研究者の種類は豊富!仕事内容やよくある就職先・おすすめの資格も解説
各学問の新たな可能性を追求する「研究者」。社会に豊かさをもたらす職業ですが「研究者にはどんな種類があるか」「具体的にどのような仕事内容か」など、イメージしづらい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、研究者の職業について、種類・仕事内容・主な就職先を解説。研究者が取得しておくと便利な5つの資格もご紹介します。
研究職の種類は大きく分けて3つ
研究に関わる仕事(研究職)は、以下3種類に分類できます。
- 研究者
- 研究事務
- 研究補助
研究者は、研究職の代表的な業種です。しかし、研究の仕事は、研究者だけでは成り立たず、研究をサポートする存在が不可欠となります。
①研究者
研究者は、国内におよそ88万人(※1)存在します。
そんな研究者の仕事は、以下2つに大別されます。
- 基礎研究:過去の研究をベースとした、新たな知識・技術の発見
- 応用研究:新たな知識・技術を活かした、個別の課題解決の研究
研究者になるルートは、自身が志した専門分野を大学で学び、大学院で博士課程に進むことが一般的です。
なお、研究者と「技術者」は協力関係にあるものの、その役割は異なります。
具体的に、研究者は新たな知識・技術の「発見」を目指すのに対し、 技術者は発見された新たな知識・技術の「実現・実践」をミッションとしています。
(※1:「令和3年版 情報通信白書|研究者数」総務省)
②研究事務
研究事務は、研究における事務作業を担う職業です。研究の際に発生する煩雑な事務作業・情報共有を担い、研究者に研究へ集中してもらうことで、スムーズな研究の実現をサポートします。
具体的に、研究事務は以下のような業務を担当します。
- 研究資材の手配調達
- 研究資材の管理
- 報告書・企画書などの書類作成
- 製造手順書の確認
- 特許の調査
- 論文の検索 など
なお、求人によっては、来客・電話対応、ファイリング、営業支援など、一般事務・営業事務の業務内容を兼ねているケースもあります。
③研究補助
研究補助は、研究における実験のサポートを担う職業です。正確なデータの入手、事故防止、研究効率のアップなどに寄与します。
具体的に、研究補助は以下のような業務を担当します。
- 実験道具の洗浄・滅菌・乾燥
- 実験結果のデータ記録
- 実験結果の計測 など
なお、データ分析などのテクニカルなサポートは、研究補助ではなく「技能者」がおこなうことが一般的です。
研究者の主な仕事内容
研究者の主な仕事内容は、以下の5つです。
- 実験・調査の計画
- 研究室での実験・調査・分析
- 会議の準備・参加
- 学会への参加
- 大学教授の場合は授業を行う
実験・調査の計画
実験・調査は、長期間にわたって実施されるケースも少なくないため、事前の計画が欠かせません。
不備のある計画は、失敗のみならず、事故につながる危険もあるため、 しっかりとした計画を立てることが極めて重要となります。
なお、実験・調査で思うような成果が得られない、あるいは失敗した場合には、計画の見直しや予算の調整が求められます。
研究室での実験・調査・分析
研究者にとって、メインとなる仕事です。
立案した実験・調査計画に基づいて研究を進め、結果の分析を実施します。
なお、研究の期限などについては、大学での基礎研究よりも、民間企業の応用研究の方がシビアです。
民間企業の応用研究は、ビジネスが前提のため、期限・コストなどの制限をより考慮しつつ、 研究を進めることが求められます。
会議の準備・参加
研究に関わる会議への参加も、研究者の仕事の1つです。
具体的には、研究の進捗・結果の共有を通じ、今後の研究の方針などについて話し合います。
特に、民間企業で働く研究者の場合、ミーティングの名目で頻繁に会議に参加しなければならないケースもあります。
なお、会議の参加に際して、必要な資料を作成することも業務の範囲内です。
学会への参加
学会は、研究成果を発表・共有する場で、多くの研究者が参加しています。
研究成果の発表・共有に際しては、論文の執筆ほか、発表に必要な資料作成などをおこないます。
学会に参加することで、他の研究者との交流ができ、意見交換などを通じて、 研究精度を高めることも期待できます。
学会で実績を残すことは、キャリアの可能性を広げることにもつながるため、重要な仕事の1つということができるでしょう。
なお、論文執筆にはまとまった時間がかかるため、学会発表は年間スケジュールにおける大きなイベントとなっています。
大学教授の場合は授業を行う
大学教授として授業を受け持つ場合、研究者と併行して、教育者の仕事も担っているということができるでしょう。
授業を受け持つ場合の具体的な業務は、実際の授業だけでなく「授業の準備、試験の実施・採点、成績の評定、生徒たちのフォロー」など、多岐に渡ります。
なお、非常勤教授は、常勤教授と比較して授業数や大学関連の業務量が少なく、それだけ研究に多くの時間を割ける可能性があります。
研究者の種類は多岐にわたる
研究者の種類は、学問分野の数だけ存在しており、非常に多岐にわたるということができるでしょう。
ここでは、以下の研究者を例に、その概要や研究内容をご紹介します。
- 教育学研究者
- 遺伝研究者
- 考古学者
- 材料工学研究者
- 電気科学研究者
- AI(人工知能)研究者
- ロボット研究者
- 薬学・バイオ系研究者
教育学研究者
より良い学校・教育を目指すための研究を実施します。
過去・現在における各科目の指導・学習方法、教育現場の調査・分析などを通じて、より良い教育や学びのあり方を模索します。
遺伝研究者
動植物の遺伝子の研究を実施します。
ゲノムやDNA構造を解析することで、食・医療・バイオなど、多岐にわたる分野の発展に寄与することが期待できます。
考古学者
昔の人類の文化・価値観・歴史を研究します。
遺跡・遺溝を発掘することで、文字情報として残っていない太古の人類の姿にも迫ることができ、歴史的事実の解明に寄与します。
材料工学研究者
物質の精製・加工・構成を研究します。
生物・化学・物理などの知見から、新素材の開発、材料の組成・構造・機能の解明などをおこないます。
日本はこの分野でノーベル化学賞受賞者も出しており、材料工学におけるリーダー国の1つと言えるでしょう。
電気化学研究者
電気的な化学反応や、電気的な化学反応を生じる物質を研究します。
研究成果は、精錬・電池(燃料電池)・エレクトロニクスほか、光触媒・新素材開発など、様々な分野や用途に応用されます。
再生エネルギーも研究対象で、近年世界が推進するSDGsの実現にも寄与する分野ということができるでしょう。
AI(人工知能)研究者
近年進歩の目覚ましいAI(人工知能)を研究します。
ITのみならず、数学・認知科学・言語学・芸術など、様々な領域が関わっており、広範な知見が求められます。
ロボット研究者
AI(人工知能)との親和性も高い研究分野です。
ロボットは「産業用ロボット」「サービスロボット」に大別できますが、さらに高い利便性・機能性を求め、 会話・触覚・スムーズな動きなどの能力向上が進められています。
薬学・バイオ系研究者
薬学やバイオ(生命科学)の知見から、新たな製品や技術の研究・開発をします。
化粧品・食品・再生医療・新薬開発など応用の幅が広く、これらに関連した企業での活躍が期待できます。
研究者の7つの就職先
研究者には主に、以下7つの就職先があります。
- 民間企業
- 大学の研究室
- 公的機関
- 国立研究開発法人
- 国立研究機関
- 公設試験研究機関
- 民間研究機関
就職先によって、年収や業務内容、研究に割り当てられる時間や予算なども変わるため、それぞれの特徴をよく理解しておくことが大切です。
①民間企業
日本の研究者の半数以上は、民間企業に勤めています。具体的には、日本の研究者のおよそ58%(50万7,473人)が、民間企業に所属する研究者です(※2)。
商品開発に関わる研究が主ですが、企業活動から距離を取り、 学術研究に重きを置く民間研究所も存在します。
医薬品や食品ほか、機械・電気電子・化学などのメーカーは、 研究職の就職先として人気が高いです。
なお年収は、大学や公的機関と比較して、高い傾向にあることも特徴と言えるでしょう。
(※2:「令和3年版 情報通信白書|研究者数」総務省)
②大学の研究室
一般にイメージしやすい研究者の就職先と言えるでしょう。
博士課程終了後「ポストドクター(ポスドク)・助教・講師・准教授・教授」という順序でキャリアアップしますが、 博士課程修了から教授までは、15年前後かかると考えられます。
ポストドクター以降は、大学教員としての採用となり、学生の指導も業務に加わるケースがあります。
また、大学の研究室に所属するとともに、国・自治体の調査機関で活躍したり、民間企業に呼ばれるケースもあるなど、多様な働き方も可能です。
③公的機関
公的機関とは、地方公共団体・省庁の研究所などを指します。
具体的には、科捜研(科学捜査研究所)、科警研(科学警察研究所)、国立医薬品食品衛生研究所、動物医薬品研究所などが挙げられます。
なお、公的機関の研究者となるためには、国家公務員総合試験もしくは地方公務員試験に合格し、公務員になることが求められます。
④国立研究開発法人
国立研究開発法人は、公的機関の1つで、 研究開発を実施する独立行政法人です。
具体的には、理化学研究所・産業技術総合研究所・国立がん研究センター・JAXAなどが挙げられます。
⑤国立研究機関
国立研究機関は、公的機関の1つで、中央省庁が設けた研究施設です。
具体的には、すでにご紹介した科警研ほか、国立社会保障・人口問題研究所、国立感染症研究所、国土地理院などが挙げられます。
採用人数が少数に限られ、採用難易度は高めと言えるでしょう。
⑥公設試験研究機関
公設試験研究機関は、公的機関の1つで、地方公共団体が設けた研究施設です。
設置目的は、地域の産業振興・保健衛生・環境保全などです。
具体的には、健康安全センター・産業技術センター・農業技術センターなどが挙げられます。
⑦民間研究機関
一般企業の研究開発部門、 社団法人、独立財団法人などが該当します。
自動車・鉄道・地域経済といった各分野に特化した学術研究が実施されています。
研究者が取得しておくと便利な資格5選
以下5つのような資格を取得しておくと、 研究者の就職・転職やキャリアアップに役立ちます。
- TOEIC
- QC検定
- 弁理士
- 危険物取扱者
- 知的財産管理技能検定
①TOEIC
TOEICとは「Test Of English for International Communication」 の略称で、英語による国際的なコミュニケーションを目的とする試験です。
合否を問うものではなく、受験者の英語力をスコアで判定します。
英語力は、研究職のみならず、多くの職種で求められる能力のため、例年多くの受験者がいます。
英語論文のチェックや、国際学会への発表、キャリアアップ、外資系企業や海外拠点を持つ企業への就職・転職などに活かすことが可能です。
②QC検定
QC検定は、品質管理検定を意味する、品質管理の民間資格です。
難易度に応じて1〜4級が設けられています。
品質管理には製品のみならずサービスも含まれるため、製造業のみならず飲食・接客業、病院、役所など求められるシーンが数多くあります。
研究職も品質管理に関係するケースがあるため、資格取得を通じて得た知識を、業務に役立てることが期待できます。
③弁理士
弁理士は、知的財産権に関する国家資格です。
資格を取得することで特許出願ほか、産業財産権の取得、取引関連業務、紛争解決、コンサルティングなど広範な業務を担うことができます。
発明の権利を守るために役立つ知識であるため、新たな製品開発に関わる研究者は特に、取得して損のない資格と言えるでしょう。
ただし、法律系の国家資格であるため、難易度は高めです。
④危険物取扱者
危険物取扱者は、危険物の管理・取扱いに関する国家資格です。
化学工場やガソリンスタンドなどには、危険物取扱者の配置が義務付けられていますが、危険物を取り扱う研究所も同様です。
危険物取扱者の資格を取得しておくことで、危険物を取り扱う研究所への、就職・転職が有利となる可能性があります。
なお、危険物取扱者の免状には「甲種・乙種・丙種」の3種が存在しますが、甲種は全ての危険物(危険物の第1類~第6類)の取り扱いが可能です。
⑤知的財産管理技能検定
知的財産管理技能検定は、 知的財産の知識・管理技能の習得レベルを証明するための資格です。
習得レベルに応じて1~3級に区分されています。
かつては民間資格でしたが、 2008年7月より厚生労働省の職業能力開発促進法に基づく国家資格となりました。
新たな発見・発明に関わる研究開発者は、知的財産管理技能検定を通じて、知的財産の知見を得ておくことも有益と言えるでしょう。
まとめ
研究者は、研究を通じて、各学問分野における可能性を追求する職業です。
研究室において、計画した実験・調査を実施し、結果の分析を実施します。この他、会議や学会への参加、大学教員の場合は授業の実施も大切な仕事です。
研究者の仕事は1人ではなく、研究事務・研究補助など、他の研究職のサポートによって成り立っています。
そんな研究者の就職先は、民間(民間企業や民間研究機関)、公的機関(国立研究開発法人・国立研究機関・公設試験研究機関など)、大学に大別できます。
なお、研究者が「TOEIC・QC検定・弁理士・危険物取扱者・知的財産管理技能検定」などの資格を取得しておくと、 就職・転職に有利となったり、キャリアアップに役立てることも期待できるでしょう。