エネルギー管理員とは?エネルギー管理者との違いやエネルギー管理士資格の取得方法を解説
SDGsやカーボンニュートラルなどへの関心が高まり、今後のエネルギー供給に多くの人が注目しています。そのため、エネルギー業界への就職を考えている人も多いかもしれません。エネルギー業界に欠かせない仕事に「エネルギー管理員」があります。
ここでは、エネルギー管理員とは何か、エネルギー管理員になるためにはどのような資格が求められるのかなどについて解説します。エネルギー業界での仕事に興味のある方はぜひお役立てください。
エネルギー管理員とは
エネルギー管理員は、工場などでエネルギーの合理的使用をマネジメントする役割を担っています。エネルギー管理員になるためには、国家資格であるエネルギー管理士の資格取得が必須です。
日本の工場や製造現場でエネルギー管理員が必要とされるのは、エネルギー資源が乏しいからです。2019年度の日本のエネルギー自給率はわずか12.1%で、これは他のOECD諸国と比べても非常に低い水準です。エネルギー自給率が低いということは、国際情勢によって日本のエネルギー供給は容易に影響を受けるということです。そのため、多くの電気を使用する工場や事業所ではエネルギー管理員を設置することになったのです。
熱分野と電気分野
エネルギー管理士の資格には熱分野と電気分野があります。これは、2005年以前の旧制度で熱管理士と電気管理士に分かれていた名残です。どちらの分野を選んでも試験に合格すればエネルギー管理士の免状を取得できます。
もし、旧制度のどちらかの資格を持っている場合、エネルギー管理士試験の課目Ⅰのみを受験し、合格するとエネルギー管理士になれます。
エネルギー管理員とエネルギー管理者の違い
ここでは、エネルギー管理員とエネルギー管理者の違いについて説明します。
エネルギー管理員とは、エネルギー管理士免状の交付を受けている者またはエネルギー管理講習終了者であり、エネルギー管理者とはエネルギー管理士免状の交付を受けている者です。
役割の違いについても説明しましょう。エネルギー管理員が対象とする事業者は第一種指定事業者及び第二種特定事業者です。それに対して、エネルギー管理者が対象にするのは、第一種特定事業者です。
事業者全体でのエネルギー使用量が1,500~3,000KLであれば、第二種特定事業者、3,000KL以上であれば第一種特定事業者とみなされます。そして、第二種特定事業者であれば、エネルギー管理員を1人選任することが義務付けられていますが、3,000KL以上であれば第一種特定事業者になるため、エネルギー管理者の選任が求められるのです。ちなみに1,500KLであれば有資格者の選任は必要ありません。
エネルギー管理者に必要な資格
上述の通り、エネルギー管理者になるにはエネルギー管理士の資格が必要です。そして、資格の取得方法には以下の二通りがあります。
- 試験による資格取得
- 研修による資格取得
一つずつ説明しましょう。
エネルギー管理士試験
エネルギー管理士試験を受験するための特定の受験資格はありません。誰でもチャレンジできる試験です。
試験科目は「必須基礎区分」と「専門区分」に分かれています。詳細は以下の通りです。
- 必須基礎区分
課目Ⅰ エネルギー総合管理及び法規(80分)
- 専門区分(熱分野・電機分野いずれかを選択)
【熱分野】
課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎(110分)
課目Ⅲ 燃料と燃焼(80分)
課目Ⅳ 熱利用設備及びその管理(110分)
【電気分野】
課目Ⅱ 電気の基礎(80分)
課目Ⅲ 電気設備及び機器(110分)
課目Ⅳ 電力応用(110分)
試験は筆記試験で、マークシート方式です。
試験に関する情報は以下の通りです。
試験日 | 受験場所 | 受験者数 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
毎年1回7月下旬から8月上旬ごろ | 全国10拠点 | 7,766名 (2022年) | 17,000円 (非課税) | 各科目の合格基準(配点の60%以上)を得点した課目は合格となり、4課目に合格すればエネルギー管理士試験合格 | 33.9% (2022年) |
エネルギー管理研修
エネルギー管理研修には受講資格があり、3年以上の実務経験がある人でなければなりません。講義内容は高度な計算を伴う専門知識です。修了試験があります。
・必須基礎区分
課目Ⅰ エネルギー総合管理及び法規
・専門区分(熱分野・電機分野いずれかを選択)
【熱分野】
課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎
課目Ⅲ 燃料と燃焼
課目Ⅳ 熱利用設備及びその管理
【電気分野】
課目Ⅱ 電気の基礎
課目Ⅲ 電気設備及び機器
課目Ⅳ 電力応用
修了試験はマークシート方式ではなく、記述式です。
研修に関する情報 は以下通りです。
研修日 | 研修場所 | 受講者数 | 受験料 | 合格基準 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
6日の講義と1日の修了試験、計7日間 | 仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、 | 920名 (2021年) | 70,000円 (非課税) | 非公開 | 61.2% |
エネルギー管理員になるには
エネルギー管理士免状を取得するか、エネルギー管理講習を 修了しなければなりません。
エネルギー管理講習については以下の通りです。
講習地 | 申し込み方法 | 受講料 |
---|---|---|
全国11箇所 | 申込書提出もしくはインターネット申し込み | 17,100円 (非課税) |
エネルギー管理員が活躍できる職場
エネルギー管理員は、第一種エネルギー管理指定工場などで活躍できます。第一種エネルギー管理指定工場 とは、年度間エネルギー使用量(原油換算値kl)で、3000kl/年度以上の工場または事業所です。規模の大きな工場でも活躍できることが分かります。
まとめ
将来、世界のエネルギー資源は枯渇していくことが予想されます。限られたエネルギーをどのように有効活用するか、エネルギー管理員の役割は非常に大きいといえるでしょう。やりがいのあるエネルギー管理員の仕事に興味があるようなら、受験も検討してみてはいかがでしょうか?