半導体製造装置とは?製造業界のシェア率やメーカー、部品の特徴や種類を解説
スマートフォンから家電製品、さらには最先端の自動車に至るまで、私たちの生活を支える製品の多くは半導体によって動いています。半導体の製造過程にはあまり注目されていませんが、半導体製造装置がなければ先進的な製品は作れません。
半導体技術は、ITが日々進化を遂げる現代において中心に位置していると言っても過言ではありません。そんな半導体の生産を支える製造装置とは、どのようなものなのでしょうか。
本記事では、半導体製造装置の基本から始め、その構成部品や、製造装置が占める市場のシェア、主要な日本メーカーに至るまで詳しく解説します。
半導体とは
半導体とは、電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ物質のことです。半導体の電気伝導度は、不純物の量、温度、光、電圧などの影響によって大きく変化します。この性質を利用して、トランジスタ、ダイオード、太陽電池などの半導体素子が作られています。
半導体は様々な電子機器に使用されており、スマートフォンやテレビをはじめとした家電や、LED電球といった日常生活でなじみ深い製品に用いられており、情報処理や制御タスクといった役割を担っています。
半導体の主な特徴は、電流の流れを精密に制御できる点にあります。電流をオンまたはオフにするスイッチング、さらには電流を一方向にのみ流す(整流)などの操作が可能です。半導体の特性は、コンピュータのプロセッサやメモリ、各種センサー、通信デバイスなど、多くのアプリケーションで利用されています。
近年、半導体不足が社会的な問題となっています。この背景には、コロナ禍の影響で一時的に工場が閉鎖されたことや、リモートワークの普及によりパソコンやその他の家電製品への需要が急増したことがあります。供給が需要に追いつかない状態が続いているのです。半導体は、現代社会を支えるテクノロジーの中核を成す素材であり、その供給状況はグローバルな経済や技術進歩に大きな影響を与えています。
なお、半導体については以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
関連記事:半導体とは?定義や仕組みをわかりやすく解説!3つの役割や日常生活での使用例も紹介
半導体製造装置とは
半導体製造装置とは、半導体デバイスや集積回路(IC)を製造するために用いられる高度に特化した機械です。半導体チップの生産に不可欠であり、極めて精密な工程を可能にする技術が集約されています。
半導体は非常に小さなスケールで動作するため、製造過程ではナノメートル単位(10億分の1メートル)の精度が求められます。通常の機械加工では達成できない高い精度で素材を切削、エッチング、蒸着する必要があり、特殊な技術と高度に制御された環境が必要です。
半導体製造装置は、高度な自動化と精密制御技術によって特徴づけられます。クリーンルーム環境での運用が必要で、わずかな塵や温度変化、振動も製品の品質に影響を与えるため、環境制御も極めて重要です。
また、非常に高価で、一台の設備に数十億円を要することも珍しくありません。半導体製造装置の進化は、電子機器の性能向上と密接に関連しており、更なる技術革新が期待されています。
半導体製造装置部品とは
半導体製造装置部品とは、半導体チップを製造するための装置の構成要素です。製造過程で非常に高い精度と信頼性が要求されるため、一般的な工業製品の部品とは異なる特性を持っています。
半導体製造装置部品の特徴
先述したように半導体製造装置の部品はナノメートル単位での精度が求められるため、極めて高精度で加工されています。これらの技術は、微細な回路パターンを正確に形成するために不可欠です。
また、高温や化学薬品、放射線などの厳しい環境下でも性能を維持できるよう、耐熱性、耐腐食性、機械的強度が高い特殊な材料が使用されます。例えば、シリコンカーバイド、セラミックス、特殊合金などです。
さらに、加工方法も特徴的で、微細な構造を持つ部品の製造には、通常の機械加工ではなくリソグラフィ、エッチング、CVD(化学気相成長)、PVD(物理気相成長)などの特殊な方法が用いられます。
こういった半導体製造における特殊な要件から、半導体製造装置部品の製造コストは一般的な工業部品に比べて高価になっています。使用される材料の希少性、製造プロセスの複雑さ、そして高い製造基準が要求されるためです。
半導体製造装置部品の種類
半導体製造装置は、多様な部品で構成されており、それぞれが特定の機能を持っています。
主な部品の種類は、以下のとおりです。
- ワーク固定治具…ウェーハを正確な位置に固定し、加工中の動きを防ぐ
- チップトレイ …製造されたチップを保管・運搬する
- 真空チャンバー…装置内を真空状態に保ち、外部の汚染物質が製造過程に干渉するのを防ぐ
- 真空バルブ…真空チャンバーの気圧を調整する
- イオン注入装置…ウェーハに特定の化学元素を注入し、電気的特性を変更する
半導体製造装置部品は、半導体製造の各ステージで重要な役割を果たし、高品質な半導体デバイスの生産に直接的に寄与しています。
半導体製造装置のシェア
世界市場における半導体製造装置のシェアは、国によって大きく異なります。日本のシェアは全体の約10%となっており、日本が長年にわたり半導体装置の開発と製造で重要な役割を果たしてきたことがわかるでしょう。日本の企業は特にリソグラフィ装置やエッチング装置、検査装置など、特定の分野で強みを持っています。
参考:半導体製造装置の市場~世界シェアと日本国内の主要メーカーについて~|日本ポリマー株式会社
半導体製造は、大きく前工程と後工程に分かれます。前工程では半導体の基盤となるウェーハの生成から各種の加工プロセス、ウェーハの検査までが行われ、後工程ではウェーハを使用して実際の半導体デバイスを完成させる作業が行われます。工程別に使用される装置が異なり、市場シェアも異なるのが特徴です。
技術の進化とともに、半導体デバイスの小型化と機能の高度化が進む中、半導体製造装置の市場も拡大を続けています。AIやIoT、自動車産業など新たな需要が増えるにつれて、装置に対する需要も増加しているため、各国および各企業のシェア動向が今後も大きな注目を集めることでしょう。
参考:半導体製造工程 前工程|一般社団法人 日本半導体製造装置協会
日本の半導体製造装置の主なメーカー
日本は半導体製造装置の分野で世界的に重要な役割を果たしており、いくつかのトップ企業が国内外の市場で活躍しています。ここでは、日本が世界に誇る主要な半導体製造装置メーカーのトップ3を詳しく紹介します。
東京エレクトロン
出典:東京エレクトロン株式会社
東京エレクトロンは、日本の半導体製造装置市場においてトップの位置を占める企業の一つです。半導体製造装置だけでなく、フラットパネルディスプレイ製造装置やフォトレジスト処理装置なども手がけています。
東京エレクトロンの2024年3月期3Q(2023年10-12月期)の売上高は、前年比0.9%減の4,636.62億円でした。安定した売上成長を示しており、その売上の大部分は半導体製造装置からの収益です。
最大の強みは、革新的な技術と製品開発にあります。特にリソグラフィ装置やエッチング装置など、製造プロセスの前工程で使用される高度な装置の提供に強みを持っています。また、全世界に広がる販売とサービスネットワークも東京エレクトロンの大きな利点です。
アドバンテスト
出典:株式会社アドバンテスト
アドバンテストは、特に半導体テスト装置で知られる企業で、高性能なテストシステムを提供しています。
アドバンテストの2024年3月期3Q(2023年10-12月期)の売上高は、前年比3.4%減の1,332.33億円でした。テスト装置市場における高いシェアを持ち、売上も堅調に推移しています。主な強みは、高精度で信頼性の高いテスト技術です。
また、半導体デバイスの性能を最大限に引き出すための統合テストソリューションを提供しており、特にメモリやマイクロプロセッサのテストにおいて業界をリードしています。
SCREEN
出典:株式会社SCREENホールディングス
SCREENホールディングスは、半導体製造装置だけでなく、印刷技術やグラフィックアーツ関連の機械も製造している多角的な企業です。
SCREENホールディングスの2024年3月期3Q(2023年10-12月期)の売上高は、前年比13.1%増の646億円でした。売上の主軸は、多岐にわたる製品ラインと革新的な技術開発が支えています。
主な強みは、ウェーハ洗浄装置やコーティング装置に見られる高い技術力です。また、環境に優しい製造プロセスの開発にも注力しており、持続可能な製造技術の先駆者としても知られています。
まとめ
本記事では、半導体製造装置の役割と重要性について詳しく解説しました。現代の多くの技術製品は、精密な半導体が必要不可欠であり、半導体製造装置が、極めて高い精度で素材を加工し、厳格な環境下で運用されています。
また、半導体製造装置の市場では日本が世界の約10%のシェアを持ち、私たちの日常生活を支える高性能な電子機器が供給され続けています。このように半導体製造装置は、現在社会の基盤技術の一つとして、その進化と共に私たちの生活の質を高めているのです。
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