デジタルエンジニアリングって何?役割や必要性、人材に求められるスキルについて解説
デジタルエンジニアリングとは、コンピュータを使って製品を設計し、テストする新しいモノづくりの方法です。従来のやり方では、時間とコストがかかり、失敗のリスクも高くなりがちでした。
しかし、3D CADやシミュレーションソフトなどのデジタル技術を活用すれば、より早く、安く、確実に製品を開発できます。
この記事では、デジタルエンジニアリングの概要から、その必要性、求められるスキルまでを分かりやすく解説します。モノづくりの未来に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。
デジタルエンジニアリングとは
デジタルエンジニアリングとは、デジタル技術を使って新しいモノづくりを行うことです。主に使われるツールには、3D CAD(Computer Aided Design)という立体的な設計ソフト、CAE(Computer Aided Engineering)というシミュレーションソフト、3Dプリンターなどがあります。
これらを使えば、実際にモノを作る前にコンピュータ上で製品の形や性能をシミュレーションできます。最初から実物を作るには時間やコストがかかり失敗するリスクも高まりますが、そこを効率化できるのがデジタルエンジニアリングのメリットです。
例えば、3D CADで製品の形を描き、CAEでその強度をチェックし、問題がなければ3Dプリンターで試作品を作る、といった流れです。こうすることで従来の方法より早く、安く、品質の良い製品を作れます。
また、デジタルデータを扱うので離れた場所にいる人とも簡単に情報を共有でき、グローバルな協力体制を築きやすいのも特徴です。
最近では、製造業だけでなく建築、医療、教育など多岐にわたる分野でも使われ始めています。建物の設計や手術の計画、教材の作成などにも活用されています。
デジタルエンジニアリングの役割
デジタルエンジニアリングの主な役割は、次の通りです。
- 設計の効率化
- 品質の向上
- コスト削減
- イノベーション創出
3D CADを使えば、複雑な形状も簡単に描けます。シミュレーションソフトを使って、製品が壊れないか事前にチェックできるため、品質も良くなります。
さらに、コストを減らすことも可能です。実際に作る前にコンピューターで確認するので、手戻りが少なくなるためです。他にも、設計データを管理したり、製造部門とスムーズに情報をやりとりしたりする役割もあります。
こうした取り組みが新しい製品やサービスを生み出す、イノベーションのきっかけにもなっているのです。
具体的に以下のような業務を、デジタルエンジニアリングで行います。
- 3D CADソフトウェアを用いた製品設計
- シミュレーションソフトウェアを用いた性能検証
- 設計データの管理
- 製造データとの連携
- 新しいデジタルツールの導入・開発
デジタルエンジニアリングの必要性
ではなぜ、デジタルエンジニアリングの必要性が高まりつつあるのでしょうか。
その理由は、主に以下3点です。
- グローバルな競争が激化している
- 顧客ニーズが多様化している
- サプライチェーンが複雑化している
グローバルな競争が激化している
今や、国内の企業と競争するだけでなく、ITやAIの発展によってグローバルな競争が激化しています。そのため、より早く、より安く、より良い製品を作ることが求められています。
デジタルエンジニアリングを使えば、製品開発の時間を短縮しコストも削減できるでしょう。また、世界中の開発チームがデータを共有し、24時間体制で開発を進めることも可能です。
デジタルエンジニアリングはグローバル競争に勝ち抜くために欠かせない方法となっています。
顧客ニーズが多様化している
顧客のニーズは以前よりも複雑になっており、一人ひとりに合わせた製品や、すぐに届けてほしいという要望が増えています。デジタルエンジニアリングを使えば、こうした多様なニーズに対応できます。
例えば、3D CADを使って製品の設計を簡単に変更したり、シミュレーションで性能を確認したりできるので、カスタマイズ製品も効率よく作れます。
また、デジタルデータを活用することで、注文から納品までの時間も短縮できます。こうして、顧客一人ひとりの細かな要望にもスピーディに応えられるようになります。
サプライチェーンが複雑化している
現代では、一つの製品を作るのに、世界中の企業が関わるようになっています。部品の調達から製造、組み立て、配送まで、さまざまな国の企業が連携して製品を作り上げています。こうしたサプライチェーンはより複雑化しているのです。
そのため、企業や国境の壁を越えて、正しい情報をスピーディに共有する必要があります。デジタルエンジニアリングを使えば、設計データや製造情報などを手軽に、安全に共有できます。
世界中に広がるサプライチェーンでもスムーズに協力して製品を作ることが可能です。また、問題が発生した際も、すぐに情報を共有して対応できるので、製品の品質向上にもつながるでしょう。
デジタルエンジニアリング人材に求められるスキル
デジタルエンジニアリング人材には、さまざまなスキルが求められます。
ここでは、特に重要なスキルをいくつか紹介します。
プログラミングスキル
デジタルエンジニアリングにおいて、プログラミングスキルは基本中の基本です。
Python、C++、Javaといったプログラミング言語を使いこなせることが求められます。設計ツールやシミュレーションソフト、データ解析ツールなどを開発したり、既存のツールをカスタマイズしたりします。
具体的には、3D CADソフトの機能を拡張するプラグインを作ったり、膨大な設計データを処理するプログラムを書いたりすることが可能です。
このようにプログラミングスキルは製品開発のあらゆる場面で活躍し、デジタルエンジニアリングによる成果を向上させるでしょう。
コンピュータサイエンスの知識
コンピュータサイエンスとは、コンピュータの仕組みや使い方を研究する学問です。簡単に言えば、コンピュータに関する幅広い知識を扱う分野です。
デジタルエンジニアリングにおいては、アルゴリズム、データ構造、コンピュータアーキテクチャなど、コンピュータの仕組みに関する深い理解が求められます。
この知識があると、3D CADソフトの性能を向上させるために最適なアルゴリズムを実装したり、シミュレーション結果を高速に処理するためのデータ構造を設計したりすることができます。
3D CADスキル
3D CADスキルは、デジタルエンジニアリングにおいて欠かせないスキルです。SolidWorks、CATIAなどの3D CADソフトウェアを使いこなし、3次元で設計する必要があるためです。
このスキルを使えば、例えば、自動車のボディを設計する際に、空力性能を踏まえた曲面を作成したり、部品同士の干渉をチェックしたりすることが可能です。
また、設計変更にも対応でき、試作品を作る前に設計案を比較できるでしょう。製品の細かな形を検討するために欠かせません。
3D CADデータは他のツールとも連携でき、CAE解析で製品の強度を調べたり、CNC加工で正確な部品を作ったり、3Dプリンターで模型を作ったりするのにも役立ちます。
CAEスキル
CAEスキルは、製品がどのくらい良く働くか、どのくらい長持ちするかを、実際に作る前に確かめるために必要です。ANSYS、Abaqusなどのソフトウェアを使って、構造解析、流体解析、熱解析などのシミュレーションを行います。
本物の製品を作る前に、さまざまな状況下での製品の動きを予想できます。その中で、最適な設計を見つけられるでしょう。
例えば、橋を設計するときは強度解析で安全性を確かめたり、スマホを設計するときは熱解析で熱くなりすぎる問題を解決したりします。
また「マルチフィジックス解析」という、いくつもの現象を同時に考える方法も使え、より現実に近い条件でシミュレーションを行えます。
データサイエンススキル
データサイエンススキルとは、統計学、機械学習、ディープラーニングなどの知識を活用して、膨大なデータを収集、分析、製品に活かすための情報を見つけることです。
例えば、製品の使用データを分析して故障の予兆を見つけたり、顧客の声を解析して次世代製品の方向性を決めたりすることができます。
また、画像認識技術を用いて製造ラインの不良品を自動検出したり、自然言語処理で大量のテキストデータから必要な情報を抽出したりすることもできます。
データサイエンススキルによって、データドリブンに、より高品質で市場ニーズに合った製品を生み出すことができるのです。
IoTスキル
IoT(Internet of Things)スキルは、製品をインターネットにつなげて新たな価値を生み出すものです。
センサー技術、ネットワーク通信、クラウドコンピューティングなどの知識を組み合わせて、製品にデータ収集・分析機能を組み込みます。
例えば、工作機械にセンサーを取り付けて稼働状況をリアルタイムで監視し、予防保全を行うシステムを構築することも可能です。
家電製品をネットワークにつないで遠隔操作ができるようになったり、使用状況に基づいて最適な動作を自動で行うスマート製品を開発したりすることもできます。
さらに、製品から集めたデータを分析して、顧客の使用パターンを把握し、製品の改良や新サービス開発に活かすこともできるでしょう。
英語力
最新の技術情報や研究論文の多くは英語で発表されるため、英語で読み書きできる能力が求められます。
例えば、海外の学術誌や技術ブログから最新のエンジニアリング手法を学んだり、国際会議で自社の技術成果を発表したりする場面で活躍するでしょう。
また、多国籍チームでのプロジェクト遂行や、海外の取引先とのコミュニケーションにも英語力が必要です。
技術仕様書や報告書を英語で作成したり、オンライン会議で海外のエンジニアと意見交換したりすることも、企業によっては必要となるでしょう。
まとめ
デジタルエンジニアリングは、コンピューターを活用した新しいモノづくりの方法です。
3D CADやシミュレーションソフトを使うことで、製品開発の時間短縮とコスト削減が可能になります。さらに、グローバル競争の激化や顧客ニーズの多様化に対応するため、その重要性が高まっています。
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