いのでおすすめの資格といえます。
医薬品の承認申請業務など、薬事職は申請に必要な書類作成をすることが多いので、WordやExcel、PowerPointといったPCスキルを高めておくと便利です。
参考:Microsoft Office Specialist
GCP・SOPなどの治験に関わる知識
治験に関わる製薬会社では、GCP・SOPなど治験分野の知識は必要不可欠といえます。
治験実施で守るべき基準をまとめた省令が「CCP」、治験の際に遵守すべき業務手順書が「SOP」です。
文章作成・管理能力などの知識
文章能力やスケジュール管理能力なども、業務にあたるうえで役立つスキルです。特に薬事職では、薬機法、申請方法、各審査、ルールなど、薬事に関わるあらゆる知識を身につけることが求められます。
また、ヒアリングや面談で活かせるコミュニケーション能力、管理能力なども身につけておくと良いでしょう。
製薬会社の「生産職」に活かせる資格
製薬会社の生産職で活かせる資格は、以下のようになります。
危険物取扱者
製薬の製造は他の製造よりも非常にデリケートです。GMPに規定された国際基準に基づいて生産する必要もあるため、危険物取扱者の資格を取得しておくと役に立ちます。
危険物取扱者は取り扱う危険物によって、甲種・乙種・丙種の3種類に分けられますが、生産職で働くには難易度が高いと言われている「甲種」を取得しましょう。
薬剤師
医薬品を製造・販売する企業は、医薬品の品質管理および製造販売後の安全管理を徹底するために、薬剤師を置くことが厚生労働省令で定められています。
医薬品製造管理者は薬剤師の資格が必要なので、取得しておくに越したことはありません。
製造業での勤務経験や知識
製薬に関する知識に留まらず、食品や化粧品などの製造に関する知識や実務経験があると便利です。
製薬業のように、安全管理・衛生管理が徹底されている環境では、厳しいルールや高い基準が設定されています。そのため、別業種の製造業で勤務経験がある場合は、優遇される可能性が高いです。
製薬会社の「営業職」に活かせる資格
製薬会社の「営業職」では、薬に関する知識はもちろん、MR認定試験が役に立ちます。
MR認定試験とは、 MRの資質向上を目的とした資格試験です。一般的に、営業職は薬に関する知識が必要になりますが、研究開発職のように専門性の高い知識は問われません。ですが、MRを目指す方や、すでにMRとして勤務している方は、MR認定試験を受けています。
なお、公益財団法人MR認定センターの発表によると、2022年12月実施のMR認定試験における合格者は受験者数1,232人のうち合格者数は1,010人、合格率は82%でした。
出典:公益財団法人MR認定センター|これまでの試験結果
まとめ
製薬会社へ就職・転職するために、特別な資格を取得する必要はありません。ただし、資格を取得すれば、製薬会社の各職種で役立ちます。職種によって必要な知識や資格が異なるため、自分がやりたい仕事を明確にした上で、就職・転職で有利になる知識とスキルを習得し、取得を目指しましょう。