設 備設計はきつい?仕事内容やきつさを感じる理由・対処法を解説
これから設備設計の仕事につこうと考えているのに、設備設計はきつい、つらいという声を耳にして不安を感じていませんか?しかし、実際は言われているほどきつい仕事ではありません。
この記事では、設備設計の仕事がきついと言われる理由について解説するとともに、きついと感じたときの対処法や仕事の魅力について解説します。対処法を知っていれば、きついと感じてもきっと乗り切ることができるでしょう。
設備設計の仕事は本当にきつい?
設備設計の仕事はきつい、激務だといわれますが、実際はそうとも言い切れません。たしかに、複数の案件が重なったり、納期に追われたりする際には、仕事がきついと感じる部分はあるでしょう。どんな仕事にも苦労はあります。また、何をきついと感じるかは個人差があるため設備設計がきついかは、人によります。
まずは設備設計という仕事の基本的な内容について理解し、それが本当に自分にとってきつい、辛い仕事なのかを検討してみてください。最近は、働き方改革によって労働環境も改善されてきた上にIT化・DX化によって効率的に仕事を進められるようになっています。
設備設計は意匠設計のように目に見える派手さはありませんが、その家に住む人の快適な暮らしを支える重要な仕事です。何より、自分が設計した設備が正常に稼働している様子を見たときには、大きなやりがいを感じられるはずです。設備設計の仕事ならではの魅力もありますから、「きつい」という印象だけで避けてしまうのはもったいないでしょう。
設備設計の仕事内容や年収をチェックしよう
その仕事が自分に向いているのか、きつそうかを判断するには、仕事について理解することが重要です。設備設計の仕事の内容と年収について解説します。
設備設計の仕事内容
建築設計は大きく分けて以下の3つの分野に分けられます。
- 意匠設計
- 構造設計
- 設備設計
このうち設備設計は空調、配管、電気(照明、コンセントなど)、インターネットなどの設計を行います。マンションなどの住宅に限らず、商業施設やオフィスビルなど「建物」に関わるインフラ設備を適切に計画し、設計するのが仕事です。
設計にあたってコストと快適さのバランスを調整することも、仕事に含まれます。建物の室内環境を整えながらデザインと機能を両立させつつ、イニシャルコストだけでなく、ランニングコストも含めたライフサイクルコストを最適化するなど、建築になくてはならない役割を担っています。
意匠設計や構造設計と関わりのある職業
設備設計は、単体で動くことはできません。外観や内装のデザインを行う意匠設計、耐震性など建物の安全性を考える構造設計とともに、より良い住環境を整えるというひとつの目的に向かって連携して仕事をします。
これらの仕事は、よく人の体に例えられます。意匠設計は外見や体型、皮膚、構造設計は骨格や筋肉、そして設備設計は血管や臓器です。設備設計は表立って目立つことはありませんが、意匠設計や構造設計と密接に関わっており、まさに建物の心臓部ともいえる重要な仕事なのです。
設備設計の平均年収
設備設計の年収は、勤め先の会社の規模や取り扱う案件、またはその人のキャリアなどによってかなり差が出てきます。大手転職サイトなどによると、年代別の一般的な年収は以下の通りです。
- 20代:400~550万円
- 30代:650~750万円
- 40代:850~900万円
大手企業は高い傾向にあり、さらに経験年数が長くなるほど年収も上がります。9年目までは400~550万円ほどですが、10年以上だと650~750万円、20年を超えると850万円とされており、資格を持っているとさらに高くなる傾向があります。
設備設計に向いている人や必要な資格
設備設計の仕事にはどのような人が向いているのか、その特徴について解説します。また、持っていると有利になる資格も紹介します。
向いている人の特徴
設備設計の仕事は、以下のような特徴やスキルを持っている人が向いています。
- 設備設計の知識
- 調整能力・コミュニケーション能力
- 空間把握能力
- 危険予測能力
- 想定能力
設備設計の知識を持っていることは当然として、意匠設計や構造設計を担う部署と連携しながら仕事を進めていかなくてはならないので、調整能力が必要です。
また、限られたスペースを有効活用しながら必要な設備を必要な場所に設置していく空間把握能力、ここにこれを設置して事故が起きないだろうかと予測を立てる危険予測能力も求められるでしょう。電気やガスなどのインフラ設備は、一歩間違えれば人に大きな危害を及ぼしてしまうため、あらゆる事態を予測しなくて設置しなくてはなりません。
また、建物を建ててから起こりうるトラブルなどを予想する想定能力も必要です。例えば、実際の使用で室内がどのくらいの室温になるのか、それによって結露が発生しないかなど、人が入ってから起こることまで想定できるスキルが求められます。
必要な資格や役立つ資格
設備設計の仕事は資格を取得しなくてもできますが、持っていると仕事に役立つ資格はあります。4つの資格について解説します。
建築士
建築士とは建物の設計や工事監理を行う資格で、一級、二級、木造の3種類があります。建築士の資格はなくても設備設計の仕事はできますが、建築工事を行うために必要な図面である「設計図書」の作成の責任者になれるのは建築士のみです。そのため、必ず取得すべき資格だといえるでしょう。
特に、一級建築士の資格を取得すれば、建築関係の仕事をする上で大きなアドバンテージになりますし、仕事の幅も広がります。次に紹介する設備設計一級建築士の受験資格も得られます。
設備設計一級建築士
設備設計一級建築士とは一級建築士の上位資格であり、2006年に改正建築士法によって新設された資格です。2005年に起きた耐震偽装問題を機に、より専門性の高い知識を持った人に設計を任せられるようにこの資格が新たに作られました。3階以上、床面積が5,000平方メートルを超える建物設備設計にはこの資格が必要です。
一級建築士として設備設計の業務に5年以上従事するなど、取得の難易度は非常に高いですが、それだけ価値がある重要な資格だといえるでしょう。まさに設備設計のスペシャリストです。
建築設備士
建築設備士は、空調や電気などのインフラ設備に関する知識を持った人で、建築士に対して助言を行うことができます。この資格がなくても設備設計の仕事はできますが、建築士から助言を求められたときにアドバイスできる資格であり、建築士の受験資格を得られることから、これも必ず取得しておきましょう。
技術士
技術士とは高度な科学技術の知識を持った技術者のための資格で、機械部門など21の分野に分かれています。直接、設備設計の仕事に必要な資格ではありませんが、建築に関する計画や調査、分析、指導などコンサルタントしての業務を行うことができます。設備設計に活かすなら、建設部門や電気電子部門、機械部門などが役に立つでしょう。
設備設計がきついといわれる6つの理由
なぜ設備設計の仕事がきついといわれるのか、この仕事ならではの理由について解説します。
1.専門的な職業だから興味がないとつらい
設備設計の仕事は非常に専門性の高い仕事であり、覚えることが山ほどあります。本当に好きでないと興味を持てず、辛い思いをするでしょう。常に新しい情報を仕入れ、自ら学ぶ姿勢が必要です。
向上心を持って学べば、自分の引き出しが増えます。身につけた知識をさまざまな案件に活用できるようになり、仕事の幅も広がるはずです。意欲的な人によっては、辛さより楽しさややりがいが上回ると考えられます。
2.競合他社と争うのがストレスになりがち
設備設計の仕事は、設計を始める前にまず仕事を受注しなければなりません。競合他社との競争に勝ち、新たな仕事を受注しなければ会社の業績も上がりません。ある意味、設計よりも重要な仕事かもしれませんが、競争に勝つことは簡単ではないため、大きなプレッシャーを感じることもあるでしょう。
しかし、そのプレッシャーやストレスを跳ね除けて仕事を受注できたときの喜びは大きく、とてもやりがいを感じられる仕事です。市場の動向などにも精通し、設計という専門的な分野以外のスキルも身に付きます。
3.設計ミスや不具合が発覚したときの対応に苦労する
人のやることには間違いがつきものです。どんなに丁寧に仕事をしてもミスや不具合が見つかることはあり、それがクレームにつながることがあります。もしも設計段階からの修正が必要になれば、業務量も増え大きな負担がかかってきます。
それらの修正対応が通常業務に影響しないように、調整が必要になります。しかし、引き渡しの段階で不具合に気づくことができれば、後々大きな問題なることは防げます。丁寧なクレーム対応によって逆に信頼度がアップすることもありますから、災いを転じて福となすとしたいものです。
4.他部門との調整やコミュニケーションが大変
設備設計の仕事は調整能力がある人が向いていると前述しました。意匠設計や構造設計部門との調整は必須であり、それぞれの部署が自分の都合で仕事を進めようとすると、その調整が難しくなることがあります。
他部門の事情も踏まえつつ、最終的に同じ方向を向いて仕事をしていくためには、高度なコミュニケーション能力が必須です。人と人の間で大きなストレスを感じることもあるでしょう。しかし、コミュニケーション能力はどのような職種であっても必要なスキルです。今はきつく感じても、将来転職したり、独立したりするときにきっと役に立でしょう。
5.キャリアアップが難しい
設備設計の仕事に役立つ資格は、難易度の高いものが多く、仕事をしながら勉強するのは本当に大変です。例えば、一級建築士は学科試験の合格率が15〜20%前後と難易度の高い資格です。仕事と試験勉強を両立するなら、休日も勉強時間を作るなどして時間のやりくりをしないと、合格は難しいでしょう。
ただし、それだけ難易度の高い資格を取得すれば、仕事の幅が広がることはいうまでもありません。最新の法令の関する知識も得られますし、勉強を続けていくきっかけにもなります。出世競争の激しい分野でありキャリアアップは楽ではありませんが、向上心を持って学び続ければ、実を結ぶ可能性は高いです。
6.常に納期に追われていて落ち着かない
案件が重なっているときは、納期に追われて辛いと感じることもあると思います。設備設計の仕事は意匠設計や構造設計が終わらないとできないため、他部署の仕事の遅れのしわ寄せを受けることも多く、自分の努力だけではどうにもならない部分があります。
常に納期に追われ、平日の残業、ときには休日出勤をしないと間に合わないというときもあるでしょう。やってもやっても仕事が終わらないとストレスが溜まるかもしれません。
だからこそ、限られた時間でどう仕事を片付けていくのか、創意工夫ができるという面もあります。時間をやりくりし、スケジュール通りに仕事を終えられたときには、大きな達成感を得られるでしょう。何があってもスピーディに仕事を進められるという自信もつきます。
設備設計がきついときの対処法は3つ
設備設計の仕事がきついと感じたときの対処法について、3つご紹介します。
1.まずは先輩や上司に相談する
辛い、仕事がきついと思う気持ちを一人で抱え込んではいけません。周りの人に相談しましょう。信頼できる先輩や上司に話をしてアドバイスをもらいます。きっとみな同じような経験をしているはずですから、どのように乗り越えてきたのか、体験談を聞くことで解決の糸口が見つかるでしょう。
また、仕事そのものではなく、人間関係や職場の環境で悩んでいる人もいると思います。その場合も、1人で悩まず、相談しやすい人に話してみてください。人に話すことによって自分とは違う視点を得ることができるので、改善策が見つかる可能性があります。
2.自ら学ぶ姿勢をみせる
経験を積み、スキルを高めることが仕事の行き詰まりを解消することがあります。自分のスキルのなさに落ち込んだり、ダメ出しばかりされて仕事が嫌になってしまったりしたときには、今の自分にできることは何か、考えてみてください。
例えば、過去に起きたトラブルを洗い出し、今のうちに対策が取れないか考えてみます。過去の担当者がいれば、話を聞くのも参考になるでしょう。また、設備設計が仕事のやり方が甘いのだとこちらの責任にされないために、コンサルに相談して業務の問題点を洗い出してもらうのも一つの方法です。
設計の仕事が机上の空論にならないよう、現場にも顔を出し、作業をしている人の話をよく聞くことも大切です。現場での困りごとを直接自分の目で見て、話を聞くことによって、生きた知識を得られる上に現場からの信頼が厚くなるでしょう。他部署の知識を身につけることは、今後の仕事の幅を広げるためにも必要なことです。
3.他の会社に転職する
どうしても今の会社での設備設計の仕事がきついと感じるなら、転職も視野に入れてみてください。職場の環境を変えることで解決することもあります。会社の空気や人間関係は、どうしても合う、合わないがあります。きついと感じるところでがんばり続けるよりも、会社を変えることであっさり状況が変わる人は多いのです。
設備設計は専門性が高く、比較的転職しやすい職種です。特に勤続年数が長く、しっかりと経験を積んできた人は、他の会社でも重宝されるでしょう。先ほどご紹介したような資格を持っていれば、設備設計以外の仕事でも転職は可能です。
設備設計には魅力もたくさんある
設備設計の仕事はきついことばかりではありません。メリットについても説明します。
資格取得や経験年数によって年収アップが可能
設備設計の仕事は、経験を積んでいくほど年収も上がる傾向にあります。もともと高収入な仕事ではありますが、資格を取得することでさらなる年収アップが見込めるため、スキルを身につけながらさらに年収を上げていくことが可能です。
また、より年収を高くしたいなら、大手企業への転職という方法もあります。同じ仕事内容でも企業の規模によって収入に差が出ますので、より高い年収を目指すなら、大手企業への転職も検討しましょう。
将来性がある職業である
設備設計は、新築の建物だけでなく、既存の建物の改築・改修工事でも必要となる仕事です。つまり、建物がある限り、需要が途切れないということです。高度な知識を必要とする仕事ですから誰でもなれる職種ではないですし、常に人材不足ですので、新卒・中途問わず需要があります。
また、今後は、2015年(平成27年)7月に施行された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」によって、エネルギー消費性能の高い建物を建てるよう努めなければならないとされました。省エネに配慮した家を建てるには、意匠や構造よりも設備設計が何より大事になってきますから、この法令によって、設備設計の重要性が増したことはいうまでもありません。
以上の理由から、設備設計の仕事は非常に将来性の高い仕事だといえます。
まとめ
設備設計の仕事がきついといわれる理由は、高度な専門性が必要であること以外にも、競合他社との競争や他部署との調整、案件が重なると納期に追われるなどの理由があります。しかし、本当にきついかどうかは、その人次第であるともいえます。
どのような職業にもメリット、デメリットはあり、物事の捉え方は人それぞれです。設備設計ならではのやりがいや魅力もあります。
また、本記事では設備設計の仕事がきついと感じたときの対処法についてもご紹介しました。辛いときには1人で抱え込まず先輩や上司に相談したり、今の自分のスキルを見直したりすることにより、きっと乗り越えていけるはずです。転職して職場の環境を変えるという選択肢もあります。
設備設計の仕事は、需要も将来性も高く、努力次第でどんどん年収を上げていける魅力的な仕事でもあります。仕事のきつさだけでなく、ぜひその魅力に目を向けてみてください。