生産技術 職の平均年収は?仕事内容や必要なスキルまで解説
製造業において、多数の部署と連携を取り、生産効率をアップさせるためにあらゆる視点から改善を試みる生産技術職。仕事の内容が幅広いことから、どのような仕事をしているのかわからない方も多いでしょう。
本記事では、生産技術職の仕事内容をわかりやすく紹介します。また、年収や目指す方法、キャリアアップに必要なスキル・資格などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
生産技術職とは?
生産技術職とは、製造業において生産性の向上や効率化を図る職種です。ここでは業務内容と平均年収、製造技術やプロセス開発との違いについて解説します。
業務内容:「生産」と「管理」
生産技術職は主に、生産工程に関わる計画立案や管理、改善活動を中心とした仕事です。
生産工程に関わる生産計画の管理は、製造業において土台となる業務です。幅広い生産ラインを改善する機会があるため、あらゆる視点からの改善にアイデアを活かすことができ、実現できたときは強い達成感を味わえるでしょう。
平均年収:400~560万円
生産技術職の平均年収は400~560万円といわれています。各地域別平均で見ていくと平均年収に幅がありますが、給与水準の低い都道府県であっても平均年収より高い水準にあります。
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、全業種の平均年収は約377万円です。平均年収以上の収入が期待できる生産技術職は、ニーズがあり将来性の高い職種だといえるでしょう。
製造技術やプロセス開発との違い
生産に関わる広い部分をこなすのが生産技術、製造工程に焦点を絞った仕事をするのが製造技術やプロセス開発、という違いがあります。
生産技術は、安定した生産体制で生産を行うことを目的とした管理や改善などが日々の業務です。製造技術はより製造工程に焦点を当て、工程ごとの手間が少なく高品質な製品づくりに適切な方法を検討します。プロセス開発は生産技術と連携して、生産工程を最適にするための開発や改善を行います。
生産技術職の仕事内容
生産技術職は製造現場において、高い水準のQCD(品質、価格、納期)で製品の量産体制を作らなければなりません。そのため、仕事内容は多岐に渡ります。生産技術職ではどのような仕事があるのか見ていきましょう。
生産ラインの設計や管理を行う
生産技術では資本生産性や労働生産性のバランスを見ながら、効率的な生産ラインの設計や管理を行います。生産形態によっては生産効率アップを見込んで生産ラインのレイアウトを変更する場合もあるでしょう。
生産ラインの設計では、製品の種類や量、工程などを考慮して、ラインをどのように設計するかを決定します。生産ラインには、材料の運搬や加工、組み立て、検査、包装などの工程が含まれるため、これらの工程をどのように配置し、どのような機械や装置を使うかを決定するのが主な仕事です。
生産ラインの管理では、ラインの運用状況を把握し、必要に応じて改善を行うことが求められます。ライン全体での生産効率や品質を維持するために、機械の保守や点検、作業者の教育やトレーニングなどを行います。また、ライン上で生じる問題やトラブルに対して適切な対応をすることも重要な役割です。
必要な設備の導入を行う
生産技術では現場の意見をヒアリングし、状況を把握したうえで必要な設備導入を経営陣に提案する場合もあります。最終的に経営者の投資判断により導入の有無が決定しますが、生産技術職の技術的な知見や提案力がなければ設備導入に至ることは難しくなるでしょう。
具体的には、製品の種類や量、生産プロセスなどを分析して、どのような設備が必要かを決定します。その後、選定した設備の性能や価格、メンテナンスのしやすさなどを比較し、最適な設備を選びます。
次に検討するのが、導入する設備の設置場所や接続方法、電気・水道などの確保です。設備の導入には大きなコストがかかるため、予算や納期の管理も重要です。また、設備導入後には、メンテナンスやトラブルシューティングなども行われます。
生産体制や工程の効率化を図る
生産技術では、生産体制や工程の効率化を図ります。現在の生産体制において課題を把握し、生産の課題を解決することで、より効率的な生産体制や工程へと改善されます。
具体的には、生産ラインにおける工程や作業内容、製品の流れなどを詳細に分析し、ボトルネックとなっている箇所や、無駄が発生している箇所を特定するのが主な目的です。特定された課題に対して、改善策を検討します。例えば、工程の見直しや自動化、設備の更新・改善、作業者のトレーニングなどです。
生産技術職を目指す方法
生産技術職を目指す方法はさまざまです。ここでは3つの方法を紹介します。
企業の採用試験を受ける
企業に入社するためには、採用試験を受けて採用を目指します。生産技術職も例外ではなく。基本的には採用試験が必要です。
採用試験では、生産技術において必要なスキルがあることをアピールできると良いでしょう。必要なスキルがない場合、自身の志望動機や他のアピールポイントを深堀りすることをおすすめします。
技術研修や勤務で経験を重ねる
技術職の場合、実務的なスキルが必要になることが多いです。技術研修や勤務の中でスキルを培うのも選択肢の一つです。
技術研修には、大学や専門学校などで学ぶことができる専門的な教育や、企業が提供する研修などがあります。専門的な教育を受けることで、生産技術職に必要な知識や技術を習得することができるでしょう。
また、勤務で経験を重ねることも生産技術職にとって非常に重要な要素です。正社員でなくても実際に生産現場で働くことで、生産ラインの仕組みや工程の流れ、製品の品質管理など、実務面での知識や技術を身につけることができます。
理系学部の大学や大学院で学ぶ
理系学部の大学や大学院で学ぶことで生産技術職を目指す方法もあります。専門的な知識を身につけておくことで採用試験において、入社後の成果を期待できるようなアピールもできるでしょう。
例えば、機械工学や電気電子工学、化学工学などの専門分野を学ぶことで、生産ラインの設計や生産プロセスの最適化に必要な技術や知識を習得することができます。また、物理学や数学などの基礎科目も学ぶことができるため、生産技術職に必要な数学的な計算や、製品の品質管理に必要な物理学的な知識なども身につけることができます。
生産技術職にとって重要なスキル
生産技術職では仕事で活用できるスキルが幅広く、とくに重要とされるスキルを見落としがちです。生産技術職にとってどのようなスキルが重要とされているのでしょうか。
以下の項目から重要とされるスキルについて紹介します。
コミュニケーションスキル
生産技術職では、多くの場合、チームで仕事に取り組みます。コミュニケーションスキルが高ければ、他のメンバーと円滑にコミュニケーションを取り、プロジェクトを効率的に進めることができます。
また、多数の部署と連携を取る場面や、設備導入の提案は経営陣への提案していく必要もあるため、高いコミュニケーションスキルが求められるでしょう。
設計や解析スキル
生産技術職では、製品や設備の設計、生産工程の最適化など、多くの場面でコンピューターを使った設計や解析が必要になります。
企業によりますが、具体的にはCADやCAMなどの設計ソフトや、Excelなどの表計算ソフトに関するスキルが求められる場合が多々あるでしょう。
課題発見・解決スキル
生産技術職では、生産ラインのトラブルシューティングや、改善提案などの課題発見・解決スキルが求められます。
問題点を早期に発見し、迅速かつ正確に解決するためには、専門知識や技術力だけでなく、論理的思考や判断力、クリエイティブな発想力も必要です。
生産技術職におすすめの資格
生産技術職は多様なスキルを活かせる仕事であり、取得メリットのある資格も多岐に渡ります。ここではおすすめの資格をいくつか紹介します。
生産技術者マネジメント認定
生産技術者マネジメント認定とは生産技術分野のマネジメント知識を証明する資格です。業務経験5〜10年向けのCPE-B級と、業務経験10年超向けのCPE-A級に分けられています。
CPE-B級の合格率は45〜50%ほどで「生産技術者マネジメントガイド」から出題されており、資格取得難易度は高くないといえるでしょう。
CAD利用技術者試験
CAD利用者技術試験とはCADに関する知識と技術を証明する資格です。試験は建築分野か機械分野で2次元または3次元のそれぞれ1級、2級、CAD基礎から選択できます。
どの等級を受験するかによって難易度は変わります。2級、CAD基礎までであれば未経験でも過去問を繰り返し学習していれば合格を目指すことは難しくありません。
情報処理技術者試験
情報処理技術者試験とは情報処理技術者としての知識や技能を証明する資格の総称です。
ITパスポート試験や基本情報者試験、その上位資格である応用情報者試験などが当てはまります。どれも知っておくと良い知識は豊富です。合格難易度は上位になるほど難しくなります。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士とは建設現場における管理やあらゆる設備に関する知識を証明する資格です。生産技術職では設備に関する技術がマッチした内容となります。
合格率は約40〜60%と年によったばらつきはあるものの、過去問を繰り返し学習することで合格を目指せる資格です。
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)とはWordやExcelなどオフィスソフトのスキルを証明する資格です。スペシャリストレベルまたは上位のエキスパートレベルの資格があり、とくにWordやExcelを使いこなせると業務効率が飛躍的にアップするでしょう。
合格率は約80%であり、資格取得難易度は高くないといえます。
機械保全技能検定
機械保全技能検定とは技能を証明する数ある国家検定のひとつであり、機械設備のメンテナンスにおける幅広い知識が証明できる資格です。試験は特級、1級、2級、3級という区分で、3級であれば難易度は低く合格率が約70%あります。
マークシート方式のため、過去問を繰り返し学習することで合格を目指せます。
TOEIC
TOEICとは英語のコミュニケーション能力を証明する国際資格です。試験に合否はなくスコアによる評価のため学習して身についた英語力がスコアにより確認できます。
高いスコアを取ることができれば、英語能力を評価され海外勤務や外資系などの転職に有利になるでしょう。
求人募集の傾向と今後の需要
生産技術職を希望する場合、求人の傾向と今後の需要は気になるポイントです。また今後のライフプランとして海外進出を考えている方も少なくないでしょう。生産技術職の採用ニーズや海外進出についても説明します。
生産技術職の採用ニーズは高まっている
生産技術職の採用ニーズは企業利益アップを目指すDX化(デジタル技術を駆使した効率化)により年々高まっています。DX化に伴って生産技術職の改善業務にデジタルを駆使する場面もあり、求められるスキルも多様化しているといえます。
生産技術職に求められるニーズを満たすスキルがあれば希望の会社にアピールすることが容易になり採用の確率を高められるでしょう。
生産技術職では多様なスキルが役立ちます。前提として、全体を見渡し、状況を把握したうえで改善策を講じる仕事であるため、協調性やリーダーシップなどを兼ね備えた人材が求められています。
経験と知識を重ねたら海外進出も夢ではない
生産技術職では知識と経験を重ねることで海外進出も夢ではありません。ものづくりをしている多くの企業で生産技術職は採用されており、国内だけでなく海外に進出している企業も多く見られるため、経験と知識があれば海外で活躍できる場合もあります。
まとめ
生産技術職はやりがいもあり、年収や将来性も平均より高い職業です。仕事の内容は多岐にわたりますが、さまざまな方法で生産技術職になることができます。
生産技術職になりたい場合、大切なのは「どのような人材が求められているのか」を把握することです。本記事で紹介したスキルや資格を身に付けて、生産技術職を目指してみましょう。