プロセスエンジニアとは?市場動向や仕事内容、必要なスキルや資格を解説
プロセスエンジニアとは、半導体製造などをはじめとする生産プロセスを設計するための職種です。生産プロセスにおいては生産技術に加えコストや工数の削減、スケジ ュール管理など付随業務があるため、プロセスエンジニアにも幅広いスキルが求められます。
本記事では、プロセスエンジニアの概要とその他エンジニア職との違いや仕事内容、求められる資格を紹介しています。プロセスエンジニアを目指している方は参考にしてください。
プロセスエンジニアとは
まずは、プロセスエンジニアとは、どのような業務を行う職種であるのか、年収やその他のエンジニアである生産技術エンジニアやプラントエンジニアとの違いについて解説します。
主な業務内容:効率的な生産プロセスを考える
プロセスエンジニアの主な業務は、ものづくりの全工程において効率的な生産プロセスを考えることです。エンジニアというと開発技術を考える職種が代表的ですが、プロセスエンジニアは、生産プロセスにおける原材料の選定や生産、製造方法の選定と確立、スケジュール管理、さらにはコスト削減や業務効率化など幅広い工程を担当します。
デザインや製品化の基準を検討するなど、業務は多岐に渡ります。より良い製品を市場に生み出すことがものづくりの仕事ですが、そのためにはコストがかかってしまいかねません。プロセスエンジニアはいかにして高品質な製品を最小限のコストで生産させるかを考え、生産ラインに落とし込む重要な職種です。
年収:約600万円前後
プロセスエンジニアの平均年収は、約600万円です。日本人の平均年収に比べると高い傾向にあり、30歳代前半で500~600万円、40歳代では職位によっても異なるため幅があり、700~1,000万円が平均となっています。
就業先や経験、スキルによっても年収は異なります。
プロセスエンジニアと他エンジニアの違い
ここでは、プロセスエンジニアとその他のエンジニアである生産技術エンジニア、プラントエンジニアとの違いについて解説します。
生産技術エンジニアとの違い
生産技術エンジニアは、生産体制全体の実現や整備を行います。一方で、プロセスエンジニアは生産技術エンジニアが定めた各工程に対して、工夫や細かな改善を加えたプロセス設計を行います。生産技術エンジニア型実現させた生産体制において、どのようにして生産性や効率性を高めていくかを考えることが主な役割です。
そのため、プロセスエンジニアと生産技術エンジニアとは、各工程や生産体制全般において連携をとりながら業務を吸進める関係にあります。
プラントエンジニアとの違い
プラントエンジニアとはプラントエンジニアリングに取り組むエンジニア職で、プラントの企画・設計・調達・建設工事・施工管理・保守等の業務など、プラント(製造設備を含む工場)に関する仕事の総称です。
プロセスエンジニアは、プラントエンジニアの役割の一つに該当し、包含される関係にあります。具体的には、プラントにおけるプロセスの設計に携わるエンジニアがプロセスエンジニアと呼ばれています。
プロセスエンジニアの市場動向
プロセスエンジニアの市場動向は、業界全体で人材不足が懸念される傾向にあります。なぜなら、プロセスエンジニアにおいては、プロセスの微細化と3次元化に関する最先端技術の追求ができる人材が特に求められているからです。
未経験であっても就職できますが、新卒での採用は難しく、第二新卒がほとんどの状況であり、即戦力となる経験者が求められているのが実情です。
プロセスエンジニアの仕事内容
ここからは、プロセスエンジニアの具体的な仕事内容について解説します。プロセスエンジニアの主な業務は製造工程の設計ですが、プロセス全体を見たときに他にも意識しなければならない業務が存在します。
また、基本的には全工程の管理が業務範囲となりますが、1人ではなく数名のプロセスエンジニアによる分業制がとられているのが一般的です。
製造工程の設計
プロセスエンジニアのメイン業務は製造工程の設計です。製品の企画やコンセプトをもとにして、高品質な製品をより低コストで生産できるような生産ラインの全体を設計します。
そのためには、企画や開発、デザインなどさまざまな部署との連携が求められます。各部署が抱える課題や悩みに対して、製造技術や機械設備などあらゆる側面からアプローチをすることが重要です。判明した課題に対して、仮説を立てたうえで実験と検証を繰り返してPDCAを回し、生産ラインを設計します。
また、生産プロセスの安定化を見据えた環境改善もプロセスエンジニアの役割です。
製造プロセス内の研究開発
製造プロセス内における研究開発も、プロセスエンジニアの仕事内容の一つです。この背景には、海外企業における低コストでの製品製造や技術革新における生産効率化があります。
従来の技術や製造工程に甘んずることなく市場の変化に対応するために、未来を見据えて製造プロセス内の新しい技術や研究、開発を繰り返して、より良い製品製造へとつなげます。
現場のトラブル対応
プロセスエンジニアは、生産の全工程において効率化を目指す役割を果たしますが、現場で起きたトラブル対応も重要な仕事の一つです。実際の生産現場では、トラブルは避けられない存在です。プロセスエンジニアは、トラブルに対して建設的に考え、なぜトラブルが起こったのか、その原因を把握して、今後の改善に向けた生産工程を考える必要があります。
また、より良い製品は働きやすい現場、人間関係から生み出されます。トラブル対応だけでなく、働きやすい現場環境を目指して整えることも大切な役割です。
プロセスエンジニアにおすすめの資格
プロセスエンジニアになるために必要な資格は特にはありません。先述の通り、未経験でも、他業種でのものづくり経験やスキルがあればプロセスエンジニアへの転職は可能です。
そのため、次に紹介するような関連資格を取っておくと、就職や転職に有利になる可能性があります。資格取得に際してエンジニアリングに関する知識を身につけられる点もメリットです。
危険物取扱者
危険物取扱者とは、危険物 施設や防火対象物に対しての安全を支え、生命や身体、財産を守るための重要な役割を果たす資格です。具体的には、ガソリンや石油、インクや金属粉のように燃焼しやすい物品を製造、貯蔵するなど、取り扱いの際の管理責任者に必要となります。
印刷業や薬品工場、製品工場など様々な職場において有用な資格です。資格試験は、一般財団法人消防試験研究センターによって実施されます。
高圧ガス製造保安責任者
高圧ガス製造保安責任者とは、高圧ガスを取り扱う際に必要な資格で、現場位において保安監督をする際に必要です。資格は9種類あり、資格によって取り扱うことのできる高圧ガスが異なります。
石油化学コンビナートからLPガススタンド、天然ガススタンドや冷凍冷蔵工場などの職場において有用です。資格試験は、高圧ガス保安協会が実施します。
エネルギー管理士
エネルギー管理士とは、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)に基づいて設けられた資格です。
燃料や熱、電機など一定量以上のエネルギーを使用する工場又は事業場においてはエネルギー管理士を選任しなければならないため、現在においては需要の大きい資格といえます。一般財団法人省エネルギーセンターが実施するエネルギー管理士試験に合格するほか、3年以上の実務経験があり認定研修を受けることで取得可能です。
第一種衛生管理者
第一種衛生管理者とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、安全衛生業務の内、衛生に係わる技術的な管理を行う責任者です。
衛生管理者には第一種、第二種があり、第一種衛生管理者は、業種にかかわらずすべての事業場において衛生管理者に就任できます。労働者の健康障害を防止するための作業環境や健康管理を行います。試験は、公益財団法人安全衛生技術試験協会が行います。
公害防止管理者
公害防止管理者は、工場内における公害防止に関する専門的知識を有する管理者です。主に、公害発生施設や公害防止施設の運転、維持管理、燃料や原材料の検査を行います。
試験は一般社団法人産業環境管理協会が実施し、大気関係、水質関係、騒音・振動関係、特定粉じん関係、一般粉じん関係、ダイオキシン関係などの種類があります。
プロセスエンジニアに求められるスキル
ここからは、プロセスエンジニアに求められるスキルをご紹介します。先述の通り、プロセスエンジニアには、特に必要な資格はありません。しかし、生産工程全般のマネジメントや従業員、各部署との連携にともなうコミュニケーションスキルは重要です。
また、機械や電気に関する資格やスキル、プログラミングや3D-CAD関連の資格があると人材として重宝されます。実際 にプロセスエンジニア職では、高専や大学、大学院などにおいて機械や電子分野学び、知識を身につけている人も多くいます。
製造工程全般の知識
プロセスエンジニアに求められるスキルのうち、特に重要なものは製造工程全般の知識です。プロセスエンジニアは分業制であるため、細分化された工程のうちの一部を担当することになりますが、製造工程を俯瞰的に捉えてプロセスに落とし込めるように、全般の知識を持っていると仕事を進めやすくなります。工程全般の知識に関しては、特定の資格を取得するよりも、これまでに培ってきたキャリアやスキル、知識が活かせます。
また、人材としても、最新の知識を習得したり、国内だけでなく海外からの最先端の知識を常に得ようとしたりする姿勢が必要です。そのためにも、日本語に限らず英語や中国語などができると良いでしょう。
マネジメントスキル
プロセスエンジニアは、他部署と連携し、複数の部署を束ねて、時間や進捗などのスケジュール、各部署や人材の業績などにおいて様々な連携や管理をとらなければなりません。そのためには、製造工程全体としての目標達成に向けて、どのようにチームやメンバーを動かすのかを考えることが重要です。
個人としてもトライ&エラーを繰り返しながら、チームのため、目標のために挑戦し続けるマインドセットが求められます。
コミュニケーションスキル
生産プロセスにおいては、製品企画やデザイン、原材料調達から製造ライン、販売まで多くの部署やチームが関わります。スムーズに連携をとり適切に業務を進めるためにもコミュニケーションスキルは必須です。
各部署の課題があれば協力して改善し、現場の声を吸い上げて交渉、調整をするなど複数と連携をとりながら仕事を進められるスキルが大切です。
プロセスエンジニアに向いている人
プロセスエンジニアに向いている人は、次のような素養がある人です。
- コミュニケーション能力がある
- 自己研鑽を惜しまない
- 利益を追求できる
- ものづくりにやりがいを感じられる
- 目標達成のために尽力できる
先述の通り、プロセスエンジニアは、社内の各部署やチームと連携をとりながら効率的な生産プロセスを考えます。
結果として集団で業務に取り組む必要があるため、メンバー同士が円滑に協力できるようコミュニケーション能力が必須です。各部署での調整も必要となるので、多様な人材を束ねられるマネジメント力もあると良いでしょう。
また、市場における最先端の情報収集や技術革新についての知識を身につけるなど自己研鑽を惜しまない人材が求められます。さらに、企業体としていかにコストを削減し、ユーザーに評価される高品質な製品を生み出せるのか、利益を追求できる視点も大切です。ものづくりにやりがいを感じ、業界の幅広い知識を身につけゼロからものを生み出す工程を楽しめる人も、プロセスエンジニアに向いているといえます。
製造現場においては、製品の品質に限らず、生産量の調整や納期管理、安全管理やコスト削減など様々な目標達成に取り組まなければなりません。定量化された数値目標をいかにして達成するかを考え、達成のために尽力できる人材が求められます。
プロセスエンジニアになるには
ここからは、プロセスエンジニアを目指す方に向けて、プロセスエンジニアになるために必要なことを解説します。
未経験可の企業で経験を積む
プロセスエンジニアは現場での経験が求められる業種です。まずは未経験でも就職可能な企業に応募して、現場経験を積みましょう。
具体的なアクションとしては、求人サイトをメインに未経験者可の求人情報を探すことがおすすめです。半導体分野では未経験可の求人も多いため、探してみると良いでしょう。
柔軟な対応力をつける
プロセスエンジニアには、現場でのトラブル対応や、働きやすい職場環境の整備に対して、柔軟な対応力が求められます。生産工程全体をマネジメントする立場としても、さまざまなトラブルや事象に対して柔軟さが必要でとなるしょう。
各工程だけでなく、全体を見通して、いかに効率の良い生産工程を作り出せるかを考えることが重要です。また、より良い生産工程を整えるために、常に課題に対して仮定を立て、検証を繰り返してPDCAを回す必要があります。
経営視点を学ぶ
プロセスエンジニアは、企業と現場で業務につくエンジニアとの間に入るパイプ役を担うため、経営視点を持って両者と関わることが大切です。経営戦略を把握できるよう数値の分析力をつけておくと、経営観点からどのように生産プロセスを組み立てるべきか考えられるようになるでしょう。
また、日常的な業務においても、積極的に経営者目線で考える意識をもつことで、経営者視点が身につきます。企業の利益を最大化させるためにどのような点が効率化できるのか、時間、物、人材の面でどれほどのコストを削減できるのかを鑑みながら職務に取り組みましょう。
まとめ
プロセスエンジニアとは、ものづくりの生産工程全般において効率的な生産プロセスを考える職種です。生産管理だけでなく、他部署との連携のためのコミュニケーション、マネジメント能力に加え、最先端の技術追求など高度なスキルが求められるため市場的には人材不足が懸念されています。
ただし、プロセスエンジニアになるには、特定の資格は必要ではありません。別の企業での経験や関連するスキルを有していると就職や転職に有利になります。全くの未経験の場合は、未経験可の求人から挑戦すると良いでしょう。
プロセスエンジニアには、製造工程全般の知識やコミュニケーションスキル、経営視点なさまざま々なスキルが求められますが、やりがいのある仕事です。プロセスエンジニアとしてものづくり業界に取り組みたい方は、ぜひ本記事をご活用ください。