機械設計の年収は?給料が低いって本当?仕事内容や必要な資格も紹介
機械設計がどのような仕事か調べていると「どのくらい稼げる?」と年収が気になる人は多いでしょう。そこで本記事では、機械設計の平均年収と初任給につ いて紹介します。
機械設計の年収についてわかると、今後の就職・転職先を考えるうえで、ひとつの判断基準になるでしょう。これから機械設計について学ぼうか悩んでいる学生、就職・転職を考えている人はぜひ参考にしてください。
機械設計の平均年収や初任給
機械設計の平均年収や初任給は、下記のとおりです。
● 機械設計の平均年収は450~550万円ほど
● 初任給は20万円前後
まずは平均年収の実情を見ていきましょう。
機械設計の平均年収は450~550万円ほど
各求人サイトや厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査の情報を集計すると、機械設計の平均年収は450万~610万円ほどです。下記のとおり、製造業の職業における技術系の年収を比較すると、機械設計はやや年収が高いとされています。
職業 | 機械設計 | CADオペレーター | システムエンジニア(組み込み、IoT) |
平均年収 | 450~610万円ほど | 440~460万円 | 450~550万円 |
機械設計のなかでも、自動車の開発や設計を行う自動車技術者は、平均年収が高い傾向にあります。
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、自動車技術者の平均年収は、約610万円です。ただし、なかには残業代があってはじめて年収450万円を超える企業もあります。
初任給は20万円前後
機械設計の初任給は、20万円前後 です。厚生労働省の令和4年3月新規学校卒業者の求人初任給調査結果によると、大卒の求人初任給は平均21万円 でした。
そのため、20万円前後は初任給として平均的な金額です。
機械設計の仕事内容
機械設計とは、工業用の機械から身近なテレビやスマートフォンまで、さまざまな機械を設計する仕事です。仕事内容は、主に下記の順におこなわれます。
1. 概念設計
2. 基本設計
3. 詳細設計
4. 精算設計
機械設計の仕事を知り、進路決定や就職活動に活かしましょう。
概念設計
顧客や市場のニーズをもとに決定した製品のコンセプト(概念)を軸に、構造や仕様を決めていきます。概念設計の具体例は、下記のとおりです。
● 軽量化が求められているから、この部品の材質は樹脂にしよう
● 環境への配慮が求められているから、再生資源を活用したい
概念設計で書く大まかな部分のみを記したラフ案は、手書きの場合がほとんどです。
基本設計
基本設計では、概念設計で決めた構造や仕様をもとに、設計図を書いていきます。作図する際はパソコンを使い、CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアを使う現場が多いです。
また、基本設計の際に強度計算もおこないます。強度計算とは、一定以上の負荷がかかっても、部品が安全に使えるかどうかを確認するためにおこなわれ、自動計算やシミュレーションソフトが使われるケースも少なくありません。
詳細設計
詳細設計では、基本設計で起こした設計図をもとに、実際に製品を製造できる段階まで進めます。つまり、生産前に仕様や構造を変更できる最終段階です。
強度・コスト・安全性などの詳細を詰め、問題があれば都度設計し直します。
生産設計
生産設計では、工場で生産するために必要な図面を起こします。部品の寸法・材質だけでなく、加工や組み立てなどの指示を細かく記載します。
機械設計の年収を左右する5つの要因
機械設計の年収には幅があり、主に5つの要因が機械設計の年収を左右します。
● 会社の規模や給与体系
● 従業員の年齢
● 働く会社の業種
● 機械設計の職業
● 資格の有無
機械設計の仕事に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
会社の規模や給与体系
機械設計の年収は、会社の規模や給与体系によって大きく変化します。厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、従業員1,000人以上と10~99人の企業では、月収で4万円以上のも差が出ています。
規模 | 1,000人以上 | 100~999人 | 10~99人 |
平均所定内労働時間/月(残業・休日出勤なし) | 162時間 | 166時間 | 169時間 |
所定内給与額/月(残業代・賞与除いた月収のこと) | 36万6200円 | 32万2200円 | 32万6900円 |
10~99人規模の企業は、1,000人以上の企業より1ヶ月の所定内労働時間が7時間少ないにもかかわらず、4万円以上も少ない結果が出ています。また、基本給にみなし残業が含まれているのか、資格手当が付くのかなど、給与体系は企業によって異なります。
従業員の年齢
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査によると、20~54歳までは年収が増加傾向にあります。
年齢 | 年収 |
20~24歳 | 359万3400円 |
25~29歳 | 469万4000円 |
30~34歳 | 548万2400円 |
35~39歳 | 647万9400円 |
40~44歳 | 658万9400円 |
45~49歳 | 686万5400円 |
50~54歳 | 740万6200円 |
55~59歳 | 728万8000円 |
上記の表を見ると、20~24歳と25~29歳の間に約110万円年収がアップしており、この年代の伸び率が最も高いとわかります。仕事に慣れ、技術力が上がっていく時期のため、能力に比例して年収がアップするのでしょう。
ピークの年収は740万6200円で、50~54歳は管理職に就く人が増えるからだと考えられます。
働く会社の業種
機械設計は働く会社の業種によって、年収が異なります。
業種 | 年収 |
一般機械(建設用機器・飛行機・自動車など) | 600~700万円ほど |
重電機器(発電機や変圧器などの大型の電気機器) | 700~1000万円ほど |
IT・精密機器 | 700~800万円ほど |
機械設計は重電機器の年収が高く、一般機械は3業種のなかでも低い結果となりました。重電機器とIT・精密機器のスキルに役立つ資格があり、取得すると年収に反映されると考えられます。
資格の有無
機械設計に関わる資格を取得していると、年収が高くなる傾向にあります。企業によっては、特定の資格を取得すると資格手当が付くようになっており、給与に反映されることも少なくありません。
例えば重電機器(発電機や変圧器などの大型の電気機器)を取り扱う業種では、危険物を取り扱う機械を設計するため、危険物取扱試験を取得すると、資格手当が出る場合があります。
機械設計の年収アップにつながるスキル
機械設計の年収アップにつながる主なスキルは、下記のとおりです。
● ビジネススキル
● 工学に関する知識やスキル
● 外国語のスキル
スキルごとに具体的な項目があるため、詳しく見ていきましょう。
ビジネススキル
年収アップにつなげるためには、具体的に下記の経験や能力が必要になります。
● プロジェクトマネジメントやリーダーシップのスキル
● 他の技術者とのコミュニケーション能力
● 新しい技術やトレンドについて学習する意欲と能力
内容によっては、経験年数が問われる場合もありますが、コミュニケーション能力や学習はどのような世代でも取り組めます。
プロジェクトマネジメントやリーダーシップのスキル
ビジネススキルのなかでも、プロジェクトマネジメントやリーダーシップは、複雑なプロジェクトを遂行するために必要です。年収をアップさせるためには、難易度の高いプロジェクトに参加しなければなりません。
機械設計者がプロジェクトマネジメントやリーダーシップのスキルを持っている場合、より高度なプロジェクトをリードできます。つまり、チームをまとめたり、指示を出したりする立場になれるようなスキルがあれば、年収がアップするわけです。
他の技術者とのコミュニケーション能力
他の技術者とのコミュニケーションがうまくできれば、プロジェクトの生産性アップに役立ちます。機械設計は、チームでおこなわれる場合もあり、大きなプロジェクトになるほど参加人数が増えます。
そこでプロジェクトの生産性が高まれば、機械設計者の評価が上がり、年収アップにもつながるでしょう。
新しい技術やトレンドについて学習する意欲と能力
新しい技術やトレンドについて学習し、その能力を活かせれば、年収が上がるでしょう。技術は常に進歩しているため、機械設計者が最新の技術や業界のトレンドについて、常に学び続けることが重要です。
新しい技術やトレンドに精通している機械設計者は最新のツールや芸術を活用して設計できるため、重宝されます。また、学習に前向きな姿勢は、人事評価にもつながり、年収アップにも影響するでしょう。
工学に関する知識やスキル
年収アップにつながる工業に関する知識やスキルとは、具体的に下記のとおりです。
● CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアのスキル
● 3DプリンターやCNCマシンのスキル
● 3DプリンターやCNCマシンのスキル
どのスキルも、機械設計において必須といっても過言ではありません。
CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアのスキル
CADソフトウェアのスキルは機械設計の仕事内容のうち、詳細設計で必要となります。機械設計の作図では、CADソフトウェアが用いられる場合がほとんどだからです。
3Dモデルの作成・編集や部品の接続方法など、多くのタスクがCAD上でおこなわれます。そのためCADの高度なスキルを持つ設計者は生産性が高く、高い報酬を得られる傾向にあります。
3DプリンターやCNCマシンのスキル
3DプリンターやCNCマシンは、CADソフトウェアで設計した部品・製品を実際に作成するうえで、重要な役割を担っています。3Dプリンターとは、CADソフトウェアで作図した製品を実際と同じ、もしくは縮小版で形にするものです。CNCマシンは工作機械の一種で、金属系の製品を加工する際に用います。
これらの機械を正確に操作できる機械設計者は、設計から製造までの生産プロセスを理解しているとされ、報酬の高い仕事につながります。
熱力学、流体力学、材料科学などの知識
機械設計には、熱力学、流体力学、材料科学などの基本的な工学知識が必要になります。これらの分野に熟練した設計者は、より高度なプロジェクトに取り組めるため、年収アップにつながるわけです。
外国語のスキル
機械設計はグローバル市場でおこなわれており、外国語のスキルが必要になります。
また英語は、機械設計において共通言語です。機械設計者が英語力や英語を用いたコミュニケーションスキルを向上させると、国際的なプロジェクトに参加できるようになります。国際的なプロジェクトは規模も大きくなる傾向にあるため、報酬が高くなるでしょう。
機械設計の年収アップを目指す3つの方法
機械設計者の年収アップを目指すためには、3つの方法があります。
● 実績と経験を重ねる
● キャリアアップを狙う
● スキルアップや資格取得を目指す
具体的な方法を知り、機械設計者として働いた場合のキャリアをイメージしてみましょう。
実績と経験を重ねる
機械設計者として年収アップを目指すのであれば、実績と経験を重ねましょう。実績は、どのようなプロジェクトで評価されたのかを具体的に説明でき、他のプロジェクトにも活かせるような内容であるかを重視してください。より明確な実績としては、特許の取得があります。
経験を積むためには、生産技術・加工・電気制御・ソフトウェアなど、機械設計をするうえで関わるさまざまな分野への理解が重要です。そのため、プロジェクトに参加する際は、積極的に各分野と関わりましょう。機械設計の際、分野ごとの目線でどのような部分に気をつければよいのかわかっていれば、機械設計のスキルアップにつながります。
キャリアアップを狙う
機械設計で年収アップするためには、キャリアアップを狙いましょう。キャリアアップとは、高い能力を身につけ、社会的地位のある経歴(役職)に就くことです。求められる能力やスキルが上がるため、年収の増加が見込めます。
会社内だけでなく、転職によるキャリアアップの方法もひとつです。例えば、機械設計の知識を活かせるマネージャー職に転職すれば、キャリアアップと同時に年収も上がるでしょう。
スキルアップや資格取得を目指す
機械設計の年収アップには、スキルアップや資格取得が不可欠です。コミュニケーション能力や機械設計の技術力など、さまざまなスキルを身に付けましょう。
また、業務に役立つ資格を取得すれば、自分に付加価値を付けられます。自分に付加価値があれば自己アピールするポイントになり、会社からの評価も上がるはずです。企業によっては、特定の資格を取得すると資格手当が付いたり、キャリアアップにつながったりする場合もあります。
年収アップにつながる5つの資格
機械設計の年収アップにつながる主な資格は、下記のとおりです。
● 技術士
● 機械設計技術者試験
● 機械・プラント製図技能士
● CAD利用技術者試験
● 危険物取扱試験
それぞれの資格がどのような内容なのかや、役立つ業務について解説します。
技術士
技術士とは、さまざまな技術の専門家としてのスキルを問う資格です。機械設計は、そのなかでも機械部門の技術士資格が該当します。
試験科目は、基礎科目・適性科目・専門科目の3科目で、基礎科目と適性科目はどの部門も共通の内容です。専門科目では、機械部門にかかわる問題が出題されます。
令和4年度技術士第二次試験統計によると、技術士機械部門の合格率は17.5% (令和4年度)です。
合格率は低く、難易度の高い試験であるとわかります。そのため技術士機械部門の資格を取得していると、より高度なプロジェクトに参加できるでしょう。
機械設計技術者試験
機械設計技術者試験とは、一般社団法人「日本機械設計工業会」が運営する民間資格です。製品に必要な原料・材料の選定、作図の方法など、機械設計をするうえで必要な業務に活かせます。
3~1級までレベルがあり、各レベルの合格率(令和4年度)は下記のとおりです。
● 3級:38.1%
● 2級:42.6%
● 1級:33.1%
合格者はおおよそ5人に2人のため、難易度は中程度でしょう。機械設計技術者の業務に直接活かせるため、機械設計技術者試験はおすすめです。
機械・プラント製図技能士
機械・プラント製図技能士とは、厚生労働省・中央職業能力開発協会が運営する国家資格です。機械やプラント(工場設備)を作図するための、技術や能力を認定します。試験内容は、機械設計に関する知識が試される学科試験に加え、CADを使った作図を中心とした実技試験です。
レベルは3~1級まであり、各レベルを統計した合格率(令和3年度)は約30% です。年によっては合格率が下がるため、難易度は高いと考えられます。機械・プラント製図技能士はすべての業種で必要とされる能力が問われ、実務に活かせるでしょう。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験とは、パソコンで設計図を起こす際に使用するCAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアの技術が問われる資格です。目的や職種に応じて、2次元CADと3次元CADどちらかを選択し、受験します。
CADは機械設計の仕事内容において、主に詳細設計で使用します。必要になる技術のため、試験を受けることで実務に直接活かせるでしょう。
初心者の場合は、基礎となる2次元CADからの受験がおすすめです。2次元CADの2級の合格率は、52.36%(2022年) のため、きちんと勉強すればある程度の人が打変えるでしょう。
危険物取扱試験
危険物取扱者試験とは、消防法により、危険物(薬品や石油など)を取り扱う場合に必要な資格です。重電機器は、エネルギーを作る機械であるため、危険物取扱試験の知識が役立つでしょう。またプラント設計に携わる人にも、危険物を取り扱う工場設備を設計する際の知識として役立ちます。
試験の種類は甲種・乙種・丙種があり、乙種は6分類からいずれかを選んで受験します。乙種4類、もしくは丙種を受験するとよいでしょう。
令和4年度の合格率は、乙種4類31.4%、丙種50.7% です。乙種4類の難易度は中程度で、丙種は勉強すれば合格するレベルと考えられます。
まとめ
機械設計の平均年収は450~610万円ほど で、製造業の職種のなかでもやや高めです。35~39歳の平均年収は約650万円にもなり、キャリアアップやスキルアップすれば報酬の高い仕事に抜擢されるでしょう。
機械設計は実績と経験を重ねることで、年収アップを見込める職業です。ぜひ本記事で紹介したポイントを踏まえ、年収アップを試みてください。